神獣に愛されるだけの……
ぐだぐだと伸ばすより、終えられそうな時にスパンッと終えるのが一番だからね!
今話でっ! 最・終・話です!
取り敢えず、先に次回作情報〜。
なんかネタ帳を見てみたら、新連載できそうなのが七つとか八つとかあってね? あ、どうしよ? となった結果……!
《◯◯◯シナリオを回避する‼︎》(ヤンデレのヤツ)の第四弾にしようかと思います!
次回作タイトル……『捨てられエルフはヤンデレ保護者と生贄シナリオを回避する‼︎』です!
いつから始まるかは第一弾(伯爵令嬢は〜)に小話追加する予定なので、そこに書きます(今月中には始める予定だよ)。
その時まで、乞うご期待☆
それでは最後にご挨拶〜。
沢山の感想と、ここまで読んでくださった読者の皆様! ありがとうございました!
次回作でまたお会いしましょう〜!
今後も皆様に楽しんで頂ける作品を書けるよう、頑張らせて頂きますᕦ(ò_óˇ)ᕤ
島田莉音
それからの話をしよう。
結論から先に言うと……魔王達の悲しき過去からの解放・封印術式の崩壊をもってして、クリーネ王国が迎えるはずだった滅びの未来は回避された。
魔王と魔族達は、贖罪のためにアニス及びクリーネ王国に貢献することを誓う。
一応はアニスの配下であるはずなのだが……王太子ラフェルの直属部隊として色々と、なんかもう色々と働かされ……後に《王太子のなんかヤバい(可哀想な)部隊》とか呼ばれるようになったという。
先代神獣夫妻は、最後まで魔力を注ぎ切る前に封印術式から解放されたため、ほんの僅かに魔力が残ったようだった。
そして、折角今までの神獣達とは違い……子供と共に居れるのだからと、彼と一緒に暮らしたいと願った。
クリーネ王国も、神もその願いを受け入れ……先代神獣夫妻は、そのままクリーネ王国で暮らすこととなった。
国王夫妻の方は、クリーネ王国の滅亡を回避することができたため……肩の荷が降りた気分だった。
王妃ラナンが時を超え、最悪な未来を回避するための協力者として国王ジルドレットに協力を求めて約十八年近く。
片時も気を抜けず、加えて公務に追われる日々。
国王の髪がストレスで散るほどの忙しい日々が、やっと終わったのだ。
…………取り敢えず、ジルドレットは育毛剤を手に取り、ラナンはこそっと頭皮に良いと言われる食べ物を手配してあげようと決めた。
神殿は、然るべき時まで《神獣の核》を保管し……神獣が目覚めてからは、その姿が消えるまで世話をする役目を負っていたが……ある意味、今回の一件で神獣に仕えるという役目は終わったとも言えるだろう。
とはいえ、神獣に仕えることだけが神殿の仕事ではない。
今後も慈善活動に励む方針は変わらず……彼らは、全ての人々の拠り所であり続けた。
そして……過激派幼馴染〜ズは……。
*****
「いやぁ〜。なんていうかさ? 魔王様大騒動以外は、平和な日々だったねぇ」
純白のマーメイドドレスに身を包んだアニスは、神殿の控え室にあるソファに座りながらウンウンと頷きそう呟く。
その足元で、白いショートマントを羽織ったラスティは胡乱な目で彼女を見つめた。
「どこが平和だ、どこが」
「えぇ? 平和だったでしょう?」
「あれを平和と言えるのか……」
ラスティは「はぁ……」と溜息を零した。
魔王大騒動(アニス命名)が終わった後ーー。
魔王達の魔法によって操られていた人々が取った行動は様々だった。
アニスに理不尽な悪意を向けていたことを真摯に謝る者。
謝っていても、本気の謝罪ではない者。
今だに悪意を向ける者(嫉妬や権力に目が眩んだヤツなど様々)。
そして……今更ながら、アニスに媚を売り始めた者など。
その手の平の返しようというか、なんというか。
とにかく、色々と面倒だった。
一番最悪だったのは……急に他の幼馴染達を貶め始めた者達だろうか?
