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語られるは、とある王妃の秘密。或いは悲しき真実(1)


シリアスだよ〜‼︎

暫くシリアス続くよ〜‼︎


よろしくね〜‼︎

 







 応接室に移動したのは、幼馴染ーズと国王夫妻、レーマン公爵夫妻、そして……黒い靄を纏った男女四人。



 襲撃者でもある不審人物四人と同じ空間にいるというのは危険極まりない。

 しかし、王妃ラナンは……彼らにも関する話だと言って、その場に彼らを留めていた。





「取り敢えず、俺が魔法で拘束しているから……逃げられることはないだろう」


 騎士から四人を引き継いだラスティは、魔法で彼らを拘束して地面にしゃがみ込ませる。

 ラナンはそれを確認して、頭を下げた。


「ご苦労をおかけしますわ、ラスティ様」

「構わない。どうやら……余計な奴らには聞かせられない話らしいし」


 この部屋には関係者アニス達以外は誰もいない。

 本来であれば、騎士も護衛のために部屋で待機するべきなのだが……国王は騎士達を追い出した。

 つまり、関係者以外には聞かせられない話をするつもりなのだろう。

 ラナンはゆっくりと頷き、どこか遠い目をしながら溜息を零した。


「………何から話しましょうか。いざとなるの、上手く言葉が出てこないわね」


 重い沈黙が満ちて、静寂がその場を支配する。

 しかし、王妃は覚悟を決めたように目を閉じると……ゆっくりと口を開いた。


「…………わたくしは、未来を知っています」

『……………え?』


 国王ジルドレット以外の全員が、目を見開いて固まる。

 だが、王妃は言葉を続ける。


()()()()()()()()()()()()()()()()。それが()()辿()()()()()()()()()

『魔王っ……⁉︎』


 魔王ーー。

 それはお伽話だとも、実在した人物だとも言われる……実しやかな存在。

 冗談を言っているのかとも思えたが……王妃の言葉は嘘をついているように見えなかった。


「けれど、今はそうはならないと思うわ。その未来へと繋がる分岐点ターニングポイントを変えてきたし……最重要条件であった、()()()()()()()から」



「あーぁ……そういうことか」



『っっ‼︎』


 今の今まで黙っていた……ブリジットに蹴り上げられた方ではない、ひょろりとした男が納得したような声を漏らす。

 男は苦しそうに顔を歪めながら、王妃ラナンに視線を向ける。

 そして、憎々しいと言わんばかりの声で質問した。


「君だね? 僕らの邪魔をしてたのは」

「………えぇ」

「……そして、君は僕のことも……()()のことも……()()知っているってこと?」

「…………えぇ、そうよ。わたくしは()()()()()()()()わ。()()()()()()()()


 男はそれを聞いて、大きく息を吐く。

 そして、全てを悟った顔で告げた。



「…………君、()()()()()()ね?」



 王妃ラナンはその質問に、困ったような笑みを返す。

 それこそが答え。

 ラスティはそれを見て、慌てたように叫んだ。


「ま……待て待て待て‼︎ そんなこと、できるはずがないっ……‼︎ 時を超えるなんてっ……禁忌の一種だろうっ⁉︎ そんなこと、できるはずがない……‼︎」


 ラスティは大声で叫ぶ。

 魔法は万能ではない。

 大きな力には、代償が付きものだ。

 時を超える(タイムリープ)ーーーーそれは禁忌と言われても過言ではない、大きすぎる力の行使。

 普通の人間ならばできるはずがない。



 …………そう……()()()()()ならば。




「…………いいえ、できたわ。だって、わたくしを過去に送ったのは貴方ですもの…………()()()()様」




『なっ……⁉︎』


 全員の視線がラスティに向かう。

 だが、そう言われた本人ラスティが誰よりも驚いていた。


「唯一、無事であり……時間を超えるのに適性があるのがわたくしだった。だから、貴方は自身とラフェル、ブリジット、ジルドレット様の命を代償に……わたくしの精神を過去に送ったわ。最悪の未来を変えるために」

「……………未来の、俺が……」


 ラスティは呆然とする。

 それはそうだろう。

 時を超える魔法が禁忌であることは、魔法に長けているラスティが誰よりも理解している。

 なのに、未来の自分がそんな選択をするということは……それほどまでに()()()()()()()()()()()()()()()()()という意味だった。


「…………色々と聞きたいことがあるでしょう。でも、まずは全ての始まりの話をするわ。それを知らないと、意味がないから」


 王妃はゆっくりと語り始める。

 それは、未来の話ではない。

 魔王がクリーネ王国を滅ぼした理由……過去に起きた悲しい話。




 過去のクリーネ王国で起きた……。





 王族の兄妹と……とある青年の、出会いの話を。







 *****





 遠い遠い、昔の話。

 まだ、その国に神獣という存在がいなかった頃。



 クリーネ王国と呼ばれる国に、とても見目麗しい王子と姫の兄妹がいた。



 強く賢い兄王子と、美しく優しい妹姫。

 二人は国民達に愛されて、穏やかな日々を過ごしていた。

 そんなある日ーー頻繁に行っている孤児院への訪問に向かった妹姫は、とある青年と出会う。



 それが、運命の始まりだったーー。



 青年は旅人であった。

 彼はただ旅をするだけでなく……様々な国を、土地を巡り、その場で見聞きした出来事や物語を子供達に語る吟遊詩人(語り部)のようなことをしていた。

 そのため、偶然にも孤児院を訪れており……妹姫と出会ったのだ。

 一目見た瞬間に二人は互いに惹かれあい……その距離を少しずつ縮めていった。

 だが……方や旅人、方や王族。

 身分の差と……妹姫を妻にと望む従兄弟が、二人の間に立ち塞がった。


 ………しかし、運命というのは巧妙にできているもので。


 現実から……全てから逃げていた旅人は、愛しい人の手を取るために、覚悟を決める。


『………一年だけ、待っていてくれ。オレは必ず君を迎えに来る』

『…………待っているわ。いつまでもっ……‼︎ わたくしの心は、貴方だけのモノよっ……‼︎』


 旅人は約束を交わし、王国を後にする。

 一年……それがタイムリミット。

 それが過ぎれば、婚姻適齢期である妹姫は無理やり従兄弟と結婚させられる。

 しかし、妹姫は例え従兄弟と結婚させられようと……その心を分け与えるつもりはなかった。



 そして……一年後。



 旅人は約束を果たすためにクリーネ王国に戻ってくる。

 王族の姫君を娶るに相応しい地位を得て。






 魔族と呼ばれる魔法に長けた者達の王国の王……《魔王》として、妹姫を迎えに来たのだ。







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