表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

ようこそ。異世界へ! 転移の方法は固有能力で

「邪悪な心の人は、こちらには来られないのです」

裕也が沈黙する。話しの切れ目を待ち構えていたレイラが立ち上がり「お茶を入れ替えるね」と湯沸し室に行った。

「ありがとう。ここのお茶は美味しいから。ベアータが入れるお茶と比べたら格段ね」

沈黙が怖い。さりとて、その空気を持続させるのはもっと怖い。不安な空気から目をそらしている。

「あら、ベアータのお茶も美味しい。それ以上にアンナのお茶がおいしいよね。台所の下働きが長かったせいかも。ユウヤさん、アンナは良い世話係りよ。大事にしてあげてね。ついでに言うとクリスは、地上での研修に関して穢れるような行いは一切してませんのでご安心を」

「もう、ヴィクトリーヌさんの意地悪」

ティサーバーを持ってレイラが戻ってきて、

「裕也様、勝手に心中に入ったことについてお詫びいたします。」

頭を下げるレイラ。


「この世界は地上の人々に知られてはならないのです。ユウヤ様に対する処遇については、二つありました。一つ目は地上に送り帰すこと。これは現状では死を意味します。二つ目はこちらの世界に協力してもらうことです。”邪悪な心持っていないことはわかっていたので、協力してもらう方向に決定しました。次に処遇でもめました。協力しない時は、協力する時はどのように扱うかです。その協力の内容も問題でした。それで、クリスに心の有り様を無理やり見てもらったのです。ねえ、クリスちゃん」

不平や不満はあるが怨み言は言っても無駄だ。

「わかりました。でも、どのような夢だったのか教えて下さい。事前の会議みたいな席上で公になっているでしょうから。それと二度と私の夢に入らないください」

「裕也さま。二度と私の夢に入らないことはお約束いたします。詳しい説明はできませんが、私たちの固有能力には夢を現実と思わせる技能がありますので、本人の許しを得ないで貴族の心に入り込むことは法律で罰せられます。それと公にしているのは裕也様が信用に足るか否かだけです。それでもお聞きになりますでしょうか」

「どうかな、夢の記憶がないので聞きたい気持ちがあるものの、どうでも良いと気持ちもあります」

ヴィクトリーヌが目を輝かせている。

「私も聞きたい。なぜ、クリスが信用できると思ったのか。気になります」

「そう言われても、もう散々、恥ずかしいお話しをしています。これ以上は勘弁してください」

「ねえ、恥ずかしいついでに教えてと。ユウヤ様も良いでしょ」

甘えるように上目使いで見つめる。

「仕方が無いな。お願いします。クリスさん」

「ううう、、恥ずかしい……。じゃあ、手順として最初は願望や欲望を探りました。当然、意識の表層ですが。結果、『お金があれば写真も撮り放題。撮影場所も被写体も自由になる』があったので利用することにしました。お金を着服できるようにしても小銭だけ自分の物にしました。次に繁華街で博打ができるようにするとこの小銭分でその場で結果が出る富籤(とみくじ)を購入し、その場で大金貨十枚程度の貨幣を手にいれます。次に風俗店が多い歓楽街にいきますが、風俗店を見た瞬間、私の事を思い出して『大丈夫なのか』と意識が混濁しはじめたのです」

クリスは赤くなって裕也の顔をちらっと見た。

「”忌まわしき出来事”に意識が向きだしたのでしょう。そこで夢の中に私を登場させました。学生で写真の被写体の仕事をしていて、風俗は小遣い稼ぎと説明し、『お金をくれるなら写真の被写体でも何でもする』と申し出をしたのです。お察しの通り申し出は受けてもらったのです。そして水着から下着姿、裸までなりました。でも性的興奮はあるのですが最後まで進まないのです。淫靡な振る舞いをしても……美しいとか芸術だとか……必死でお写真を撮ってくださいました。ほかにもありますがこんなところでしょう。」

 この世界の夢魔は淫魔ではない。淫魔に近しい力を持っているが。その力で心の中を見られることは辛い。だが、文句を言ったところで何がかわるのだろうか。

「それで……」

レイラが口を開く。

「まあ、本筋に戻しましょう。転移については、現在と現在においては人間も移動できるはユウヤさんも経験済みです。それに過去に神託宣下の類は送ることは実証されています。そこで神託宣下より大きい物のやり取りについて調べてみましたら大きさはみかん箱やりんご箱の実例がありました。この程度の大きさでしたらヴィクトリーヌちゃんの最大の力を用いるなら武装完全した衛士十人は余裕でしょう。過去に遡れる時間は最大一ヶ月程度、平均は四日程度でした。問題は一ヶ月程度の遡及で対応できるかが問題でしょう。いつ送っていつ帰って来るのかが問題です。」

 ヴィクトリーヌとクリスと一緒に過去に戻り実体化しクリスの能力で忌まわしき出来事”について歴史を変えることなく防ぐのだ。大筋では。なら、策はあるかも。それには、もっと理解が必要だ。