今の今までアニスに異常なほどに悪意が集まっていたが……。
魔王達の魔法が解けた途端、アニス達の立場を手に入れたいと思う者達が。
アニス達の権力のお零れをもらおうと媚を売る者達が。
仲違いさせるためやら何やらを画策して、急にラスティ、ブリジット、ラフェルの悪口や捏造された密告を言うようになったのだ。
だが……アニス達は一部の者達に過激派幼馴染と呼ばれている。
結果として、全員の手腕が遺憾なく発揮され……物理的にはアニスとブリジットで、精神的にはラスティとラフェルでそういった者達は一掃された。
後、余談だが……。
悪意の魔法が解けた所為で、今更ながら神獣の婚約者であるアニスに懸想をするヤツも出てきて。
そういった輩は、ラスティが秘密裏に処理した。
まぁ、そんなこんなで。
そんな騒がしい日々を平和の一言で片付けるには、ちょっと無理があるだろうと……ラスティは思うのだった。
だと言うのに、アニスはニコニコと笑いながら告げる。
「いやぁ〜。案外、簡単な婚約者生活だったね」
「いや、どこがだ⁉︎」
「だって、そうでしょう? ちょっと過激な行動もしたけど……それ以外は基本的にラスティと一緒にいて、甘やかされるだけだったからね〜」
「…………」
ラスティは強ち間違いでもない言葉を聞いて、思わず黙り込む。
確かに、幼馴染達のことに関してはちょっと(いや、かなり?)過激な行動ばかりしていたが……それ以外は、アニスと共にいて。
アニスと一緒に食事をして、勉強して、訓練して、仕事(地方への訪問やら、慈善活動やら)などをして……スキンシップして、寄り添って、甘やかして、甘やかされて。
そうやって、少しずつ二人の恋が愛へと変わって……今日を迎えたーー。
「ね? ラスティに愛されるだけの、簡単な婚約者生活だったと思わない?」
純白の、ウェディングドレスに身を包んだアニスは和やかに笑って彼のふわふわした毛並みを撫でる。
ラスティはその手の温もりに頬を緩く緩めながらも……俊敏な動きでアニスの膝に前脚を乗せると、クイッとその紅色に染まった唇に触れるだけのキスをした。
「っっっ⁉︎ ラスティっ⁉︎」
「まぁ、確かに。愛されてなきゃ……キスに慣れないよな」
「いや、充分慣れてないよっ⁉︎」
「いや、だいぶ慣れただろ⁉︎ 最初、初心&動揺しすぎて、ナイフぶん投げてきたのを忘れたのか⁉︎」
「あっ」
そう言われて、アニスはそうだったと顔を背ける。
魔王様大騒動が収まって落ち着いた頃ーー。
いつものようにラスティのふわふわの身体に背中を預けながら寄り添って、寝る前の会話を楽しむのが……その頃の日課となりつつあった。
それで……なんとなく、そういった空気になって。
ゆっくりと、互いの顔が近づいて……唇が微かに触れた瞬間ーーーー。
アニスは無意識にナイフ(剣の魔法で出現させた)を、ラスティにぶん投げていたのだ。
「…………あれは、仕方ないよ?」
「仕方ないでナイフを投げられたのか……」
「ご、ごめんね? 成長したから、許して?」
まぁ、最初の頃はナイフを何度か投げてしまったが。
徐々に慣れて……やっぱり顔が赤くなるのは止まらないが、ナイフを投げなくなるまでには成長した。
これも愛の賜物、ということにしておこう。
「まぁ、今はそんなこともなくなったし……いいか」
「そうそう。褒めていいよ?」
「調子に乗るんじゃない」
「あぅ」
ぺしっ。
肉球で額を軽く叩かれたアニスは、恨めしそうな顔をして頬を膨らませる。
ラスティはそんな彼女を見てクスクスと笑った。
「ぶっちゃけ、これからの方が心配だが……恥ずかしいからってナイフ投げたりしないでくれよ?」
「だから、キスは慣れたよ⁉︎」
「馬鹿か。これからは夫婦なんだから、キス以上のことをするだろ?」
「…………ふぁっ⁉︎」
