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砂川見聞録  作者: ぢだぱぢぴぢぱぢ
7話「砂川、流す」
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[7-4]嫌な縛り

 「貴方が私にやったことは、結果的に現状を悪化させている」砂川さん、お説教。胸糞悪さは3話を凌ぎます7話の4節。


【和佳】「お姉ちゃんが……死んじゃう……」


 怯えの眼。


 目視で充分観察できるほど震えた口、身体。


 ホラー映画とかでそういう顔を見ることはあるけど、やっぱり本物は全然違うんだなって思った。共振的な。何か私まで怖くなってくる。


【ババ様】「死んじゃう。これまた物騒じゃな」

【鞠】「死ぬ……というのは、貴方の父親の暴力によって、ということですか?」

【和佳】「……」


 頷く。


 ……盗聴器を仕掛けたのはリビングにあった冷蔵庫の底面。


 暴力を受けていたのは子ども部屋。


 それなりに距離と壁がある。だが、怒声や悲鳴は比較的鮮明に聞こえた。到底軽いDVとは思えない。


【和佳】「お父さん……蹴るの、好きだし、叩くのも……いっつも本気で。お姉ちゃん、意識失うことも、あって……学園に行かなくなってから、もっと酷くなって――」

【鞠】「……貴方が私に、姉の復学を迫ったのは……」

【和佳】「お姉ちゃんが学園行けば、お昼にお父さんに蹴られなくてよくなる……それに、お金も貰えるかも、だから」

【ババ様】「ワシにはよく分からん話じゃの……何で父親が娘を殴らなきゃいかんのじゃ」


 ……ババ様、カルチャーショック中。これは放置しておこう。


【鞠】「あの人はまあ、学力については秀才の部類。期末試験にて一定の成績を収めれば、学園は「恩恵」という名の継続的給費を用意する。貴方の家ではそれが大変好都合なんですね」


 しかし、彼女が陥ってる現状は逆を行っていた。


【鞠】「問題を起こしたことで、自宅謹慎なうえに、獲得していた全ての「恩恵」を剥奪された。学園にも通わず、収入もない、貴方の家においては邪魔でしかない存在になってしまった」

【和佳】「邪魔じゃない! お姉ちゃんは、一番大切……和佳の大好きなお姉ちゃんを……これ以上、虐めないで……蹴らないで――ッ」


 お金に五月蠅いお家だというのはもう確定なんだろう。


 で、お金を稼げなくなった娘を非難し父親が殴って蹴ってると。それをどうにかしてほしければ、お前が姉の分、お金を稼いでみせろと。年齢上働けないなら、お金を持ってる奴からお金を取って来いと。


 これはもう躊躇無く、屑と呼んでしまっても差し支えないだろう。


 そして面倒なことに、この件に私は無関係ではない。何せ、継続収入のあった彼女から恩恵を剥がし、学園にすら通わせない処理を下したのは他でもなく私だからだ。


 それについて後悔は微塵もしていないけど、ここにきてまたややこしい展開が渦巻いてきてる。今度は家族ぐるみで私に嫌がらせか。


【鞠】「これで終わる、とは思えませんね」

【和佳】「え……?」

【鞠】「娘に犯罪を指示する外道ですよ。さっきも貴方の知らないところで姉を蹴ってましたし、普通に約束を守るとは思えませんが」

【和佳】「ッ……そんな!」

【鞠】「それに、姉は継続収入があったんです。その代わりをするということは……貴方は私にやったことをこれからも、ずっとしていかなきゃいけないっていうことになりませんか? 少なくとも姉が復学し、期末試験を受け、恩恵を再び獲得するまでは」

【和佳】「――――」

【ババ様】「鞠、無闇に怖がらせるもんじゃない」

【鞠】「私は本来一瞥に値しないことに100万を投げてます。普通に被害者です。私の行動する理由は其処にしかない」


 ていうか、可成りの確率で私の推測の方向性は当たると思う。


 紫上学園の、紫上会経験者を筆頭とした金持ち達が襲われるという可能性を、当然紫上会が見逃すわけもない。


【鞠】「貴方も、貴方の姉も、学園から追放する。そんな処理を紫上会は下せるということを、貴方も一応理解しておきなさい」

【和佳】「!? そ、そんなこと、なったらお姉ちゃんが――」

【鞠】「姉だけじゃない、今のところは暴力被害を免れている貴方だって、どうなるか分からない。貴方が私にやったことは、結果的に現状を悪化させている。姉が勝手をやらかしたこと、そして父親を恨めばいいと思います」

【和佳】「…………」


 泣きそうだ。泣いていいと思う、実に不運だ。


【ババ様】「母親は何か云っておらんのか、父親に」

【鞠】「……因みに母親は?」

【和佳】「……帰って、こない……分からない……」


 詰み。


 いや、普通にもう一つ、メジャーな方法がある筈なんだけど……それに姉が気付いていないわけがない。それでも現状はこうなってる。


 理由は、明日聞くべきか。


【鞠】「最後に、一つ。明日、村田冴華の復学判定の最終日となります。よってお宅に訪問すること、切手を渡すついでに保護者たる父親に云ってください。形式上、保護者同伴の義務を課してるので」

【和佳】「……!」

【鞠】「以上です。この場を、解散します。帰って姉と一緒に居た方がいいんじゃないですか」


 立ち上がり、振り返らず教室を出た。


【ババ様】「……これが、都会の家族か」

【鞠】「いや全部がこんなんじゃないですから流石に。ただ、あの島の人達ほど、此処は単純じゃない」

【ババ様】「都会も最高では無いってことじゃな……」


 だから都会とか関係無しに世界的にそうなってるんだってば。


 興味無いから家庭の教育論を語るつもりは一切無いけど。


【鞠】「……嫌な縛りだ」


 「家族」。


 総合すると、私はこの概念が好きじゃない。それを確認する朝となった――




 6話前半が平和だった分、この辺は作者のテンションも低かったです。

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