表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/9

エピローグ

※本編最終話(8話)とエピローグを同日公開しています。

先に8話をお読みください。

「ひとりになりたいの」

 

 巫女姫は言った。

 召使たちはその意を受け、無言で部屋を後にする。

 人影が完全に消えるのを待ってから、彼女は引き出しを開けた。

 手に取る。

 鏡の中には、純白の婚礼衣装を着た女がひとり。

 髪は複雑な形に結い上げられ、一房、首元に垂れる。

 それを首にまわし、留めた。


 足音が近づいてくる。

 人払いした部屋に、断りもなく入り込んでくる男の影。彼もまた、白い婚礼衣装だったが、足取りはあくまで軽い。

 巫女姫と呼ばれる女は、振り返らずに口元を綻ばせた。


 美しい花嫁を見た男は、一瞬目を見張る。

 何かに気づくと、つかつかと歩み寄ってきた。無遠慮に伸びた素手が、彼女の首筋を這う。

「まだ持っていたんだな」

 男の指の動きを受け、鏡の中で、首元の石がきらりと反射した。

 磨かれていない、緑の混じった青。

 絢爛豪華な巫女姫の婚礼衣装の中、不釣り合いなほどにみすぼらしい石。

 真新しい白い紐に支えられている。

 誰かにもらった誕生日プレゼント。太陽が最も高い日。


「うん」

 ルーリはひとつ頷いた。

 鏡の中のゼファウスは、苦笑を浮かべた。

「そうか」

 石は弄ばれ、揺れる。

「誕生日おめでとう」

 鎖骨に触れる熱と、体内の熱が呼応する。際限なく動きそうな彼の手に、軽く一撃を加えて、彼女は立ち上がった。

「そろそろ行くか」

 花婿は、自らの指に白い手袋を滑らせる。

 花嫁は、自らの指の白い手袋を整えた。


 

 同時に、足を踏み出した。


 

 鐘が鳴る。

 笑顔の下で、指が絡まる。

 瞳に映った青空は一瞬。

 歓声が鳴り響いた。

 白い手袋。

 その下で、爪は食い込み、肉体は痛いほどにお互いを求め続けた。



 白い鳥たちが羽ばたいて、光の中へと消えていった。


 

 ――完――

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

いつか番外編を書くかもしれません。

そのときはまた、お付き合いいただけたら嬉しいです。

本作は2026年6月21日(夏至)に合わせて公開しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