アニスはそれを聞いて、顔を真っ赤にする。
これは神から神託を受けたのだが……神獣とその伴侶は、他の人と変わらぬ方法でも子を成すことができるらしい。
今までの神獣夫妻が神獣の核として子供を残していたのは……封印術式が弱まる時期まで、その子に長い時を超えさせるためだった。
しかし……今はその必要がなくなったため、核としてではなく子供として産めるのだ。
ラスティは自分で言っておきながら照れた様子で頬を赤くしつつ……自身の気持ちを吐露した。
「…………俺は、お前との子が欲しいんだけど……アニスは嫌か?」
「い、嫌な訳ないでしょっ⁉︎ で、でもでもっ……子供を作るってことは、そのっ……‼︎」
「そうだな。多分、想像してる通りだ。だから、ナイフは投げないように……頑張ってくれよ?」
「〜〜〜〜っ‼︎」
二人は互いに真っ赤になりながら、顔を見合わせる。
そして、アニスは頬を膨らませながら……彼の顔をウリウリと撫でくりまわした。
「顔赤いのは変わらないけど、若干ピュアラスティがいなくなったぁ〜‼︎」
「煩いっ‼︎ 俺だってちょっとは成長するわ‼︎」
「むきぃぃぃ‼︎」
「怒るなよ‼︎」
ギャーギャー言い合う二人は、こんな日でも変わらない。
しかし……廊下に繋がる扉からノックと共に聞こえてきた声に、動きを止めた。
『ほら、時間よ〜‼︎ イチャつく暇あったら、とっとと聖堂に来なさい〜‼︎』
「ハティア⁉︎ イチャついてないよ⁉︎」
『廊下まで声が聞こえてるのに、イチャついてないと言うの⁉︎』
アニスとラスティは互いに顔を見合わせて、ちょっとバツが悪い顔をしつつ……廊下に出る。
そこで待っていたハティア、神殿騎士のオルトとティーダはそんな二人を見て……クスリッと笑った。
「こんな日まで変わらないんだから」
「いやいや、多少は変わりましたよ」
「まぁ、とにかく?」
「「「結婚式のお時間ですよ」」」
アニスとラスティはハティア達に先導されて、聖堂へと向かう。
今日はアニスとラスティ……そして、ブリジットとラフェルの合同結婚式だ。
本来なら別々に結婚式を挙げるべきなのだが……四人は一緒に式を挙げることにした。
それは、四人が互いを大切にしているからで。
これからも……伴侶を得ても、幼馴染として大切であることは変わらないと皆に見せつけるため。
「ブリジット‼︎」
「アニス‼︎」
聖堂入り口の扉の前で、先に来ていたらしいブリジットとラフェルに……アニスは駆け寄る。
アニスのドレスとは違い……Aラインのウェディングドレスを着たブリジットは、幼馴染の姿にふわりと微笑んだ。
「ふふっ。アニス、綺麗だわ」
「ブリジットだって‼︎ 本番当日まで秘密してた甲斐があったね」
「えぇ、そうね」
クスクスと互いに笑い合うアニスとブリジット。
そんな二人を見た結婚式用の白い王族服を纏ったラフェルは、隣に来たラスティに笑いを零した。
「なんか、わたしといた時よりもブリジットが嬉しそうで……お前の嫁にわたしの嫁が取られた気分なんだが?」
「俺だって似たような気分だ、馬鹿」
「お前もか。なら、仕方ないな」
「あぁ」
ラスティ達もケラケラと笑い、それぞれの婚約者の隣に立つ。
そして、するりっとその手を取り……笑顔を向けた。
「ほら、もう時間だ。いつまでもアニス嬢ばかり構ってたら、拗ねるぞ?」
「もう……何を言っているの、ラフェルったら」
「ラスティも拗ねる?」
「まぁ……仲良いのは今に始まった話じゃないが、今日だけは俺に集中してくれ」
「ふふふっ、はーいっ‼︎」
四人は互いに笑い合って、ゆっくりと開かれていく扉をくぐり……聖堂の中へと足を踏み入れる。
こうして……(アニス的には)神獣に愛されるだけの、簡単な婚約者生活は終わり……。
愛しい夫に愛されるだけの、簡単な夫婦生活の幕が上がるのだった。




