語られるは、とある王妃の秘密。或いは悲しき真実(2)
…………書いてて思ったんだ。
…………えっ? シリアスすぎない……(真顔)?
しかし、大切な伏線(?)なので……‼︎ このままシリアスな内容で行きます‼︎
過去に起きたこと編(?)なので、話がザクザク進むよ‼︎
暑いから、体調に気をつけて過ごしましょう‼︎ それでは、今回も〜よろしくねっ☆
魔力というのは、この世界には自然と漂っているモノ。
しかし、地域によってその濃度が異なる。
高魔力環境下では、生き物は総じて体調を崩しやすい。
適応力や体力のない者であれば、命の危険に晒されるほどだ。
しかし、そんな高魔力環境下に適応した者達もいた。
それがーーーー《魔族》。
人と姿は変わらないが、高魔力環境下でも状態異常を起こすことなく活動でき……加えて、魔法の扱いに長けた先進者達。
高度な魔法技術を持つ魔法王国の王ーー《魔王》となった青年は、妹姫を娶るためにクリーネ王国へと戻ってきた。
『迎えに来た』
何も知らずに応接室を訪れた妹姫は、ちょっとドヤ顔をする青年……魔王を見て、目を見開く。
そして、我慢できなくなったように笑い出すと……思いっきり彼に抱きついた。
『ふふっ……ふふふふっ……待ってたわ‼︎ ずっと、ずっと‼︎ 貴方を想ってた‼︎ まさか、本当にわたくしを娶るに相応しい地位を得てくるとは思わなかったけど‼︎』
『それはそうだろうなぁ。オレもだ。恋って凄い』
青年は魔法王国の王子であったが、その柵を面倒に思い……家出して、旅をしていたのだ。
しかし、愛しい者を手に入るために国へと帰り、その実力を持って周りの者達に自分を王として認めさせた。
実力主義国家であるからできたことである。
先進国でもある魔法王国との繋がりは、クリーネ王国に利益になる。
クリーネ王国の者達……兄王子は特に魔王と妹姫の婚姻を喜んだ。
王族である以上、政略結婚が主流である時代。
偶然にも嫁ぎに行く相手として申し分もない地位を持った相手と、恋愛結婚をするのである。
兄として喜ばないはずがない。
…………だが、それに意を唱える者がいた。
…………妹姫を無理やり娶ろうとしていた、従兄弟である。
『ふざけるな‼︎ お前は僕の妻になるんだろうっ⁉︎』
『いいえ、わたくしは彼の妻になるの。この婚姻は国益にも繋がるわ。これは決まったことよ‼︎』
『っっ……‼︎』
妹姫が嫁ぐ日まで、従兄弟は魔王と妹姫の婚姻を認めることはなかった。
皆に祝福されたいと思っていた妹姫は少し悲しい気持ちになるが……愛しい人と婚姻できること、明るい未来へと想いを馳せて前を向くことにした。
高魔力環境下である魔法王国での暮らしは、妹姫……魔王妃の価値観を大きく変えるものだった。
魔族ではない魔王妃は、高魔力環境下でも動ける魔道具を与えられた。
高魔力環境下では普通の人間はどうすることもできないという価値観を持っていた魔王妃はそれだけで驚愕だった。
しかし、彼女の驚愕はそれだけに止まらない。
先進的かつ高度すぎる魔法技術、魔法医療、魔法教育、魔族の高度な魔法を扱う才能。
全てが魔法で成り立つ国。
自分達の暮らしがなんて遅れているのか。
先進国と言われる理由がよくよく分かった。
そんな国で暮らし初めてから、数年後ーーーー。
魔王妃として暮らしていた彼女はある問題に直面する。
それは……世継ぎが一向に産まれなかったことだった。
王族の教育を受けてきた魔王妃は世継ぎの大切さをよくよく理解していた。
だが、何年経っても魔王との子が腹に宿ることがない。
周りの者達も世継ぎを産むことを急かすこともなく……余計に焦燥が募っていく。
王族の姫君であれど石女となれば、離縁や魔王が側妃を娶ることになるかもしれない。
魔王妃はある日、とうとう我慢できなくなり……魔王へとその不安を打ち明けた。
『わたくしはっ……このままでは貴方の妃としての役目を果たせないわっ……‼︎』
悲痛な魔王妃の姿に、魔王は泣きそうになる。
