前編
大っぴらに出来ない役職とは言え、おれは立派な大任と受け取って意気揚々と議場に足を踏み入れた。
柔らかな絨毯が革靴に吸い付くようであった。緊張感のある匂いが鼻腔をかすめる。
おれは自分の椅子に座り、喉の開き具合を確認した。同じ係の数名も、咳払いなどをして喉の調子を確かめている。
そして本会議が始まり、総理が登壇した。
おれは後ろを振り向き、幹事長が頷くのを確認して大きく息を吸った。
「無駄な質問だバカやろう!!」
居室に運び込んだ荷物を整理しながら、いずれここで飯を食ったり寝泊まりしたり秘書とヤったりするのかと想像しているとドアがノックされた。
喉元で精一杯の威厳を作り「入れ」と言うと、件の秘書が一礼しながら「失礼します」とこちらに向かってきた。
胸元の開いたブラウスと立体裁断のジャケット、長いスリットのスカートからは光沢感のあるパンストを穿いた脚が見える。
おいおい、いきなりか?
切れ長の目を見ながら鼻の下が伸びるのを必死に止めていたが、どうにも鼻腔は開き視野は狭窄しかけている。
「どうした」
半ば勃起しかけている為に迂闊に立ち上がることもできず、おれは再び喉元で作った虚勢を吐き出した。
「幹事長がお呼びです。なんでも新人の方々にのみお連れする場所があるそうです」
薄化粧の割に長い睫毛の秘書があまり瞬きをせずに言った。
おれ個人としてはそこに残念さのニュアンスを感じ取れなかった事が少し悲しい。
「わかった。すぐに向かう」
これもあった、待ち侘びた議員特権だ。料亭か?ノーパンしゃぶしゃぶの伝統はまだ残っていたのか?
おれは秘書の尻を撫でながら心を躍らせて自分の居室を後にした。
幹事長の部屋に着くと、おれ以外の新人もぞろぞろと集まってきている。
「揃ったか?よし、行くぞ」
幹事長が磨いていたメガネをかけ直して立ち上がる。おれと同じようなことを想像しているのか、何人かの新人議員がニヤニヤしながらその後に続いた。
おれも同じような顔をしているのだろう。絵に描いたような締まりのない顔をしているが仕方ない。
議員会館の廊下を歩きながら、馬刺しでも食べさせてもらって今夜は居室で秘書と一発二発……などと考えていると幹事長が地下にある会議室に入っていった。




