040 三成家の秘密を暴露!
ふわぁあー。旦那様、カッコイイー!(ニセだけど!)
なんでこれ、ニセなんだろうー。今言われている言葉も、真っ赤な嘘って事よね。
はああー。悲しくなってきたーぁ!
「しかし義姉たちは、大事な伊織に危害を加え、この披露パーティーを台無しにする計画を立てておりました。今回は未然に防げたものの、いつまた私や会社――並びに皆様の会社業務の妨害になるや解りません。そのため、ある秘密を公表する事に致しました」
その時、私は見た。鬼の形相の中松が、柚香さん――もうひとりの一矢のお義姉さま――を大人しくさせる為、素早く動いて口元を押さえつけている事を!
前から、後ろの様子がよーく見えますわよおおおー。
そして私に危害が及ばないように見張りの為に、真後ろに黒子の如く立っている人物――中松だと思っていたのに、いつの間にか美緒に入れ替わっていたのだ。
何という早業。入れ替わりの術を使ったのね!
もうこれ、忍者だ。忍者松! 隠密忍者松だ!!(ながっ)
「三成柚香、並びに杏香は、我が父である三成泰平とは、血縁関係にあらず!」
スーツの胸ポケットから取り出したDNA鑑定結果書を開け、一矢が高らかに掲げた。
ええっ!? うそーっ!
「彼女たちは前妻の不貞により、父、泰平ではなく、他所の男との間に出来た子。よって、三成家との関りが無くなった事が証明された今、彼女らの所有財産を差し押さえ、会社役員のはく奪、三成家を追放する事を宣言致します」
会場が更にざわつき、スキャンダラスな発表に記者のフラッシュが一斉に一矢に向いた。
「突然の発表で、皆様を驚かせてしまい申し訳ございません。三成家と懇意にして下さっている、ここへお集まりの皆様に当家事情は関係の無い事でございますため、今後の会社間取引は全て、私、三成一矢が後を引き受け、全責任を負います。そして、皆様の会社繁栄の為に尽力をお約束致します。若輩者でございますのでご迷惑をおかけする事も多々あるかと思いますが、どうか温かく見守って頂きたく存じます。皆様のご指導・ご鞭撻、どうか宜しくお願い申し上げます」
一矢が深々と頭を下げた。私も慌てて頭を下げると、更にフラッシュがたかれた。
あああ、そんな重大発表をする予定だったなんて・・・・。多分私の事があったから、挨拶前に秘密暴露とかブッ込んで来たんだわあああ。だから原稿無しだったのね。
でも、これで納得した。お義姉さまたちが、一矢を目の敵にしていたこと。
それは、自分たちが三成氏の本当の子ではないから。きっと二人は、この秘密を知っていたのね。
お義姉さまたちからすれば、本当の子である一矢は脅威。この事実が露呈してしまったら家を追い出されるのは自分たちの方だって解っていたから・・・・だから一矢にあんなに辛く当たって、一矢を本家から遠ざけたんだわ。
酷い。酷すぎる。
本当の子供である一矢が、実は無血統だった二人に、あんなに苦しめられていたなんて。赦せない!
だからこんな・・・・公開処刑みたいな事をしちゃったのね。さっきの私が襲われた事件もあったから、余計に赦せなくてこんな風に公表しちゃったんだ。スキャンダルは大企業の三成家にとってもダメージ大きいのに。それでも敢えてその道を選んだ。ダメージは自分で払拭するつもりで、自ら責任を取って頑張るつもりなんだ。
一矢。本当に強くなったんだね。あの日、公園で見た可哀想な一矢は、もう何処にもいない。
お義姉さまたちに虐げられて、それでも負けずに強い心で苦境を乗り越え、今日までやって来たんだね。
立派に成長した一矢の姿に、何だか感動した。まるで母親の気分だ。
「三成柚香、並びに杏香。この場より退席を命じる。今後一切、我が三成家に関わる事を禁ずる。以上だ」
一礼から顔を上げた一矢が、厳しい顔で柚香さんを見つめた。杏香さんはあんな事があったから、パーティーには出席できず、この場にはいない。想像するに、さっきのVIPルームでさぞかし困っている事だろう。
有無を言わせず中松が会場から柚香さんを引きずりだすと、場内がしーんと静まった。
沈黙を破るべく、パンパン、と一矢が手を叩くと、絞られていた照明が元に戻され、会場が明るくなった。
「醜い家庭内事情をこのような場で発表せざるを得ず、大変申し訳ございませんでした。この件に関しましては、私の独断で全て行いました。叱責・責任は私が全て引き受けますので、どうか関係の無い者への取材等は行わないように、よろしくお願い致します。また、伊織は一般の女性でありますので、過度な取材はどうかご遠慮いただきたいのです。彼女が傷つくようなことがあれば、三成家の全勢力を揚げて立ち向かいます。ご理解頂きますよう願っております」
有無を言わせず、一矢が美しく微笑んだ。
「さあ、本日はめでたい日。私事で恐縮ではございますが、以降はご自由に歓談や料理をお楽しみ下さい」
その一言で、張りつめていた雰囲気が、ふぁっと明るくなった。
途端に真後ろで待機してくれていた、美緒が私にこっそり話しかけてくれた。
「イチ君めちゃくちゃカッコいいね! ニセとか散々言ってながら、お姉ちゃんの事、ホンキみたいじゃないー?」
「そ、そんな訳ないよ・・・・。この場を取り繕うためのシナリオよ。今だけだと思う」
「そうかなぁー? そうは思えないけど。あ、それよりお姉ちゃん、後で中松さん紹介してっ」
「はい?」
「中松さんよぉ! もう、中松さんって、私の理想そのもの! お姉ちゃんが居なくなった時の中松さんったら、チョーカッコ良くて、チョー怖かったんだぁ! これ、行くしかないでしょ!!」
そうだった。美緒は任侠映画が大好きなのよ。理想の男が萬田銀次郎とかいう位だし、そっち系大好き人間。
でも、中松は鬼だよぉー。本気で怖いよー?
「あの冷徹な瞳、ゾクゾクするぅ。たまんない! あのキレた時の喋り方も完璧好み! 最高!」
あ、そっか。私を探している『本気の鬼松姿』を見て、カッコイイとか言っちゃうくらいだから、素の中松がオーケーって事よね。
「お姉ちゃんにこれだけ協力したんだから、絶対、ぜーったい紹介して、協力してね!」
絶対紹介する事と、絶対協力するようにと押し切られ、強引に約束させられた。
ありゃりゃ・・・・。恋が芽生える・・・・予感?
がんばれ、美緒!
打倒、鬼松!!(違うか)
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