29話 村長の息子
「すいませんうちの子が、、、」
ヴェルトは椅子に座ったまま、机を挟んだ向かい側の相手に平謝りしていた
相手は恰幅の良い中年の男性。頭のてっぺんが少し輝いている。
彼はこのウィパス村の村長さんらしい。
「いえいえ、きっとうちの子から先にちょっかいを出したんでしょう。この子、村の外から来た人への偏見がすごくて、、、ほらワッパ。何をしたのかちゃんと説明して、謝罪しなさい。」
そう言って、村長は隣に座っている小太りのガキに謝罪を促す。
「・・・」
「どうした?何も言わないつもりか?」
「だって、俺悪くないもん、、、、」
小太りのガキ、、いや『ワッパ』とかいう名前のガキは包帯が巻かれた顔で抗議する。
「あのなぁ。お前は村長の息子としての自覚を持ってだな、、」
「・・・」
断固としての無言。ここで無言を貫けるのは子供の特権だな。
俺がワッパに顔面キックをかましてからしばらく後、俺がどうしたもんかと迷っているところを近場にいた村人に目撃された。
見知らぬ子供と、その前に突っ伏した村の子供達。傍から見たら、俺がやばい奴確定な案件ではあるが、何もお咎めなく全員保護され、この村長の家に連れてこられて今に至る。
どうもヴェルトが、事前に俺の特徴を村人達に伝えていたらしく、悪ガキとして有名なワッパ達の方からケンカを吹っ掛けたんだろう。と察されたそうだ。
「いい加減にしなさい。悪いことをしたなら謝る。謝罪もできないような男は、一人前にの男とは言えないぞ?」
「・・・」
「はぁぁ、、、すいませんヴェルトさん。本人から説明もできずに、、」
「あぁ、いえ手を出してるのはうちの子の方なんで、、」
「違いますよ父さん。そこのワッパって子が、先に棒で殴りかかってきたんです。俺は正当防衛です。」
「!なんと、、」
俺の説明に村長が一番面食らう。
「ワッパ。今のは本当か?お前、あれほど人に棒を向けちゃいかんと言ったのに。下手したらこの子にケガさせとったのかもしれんのだぞ?」
「・・・」
「そうか、、悪い子には罰を与えんといかんな。」
「!待ってくれよ親父!『一日一人暮らしの罰』は勘弁してくれ!」
「ならば、この子にちゃんと謝りなさい。」
「ぐぬぬぬぬ」
罰とやらが相当嫌だったのか、ワッパは渋々こちらに向き合う。
「すいませんでした。」
「声が小さいぞ。」
「すいませんでした!」
「と、言っておりますので、今回は許してはくれないかねユート君。」
村長も輝く頭を下げながら一緒に謝ってくる。
まぁこれ以上詰めても何も良いことは無いだろうし、ここらで許してあげるのが、大人の余裕というものだろう。前世合わせても20代だけど。
何も無く許してやろうしたところで、妙案が思いつく。
「許す代わり、と言ってはなんですが、この家ある本を読ませていただくことはできないでしょうか?俺は本を読むのが好きなんです。」
「本、、?ですか?まぁ無いことも無いですが、、村の税に関する帳簿ぐらいですよ?あまり子供が見て面白いものでは無いと思いますけど、、」
村の帳簿か、、確かに大したことは無さそうだけど、近隣の村の名前とかは載っているだろうか。まぁ見せてもらえるなら見せてもらおう。
「ぜひお願いしたいです。」
「そうですか、、でしたら、帳簿を保管してる部屋に案内しましょう。」
***
「変わった子ですねぇ。あの年で帳簿が見たいだなんて。五歳でしたっけ?」
「えぇ。まぁ育ちざかりですからね。好奇心が旺盛なんですよ。」
五歳だとぉ?俺よりも三つも下じゃないか。
ワッパは唇を噛む。
口の中は、ほんのりと血の味が残っている。アイツに蹴られたときに切った口内がまだ治っていない。許さないぞ。よそもので俺よりもチビなガキの癖に俺に歯向かって謝罪までさせやがって。だが、もう今日中には村から出ていくらしい。
どうにかその前に痛い目を合わせてやらないと気が済まない。
何か、、何かいい案は、、
ッ!いい案を思いついたぞ。
流石は俺様。クレバーな案を思いつくぜ。
そうと決まれば、あいつらにも手伝わせねぇと。
「親父!俺ちょっと出かけてくる!」
「こらワッパ!それが反省している者の態度か?すいませんねヴェルトさん、、」
「ハハハ。ユートが許したんだからもう大丈夫ですよ。じゃあ俺も出ますね。せっかく来たんですから帰る前に村の周りの魔獣掃除をしてきます。」
「いいんですか?いつもありがとうございますヴェルトさん。」
「いえいえ、世話になっているのはお互い様ですから。」