そして、慌てて彼女の身体を抱き締めて……今まで隠していた秘密を打ち明けた。
『あぁ……あぁっ‼︎ すまないっ‼︎ お前は悪くないんだ‼︎ 悪いのはっ、オレなんだよ‼︎』
魔王から語られたのは魔族の欠点。
高魔力環境に適応し、魔法の才能の代償に生じた……魔族特有の悲しい定め。
それは……生殖機能の低下、だった。
分かりやすく言ってしまえば、魔族は総じて子供ができにくい体質になっていたのだ。
そのため、魔族同士の婚姻では子供ができることは一切なく……魔族と魔族以外の人との婚姻でも、一人以上の子が産まれたら奇跡に等しいとされている。
魔王が今までそれを黙っていたのは……自分の所為で、愛しい子を抱くことができないかもしれないと知った魔王妃に、嫌われるかもしれないと怯えていたからだった。
それを聞かされた彼女は全てを理解した。
そして……嫌われるかもしれないと、不安がって黙っていた愛しい夫のおでこをペチッと叩いた。
『馬鹿な人。もっと早く聞かせて欲しかったわ』
『…………すまないっ……すまないっ……‼︎』
『……謝らなくていいの。やっと事情が分かったから、もう大丈夫よ』
『…………どうかっ……オレのことを嫌いにならないでくれっ……‼︎』
『もうっ……本当に馬鹿な人ね‼︎ 子供ができないかもしれないぐらいで、わたくしが貴方を嫌いになる訳ないわ。わたくしが焦っていたのは、魔族も普通に子供を産むと思ってたからよ‼︎ 違うなら違うで、あぁそうなのねって納得するわ‼︎』
一国の王でありながら、妻に嫌われることを恐れて秘密を抱いていた夫を抱き締めながら……魔王妃はクスクスと笑った。
『それに……貴方をわたくしが独占できるなら、それはそれで嬉しいわ』
だが……そんな話をした半年後ーー奇跡は起こる。
魔王妃が、懐妊したのだ。
魔王妃が妊娠したことは、子供ができにくい魔族達が、国を挙げてお祝いするような喜ばしい知らせとなった。
だが、魔法王国は高魔力環境下。
高魔力がお腹の子に影響を与えかねないと判断した魔王と側近達は、魔王妃が安定期に入ったら……母国に里帰りさせ、子供が産まれるまではクリーネ王国で過ごさせた方がいいと考えた。
魔王妃もそれに納得し、悪阻が終わって安定期に入った頃……国王ゆえに長期間、国を空けることができない魔王に見送られながら、魔王妃はクリーネ王国に帰省した。
魔王から事前に連絡を貰い、魔王妃の帰国を受け入れたクリーネ王国の国王……王となった兄は妹姫の帰国に喜び、彼女が過ごしやすいように色々と用意をした。
隠居した両親や、兄の妻となられた王妃……沢山の人達が魔王妃の帰省と懐妊を喜んだ。
友人達とお茶をしたり、義理姉から出産のアドバイスを貰ったり。
両親が産まれてくる子供へのプレゼントを沢山用意して苦笑したり……定期的に会いに来てくれる魔王との逢瀬を楽しんだり。
そうして、魔王妃は大きくなっていくお腹を慈しみながら、日々を過ごしていたのだが……。
……………………世界は、残酷だった。
『あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ‼︎』
クリーネ王国の一室に、愛しき妻に会いに来たはずの魔王の絶叫が響いた。
兄王夫妻も、両親も、誰も彼もその光景に言葉を失くしていた。
魔王の腕に抱かれた、血塗れの身体。
特に腹部をズタズタにされた……死体。
…………彼女の生まれ故郷であるというのに。
幸せな未来が、待っていたはずなのに。
それなのに、まるで……魔王に見せつけるように。
そんな未来は許さないと、示すように。
魔王妃は何者かによって……無残に殺されていた。
『なんでっ……なんでなんでなんでなんでっ……何故なんだっ‼︎ どうして君が殺されなきゃいけないんだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ‼︎』
………………………そうして……。
愛しき人の死は、魔王を狂わせた。




