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19.本音と建前とオートモードと

女の子の家って初めてだ。元カノ…トウマは当時実家暮らしだったから家に行くことなんかなかったし、その後は………今迄機会もなかったから。若干そわそわしてしまう。


「どうぞ。楽にしててくださいね。あ、脱いでください。」


ぬ、脱いでだと?内心どきりとしたが、ゆうちゃんがハンガーを持ってニコニコしている。


「スーツ、シワになっちゃいます。」


あ、なんだ、スーツか。そう言ってスーツの上着を脱ぐとゆうちゃんがコートとスーツをハンガーにかけてくれる。なんだか新婚みたいだなと妄想に走ってしまった。ご飯もあーんとか…ちょっといいな。そんなことを考えながらネクタイを外す。その様子を、ゆうちゃんがうっとりと見ていたのに気がついた。


「どうしたの?」


そうにっこりと笑っていうと、


「あ、なんでもないです…。支度しますね?」


顔を赤くして、パタパタとキッチンの方へ消えていった。あんな美女が俺に見惚れるなんて…しかもおかしな妄想してたのに。自分で思ってクククと1人で笑ってしまった。とりあえず、楽にしてと言われたので、クッションに座ってみたものの、なんだか落ち着かない。俺はキッチンに立つゆうちゃんのところに行き、


「手伝おうか?」


そう声をかけた。ちょっとびっくりしているゆうちゃんに、


「最近料理もそこそこするんだ。何かやることあれば手伝うよ。」


そう笑いかけると、


「実は…ある程度下ごしらえはしてあるんです。あとは焼くだけなので、待っててくださいね。」


ゆうちゃんは赤くなって答えた。


「下ごしらえまでして…俺が来なかったらどうするつもりだったの?」


俺はイジワルを言った。ちょっと困らせたい気分になったから。


「そのときはやけ食いしたかもしれませんね。だから…来てくれて嬉しいんです。」


話ながらゆうちゃんは調理を続けた。どうやらメニューはハンバーグのようだ。時々「あぁ。」とか言いながら失敗するゆうちゃん。あまり可愛くて後ろから抱きしめたくなる衝動に駆られるが、調理中やるとやけどとか危ないからな、しないぞ。


「あの…見られてると緊張するんですけど…?」


ゆうちゃんがまた上目遣いで言ってくるので、


「俺は見てたいんだけどなー。」


爽やか笑顔で俺はまたイジワルを言う。


「今日はなんだかイジワルですね…?もうすぐできますから座っててください。お願いします。」


と、ちょっと困った顔でゆうちゃんが言うので、俺は素直にクッションに座って待つ。しかし、所在がないので手持ちの文庫を出して少し読み進めることにした。そうじゃないと余計な妄想が爆発してしまいそうだったから。読みながら待っていると、ゆうちゃんがハンバーグを持ってやってくる。


「何読んでるんですか?」


「あぁ。コレだよ。」


俺は持っている文庫本タイトルを見せる。


「あ…こないだ先生が食事会で言っていた本ですね?」


「気になってたから買ってみたんだ。意外と面白いよ。」


「もう卒業してるのに、勉強熱心ですね。」


「いや…勉強っていうより…ただ読んでみたかったんだよね。」


今の俺の頭は一回読めば自動的に覚えてくれる。正直知識を詰め込むだけ詰め込めばなにかの役に立つのではと思い、色んな本を読むようにはしている。先生勧めてきた本を読んだのはゆうちゃんとの会話で役立つと思ったらなんだけど。完全に下心だ。でもゆうちゃんの俺をみる眼差しは完全に尊敬の眼差し。いや…そんな目で見られたら照れるわー。


「途中でしょうけど、ご飯出来ましたよ?」


これで「あなた」って、ついたら完全に新婚だな!新婚気分を味わいながら俺は


「いただきます!」


手を合わせて挨拶をしてから、食べる。形もそこまで綺麗じゃないし、味はすごく美味しい訳じゃなかったけど、ゆうちゃんが一生懸命作ってくれたという事実がスパイスだ。最近料理するようになったら楽しい反面、色々手間がかかるって分かってるから、俺にはご馳走に思える。俺のために出る前から下ごしらえまでしてくれてたんだから。


「美味しいよ。」


俺はニコニコして完食した。ゆうちゃんも自分で食べていたが、少し首を傾げていた。思う通りに出来なかったと心の中で思っているのかもしれない。2人とも食べ終わると俺は腕捲りをして、


「片付けくらいはさせてくれる?ご馳走なったし。」


そう言って食器片付けをして、皿洗いを申し出る。


「え!でも…。あ…じゃあ…お願いします…。」


ゆうちゃんは俺の腕を凝視しながら、言う。ゆうちゃん、どうしたんだろう。腕なんかみても面白くないよ?


