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後編

 なるほど。いまは店の人間すら信用できないから、こうしてデリバリーするのだな?これは女体盛りまであるぞ……と思って入った部屋には何も無かった。

 横に長い部屋は軽く50メートルはありそうで、その端にパイプ椅子がいつくか並べられていた。 


 思っていたのと違う。

 困惑するおれたちを他所に、幹事長は奥に向かって歩いてパイプ椅子に座るとおれたちを適当に並ばせた。そして腕を組むと

「よし、お前らいまから壁際に立って大きい声でなんか言え」と言った。


 そもそもの思惑や期待とは全く違う事態になった。それに幹事長が言うこともその目的も分からない。

 互いに顔を見合わせる中でひとりの男が前に出て、両手を後ろに組むと大きく息を吸い込んで「この度はァー!皆様のご尽力でェー!当然させて頂きィー!ありがとうォーございまァーす!」と叫んだ。

 三秒後、幹事長はどこから出したのか白い旗をあげて「やり直し」と言った。


 男の初動というか勘の良さにも驚かされたが、発声練習だ。中高生の頃に部活でやった。街頭演説ではマイクや拡声器を使っていたが、いまは肉体だけが武器らしい。

 覚悟の決まった奴から次々と前に立って大声を張り上げる。名前だの、感謝だの、目標だのと色々言うが幹事長は合格を出さない。

 段々と言う事が無くなり、時代に好きな食べ物だの体位だのAV女優だのと始めるが幹事長な首を縦に振らない。


 かく言うおれもいよいよ精魂疲れ果て、前に立ったものの何も思いつかず、大きく息を吸って「いつまでやらせんだ!意味ないだろこれ!」と叫んだ。

 叫んだ瞬間にしまった、と思ったが幹事長はおもむろに赤旗を上げて「おまえ、合格」と言うと指でおれを呼んだ。

「お前、国会ヤジ部隊のリーダーな。おれは疲れたから後は使えそうなのお前が選んで」と言って旗を預けるとさっさと帰ってしまった。


 議場におれの罵声が飛ぶと、ヤジ部隊が続けて「そうだそうだ」「おれたちを排除するな」と合いの手を入れた。

 もちろん総理はおれたちに構うことなく演説を続ける。演説が続く限りおれたちは罵声を浴びせ続ける。

 これが国会……これが国会議員の仕事なのだ。おれはそう思うと興奮が抑えられなくなってきた。

 居室に戻ったら一発抜いて貰おう、そう思いながら出した罵声はその日一番の大きな声だった。

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