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「まだ決めてないの?」
「言わないでよぉ。とりあえず、部活を引退するまでは考えないことにしたの。あと一年もすれば、イヤでも決まるだろうし。両親にもそう言って了解を得たから、担任にも言っておこうと思って」
…それを果たして担任が了承してくれるかは、分からないな。
「あっ、わたし、一応進路決めたんだった。後で報告しなきゃ」
「結局どうするの?」
「とりあえず、駅前の専門学校に行くことにした。学費は親に出してもらう。もちろん、一人前になったら返すけどね」
「出世払いか。カナらしいや」
そうこう話しているうちに、学校に到着した。
午前中は普通に授業をこなし、帰り際、ミホにラッピング袋を渡した。
「ミホ、これミユちゃんに渡して。あとこっちのお菓子も」
「はいはい」
コンビニの袋も渡した。
「ととっ…。担任、職員室に行っちゃう」
荷物を受け取ったミホが、教室から出て行こうとする林田先生を見つけた。
「呼び止めなきゃ。ミホ、行くよ」
「あっ、うん」
ミホは荷物を机の上に置いて、わたしと共に教室を飛び出した。
「先生! 林田先生!」
「ちょっと待ってくださいよ!」
「ん?」
廊下を歩いている担任を呼び止め、わたしとミホは駆け寄った。
「二人とも、廊下は走るもんじゃないぞ」
「すっすみません」
「って言うか、先生、歩くの速いですよ」




