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ようこそ。異世界へ! それぞれの思惑

久しぶりの投稿です。

仕事の関係で不定期になります。

 多分、間違いない。

 かなり以前のことだ。裕也には、仁鴬学園理事長である仁鴬美佐(におう みさ)を仲介で知人が何人かいる。美佐には娘が三人いたはずだ。長女は副理事長で次女は中学生だった。三女とは面識は無かった。高校部でも一日だけ講師をした時に名は忘れたが邑碕(むらさき)とか阿波野(あわの)とか高校生男子も紹介された。確か『親戚で本家も期待している』と言っていた。


 もしも、この時に遡って仁鶯(におう)家の異世界側からの協力者として接触するなら歴史を大きく変えることもないだろう。このことを裕也が提案してみる。心配なのは慎重派のレイラだ。

「問題は”時間遡及で生じる矛盾”が問題でしょう。例えば時間を遡及することだけで歴史を変える要因になるかも。どうしても安全に三人とも過去に行って戻られるか……不安なの」

レイラが言うと

「こういう危険性を含めた決定でしょう」

「私も時間遡及で生じる矛盾についてある程度理解して覚悟を決めています」

クリスとヴィクトリーヌがそれぞれ口にする。

「そうね」

レイラが呟く。

「今更、余計なことを考えてもね。決定事項だもの。ユウヤさんの提案で進めましょう。で、もっと具体的な計画にしないと……必死になって考えてみるわ」

レイラは焦っていた。ユウヤのことより親友のヴィクトリーヌとクリスの安全を重視していた。

 裕也は、自分自身に憑依することに疑問があった。肉体的に精神的にどのような影響が出るのか分からないから。しかし過去に戻るお嬢様も同様だろう。

 


 その後も議論は続いたが進展がないまま各自の部屋での夕食になった。裕也はアンナ先生による異世界についての勉強をしながらの食事だ。アンナは使用人になる為に独学で勉強していた。その知識によると、言語はイタリア語、フランス語、イギリス語の三言語が地方で用いられていて、日本語が共通語だそうだ。なぜ日本語かと問うと『転移門が日本にしか残っていないので、クリスのロイス家のみ日本語を独占して用いるのは重要な情報の共有を妨げる』からと答えた。この三言語は大昔に転移門があったところに由来しているらしい。異世界の貴族についてはヴィクトリーヌのロレーヌ家は24貴族をまとめる皇帝家で異世界最高位だ。それに続くのはロイス家で大公としてアジア全てと大洋州を任されている。ヴィクトリーヌのロレーヌ家は侯爵家で皇帝の直轄地であるイギリスとイベリア半島を除く西ヨーロッパと自己領地の中東を任されている。ほかに東ヨーロッパとロシアを、北欧とイベリア半島・英国を領地にしている侯爵などがいる。名目上は九人の貴族で世界全土を支配しているが辺境地や未開に地も多い。残りの十五貴族は皇帝など仕える貴族だ。税は金納で物納も可能。人口は五千万人程度で皇帝の権力が及ばない地域や辺境にほぼ二千万人が存在していると推測されている。



 アンナから、このような説明を受けていた頃、クリスの部屋ではヴィクトリーヌが訪ねていた。

「クリス、ユウヤ様は本当に信用できるのかしら?」

「私の判断では信用できますよ。純粋で自分にも他人にも嘘をつかない性格と思うの。むしろ、騙されやすいかも。だから見た目より私たちが嘘をついていないか警戒しているみたいね」

「うんうん、そうね。だからこそユウヤ様には嘘偽りのないようにしたのね」

「小さな嘘から不信感も持つようになればたった一人の人間との協力関係が成り立たなくなるでしょう」

ヴィクトリーヌは当初、裕也を騙してでも協力させるべきだと主張していた。そして最悪の場合は牢に入れることまで考えていた。それが変わったのはクリスが裕也の心を読んだ結果が原因だ。

「そうね。クリスが『もう、十年早く知っていたら側近に加えていたかも』って」

「そう言えば、向こうの世界と比べて大して成長しないことを言い忘れていた」

失敗したことをごまかすように笑う。

「まあ、寿命が五百歳近いものね。言い忘れただけで嘘じゃないから良いんじゃないの」

「でも、十年前に戻ったとして裕也さんは十歳老けるのね。もっと過去に行ったなら“忌まわしき出来事”の時まで生きていないかも……」

「そうね。それなら私の眷属にすることで問題ないかも」

「えええぇ!」

クリスが場にそぐわない声をあげる。

「何よ。驚いた」

「それって、血を吸うの?それとも与えるの?」

「当然、血を吸う方よ」

クリスは吸血鬼にとって血を吸うことは単純に栄養素の補給だけの場合と身も心も許した仲の場合があることを知っていた。後者の場合はヴィクトリーヌの能力を半永久的に分け与えることになる。

「血を与えるだけで十分でしょう」

「クリス、それって焼きもち?」

「そんなんじゃないけどぉ」

「血を吸うことで眷属になれば自分の意思で霧になれるし怪我の回復力も私に準じるのよ。それに年齢も実年齢以下なら任意に変えられるのよ。血を与えるだけなら老化を防ぐだけなの。そうそう怪我には強くはなるでしょうけど」

「そんなぁ、だって血を吸っての眷族ってお互いの血を吸いあって栄養補給する相方同士でしょ。この眷族は一生面倒する必要があるし……」

「血を与えた眷族は与える血の量によるけど使い捨てみたいなものよ。ユウヤ殿を使い捨てにしても良いのね。それに、もし目的を達成したら彼は英雄よ。地上に帰すなんて勿体ないでしょ」

「使い捨てなんて考えてないもの。目的を達成したら彼の意思を尊重するわ」

「実際、無事に戻れるかは誰もわからないのね」

「こっちに戻ってからが勝負です」

「勝負って?」

「……、うぅ、そうそう勝負でしょ。歴史が改変されるかどうかが」

クリスは裕也が夢の中で心底から心配してくれた時の心地の良かった自分を思い出していた。

「クリスちゃん。それより例の件は?」

「例の件って?」

「ユウヤさんに私たちが敵意のないことの証明よ」

「計画が決定した時かな」

「遅いわ。計画が決定する前に実行するべきよ」

「そうね。まず心の許してもらうことから始めるわ」

ヴィクトリーヌは無事に目的を果たして英雄になった未来の裕也に興味がある。それに対してクリスは未来の裕也より今の裕也に興味がある。



読んでくださってありがとうございます。

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