裕也が言葉を発する。

クリスが突然の質問に驚いて答える。

「レイラさんは具体的な手法が想定していますか?」

「いえ、先ほど言ったように、いつ送っていつ帰って来るのかが分かれば具体性が見られると思います」

良くある本来の目的以上に手段を重視しすぎているパターンだ。例えば、東京と大阪の交通手段は多い。JR、高速バス、飛行機等々だ。昼間に行き来するバスもあれば夜行バスもある。明日の朝十時に梅田で会議がある。その会議の為に新幹線で行く。新幹線に乗るために会議に行く。何のためにいつ送っていつ帰って来るかが決まる。目標と目的も曖昧だ。

「クリスさんは憑依できるの」

「無理です」

「じゃあ、ヴィクトリーヌさんは?」

「短時間なら経験があります。多分。どうして」

「いや、何となく……幾つか質問して良い?」

裕也は三人の承諾を得る。地球を救うには何をなすべきか。その為に質問を続ける。

「レイラさんは吸血鬼なの?それとも夢魔なの?」

「私はエルフですが、過去に戻らずこちらで指揮する予定です」

「クリスさん。夢で記憶を操作できるの?」

「そうね。夢を現実と思わせることはできます。でも、その人の記憶の流れと一致しないなら夢と分かります」

どうも前後に矛盾がなければ可能らしい。

「じゃあ、その距離は?……どれくらい離れて?」

「私の力だと少なくとも、手が届く程度なら眠らせて夢をみせることはできます」

「ならヴィクトリーヌさんに霧みたいにされていても可能なの?」

「その状態は肉体がないのです。無理です」

とヴィクトリーヌ。

お嬢さんたちは裕也の意図することに気付いたのか素直に答える。

「じゃあ、動物に変身させては」

「具体的なものに変えることできません」

「霧みたいな状態を保つ時間は?」

「私の意識がある限りいつまでも」

「憑依の経験があると言いましたね。最大はどれくらいできます?」

「私が意識を強く保っている限りなら」

「俺……じゃなかった。私を憑依させることは」

「霧状にさせて相手の体に入れることでできます。禁忌ですけど」

「意識を強く保っている間だけ?」

「いいえ、入れた本人がその霧をその肉体から離れるまでです」

「出た後の人物はどうなる?憑依されていたのがわかるの?」

「その間の憑依されていた記憶がありません」

「たとえば一ヶ月間。憑依を続けると、その期間の記憶が無くなるということ?」

「どう表現したら良いのかな。過去に領主の重鎮に憑依して暗殺する事件がありました。細かい所はわかりませんが、暗殺した重鎮も憑依した人物と憑依させた人物が死刑になりました。その時、重鎮は領主を殺した自覚はあったのです。憑依されていた期間も普通通りの生活をしていたのです。その間の記憶も明らかに存在したのです。しかし、自分が自分で無いような違和感はあったみたいです」

 微妙だな。まあ、その期間の記憶があるのは都合良い。

「でも、俺に憑依して情報を得る事なんか容易い事なのだろう」

「今は貴族であるユウヤ様に憑依できないし、憑依しても気付きます。地上の人たちには無制限ですけど。この表意は極一部の吸血鬼だけができるのです。それに禁忌とされています」

 お嬢さんたちは何が出来るのかが見えて来た。だが、裕也自身が行く目的が見えない。単なる案内人程度だろうか?

「その禁忌なら、クリスもおれも憑依させることができるのだな」

「はい」

「なら、レイラさん。なるべく過去に五年とか十年は可能ですか?」

「いえ。いつまで遡及できるか研究中で……」

「早急に結果を教えて下さい」

「はい。でもどうしてですか?」

 歴史の改変が生じる危険があるのが、影響を少なくさせることもできるクリスか俺かが協力者に憑依し、私が歴史の流れを監視することで影響を起こさせないようにすれば可能だ。そのことを質問する。それにレイラが答えた。

「残念ながら協力者に憑依は出来ないでしょう。協力者も、こちらと同じように憑依できないし、憑依してもわかるようになっています。……それなら裕也さんが協力者の仲間になれば良いのでは」

「うん、そうですね。神託を持って行くからには信用してくれるでしょう。協力者はひとり?人数は?」

仁鴬(におう)家直系一族の全てで人数は二十人程度です」

仁鶯(におう)家とは裕也が知る限り中堅の財閥だ。観光事業やサービス業が中心で全国的企業だ。生物工学、石油化学でも名が通っている。その力は仁鶯(におう)市を牛耳っている。とくに有名なのは仁鶯(におう)学園で海外からの著名人の子弟の留学が多い。最近ではサブカルチャー事業も有名で、その関連の学校で写真技術の講師をしたことがあった。

 やるべきことが分かってきた。

読んでくださってありがとうございます。

感想は当然ですが、誤字などの指摘、ご意見があればお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