「どうかした?とりあえず水回りとどれ使っていいかだけ教えて?」


「はっ…はい。えーと…。洗剤がこれで、スポンジこっち使ってください。それで、こっちに片付けてもらったら、私お皿拭きますね。」


「じゃあ、ちゃっちゃと片付けちゃおう。俺そろそろ帰らないと。明日も仕事だしね。」


「…はい。」


一応帰るアピールをすると、ゆうちゃんは残念そうな声で返事をした後、横に並んで俺の洗った皿を拭いた。順調に皿洗いをしていたのだが、皿の角度を誤り、水を跳ねさせてしまう。


「冷た!!やっべ。あー。」


スラックスの股上あたりとシャツの腹あたりを濡らしてしまった。


「今タオル持ってきます!」


ゆうちゃんがタオルを持ってきてくれて、腹あたりを拭いた後に股上も抑えようとしたので、


「あ!そこは自分でやるから!!」


そう言ってタオルを受け取る。そんなとこトントンされたら…きっと変な声が出てしまう。


「とりあえず、シャツ脱いでください。応急処置します。白いからシミにならないように。」


俺は言われるがまま、ワイシャツと脱いで、ゆうちゃんに渡す。部分洗いしてドライヤーで乾かしてくてれいる。Tシャツも少し湿っているので、脱いでしまった。時々こっちをチラ見しては顔を赤らめている。さすがにスラックスは脱げない。女の子の家でパンイチとか。普通に考えたらダメだよな。上脱いでるのもどうかと思うけども。見られて困る訳じゃないし、いっか。


「さすがにこっちは脱げないから、ドライヤー貸して貰える?こっちも乾かさないと。濡れたまま流石に帰れな…。」


そう言っている最中にゆうちゃんが抱きついてきた。素肌に感じるゆうちゃんの体温。身体を這うように伝わるゆうちゃんの息。柔らかな感触。…非常にマズイ。考えないようにしてたのに。スイッチが…。


「今日は酔っ払ってなんかないです。気の迷いなんかじゃないので…。その…。」


ゆうちゃんが軽く背伸びをして俺にキスをする。ちゅっと軽いものだが、今の俺の理性を破壊するには十分だった。オートモードが発動するのも待てないくらいの速さで俺はゆうちゃんにエロいキスをしてしまう。唇を離すとゆうちゃんはうっとりとしつつも、少しだけ怯えたような表情をしていた。


「そんなことされたら…俺も男だから、ね。」


ゆうちゃんをぎゅっと抱きしめ返す。そしてすぐ離した。まだ抱きしめていたかったが、スラックスが濡れているので、ゆうちゃんにまで被害が行くことと、抱きしめることで俺の荒ぶっている部分がゆうちゃんに当たってしまったため…というのは建前です。本当はオートモードに引き剥がされた。そうじゃ無きゃ…うん。それにしても、どうして引き剥がす…?いや、分かってる。さっきの建前だろう。と思いつつも非常に歯痒さがある。しかし…その歯痒さを感じてるのは俺だけではなかった。


「その…………続きを…してもらって…大丈夫です…。」


上気した顔、潤んだ目で俺を見つめる。そんなことは知らないとばかりに俺はTシャツとスラックスにドライヤーをかけ始める。俺…また断るつもりなのか。ぐぎぎっという音が聞こえるくらいの勢いでゆうちゃんの方に行こうとするが、身体が動かない。とりあえず、スラックスの水シミがわからなくなったぐらいでドライヤーを止めた俺は、


「やっぱり、ダメだよ…。」


そう言ってゆうちゃんの顔を見て、申し訳なさそうに笑うと、乾かしてもらったワイシャツを羽織る。ゆうちゃんは涙目だ。ソソる…キスしたい…いや、それ以上を…もう我慢は限界。ボタンを止めようとする腕を無理やりに動かし、ゆうちゃんをもう一度抱きしめる。ワイシャツの前は、はだけたまま。抱きしめられたゆうちゃんは俺の胸元や腹を優しく撫でる。ソフトに触られて俺は


「ゆうちゃん…ちょ…くすぐったい…。」


思わず情けない声が出てしまう。


「あ…ごめんなさい…その…あまり……というか……」


後半の方が聞き取りづらかったけど、今…聞き間違いでなければ…。俺は自分の欲望のまま身体を無理に動かすのをやめた。オートモードにお任せする。抱きしめてしまったので、体勢はそのままだが。


「あの…」


「今、続きをして、俺がゆうちゃんに振り向かなかったら?後悔しない?」


ゆうちゃんは俯いてしまった。オートモードがなければとっくに「頂きます」している。オートモードを振り切ってまで、ゆうちゃんを抱き締めたくらいなんだから。しかし、さっきのやり取りで俺は納得した。俺から仕掛けるというのはハーレム形成への障害になると判断してずっと俺を止めていたのだと。今すぐというのは得策ではない、向こうが攻めてくるくらいまで待てと。本当に自分でも思う、悪い男だと。


「ゆうちゃんが嫌いとかそういうんじゃないんだ。むしろ…いや。これ以上は言わない。どうでもいい子ならとっくに押し倒してる。」


抱き締めていて身体が密着している。ゆうちゃんにも俺が葛藤しているのが分かっているはずだ。


「それに…少し怖いんでしょう?」


ゆうちゃんは俯きながら頷いた。


「だから…今日のところはもう帰るよ。」


そう言って俺はワイシャツのボタンを留めているとゆうちゃんはワイシャツの裾を引っ張る。ゆうちゃん…だからその仕草反則な?


「あの…さっきのキスをもう一回…」


「ゆうちゃんが怖くないならいいよ…。」


本当は辛いけど。嫌いじゃないんだよ、本当はしたいんだよ、すっごく。今はその時じゃないみたい。でも、いつかはもらうからね?


ゆうちゃんの初めても。


そう心で呟いて深く深くキスをした。

読んでくださってありがとうございます!本来もう少し攻めた話になる予定でしたが…。怖くなってこれくらいになりました。当方、ビビりなんで…。

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