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第32話 いなくなったあの人は ※千鳥視点&ライル視点

 ライルはローハンの町にやって来ていた。

 午後を過ぎた時間に到着し、鳥族たちの中にシャルがいないか、初春たちと探して回る。


「すまないな、初春」


「いいえ、いいんですけど……元婚約者さんはいますかね?」


「どうだろう、いたらいいのだが」

 

 見たこともない鉄の塊が、ローハンの町の方角に向かったと聞いて来たのだが、シャルの姿はここにはない。


「ライル様、シャルトーチ様はすでにいないようです。別の場所に行ってしまったのでしょうか」


「そうか……」


 町のどこにもシャルがいないことをグレイから聞き、ライルは彼女のことに思いを馳せ、大きなため息をつく。


「どこへ行ってしまったのだろうか」


「もしシャルトーチ様がこの町に来たのか、聞いてみましょうか」


「ああ、そうしよう。彼女ほど美しい者ならば、来ているなら目撃情報ぐらいはあるはずだ」


 ライルとグレイは聞き込みをすることに。

 お願いだから誰かシャルトーチのことを知っていてくれ。

 そんな願いを込めながら。


「すまない。この町にシャルトーチ・ビルライラという女性は来なかったか?」


「シャルトーチさん!? 知ってるよ」


「なっ……知っているのか?」


 いきなりシャルのことを知っているという女性に出会う。

 これは奇跡なのでは?

 ライルはそんなことを想い、密かに身震いをする。


「知っているも何も、我々を救ってくれた女神のような人だよ」


「救った……? どういうことだ?」


「おーい。この人たち、シャルトーチさんたちの知り合いなんだって」


「本当か!?」


「シャルトーチさんの知り合いとなると、もてなさなければならない。誰かシュウに声をかけてきてくれ!」


「すぐに呼んで来るよ!」


 シャルトーチの名を聞き、集まってくる人々。

 初春は初めて見る鳥族に驚き、ライルとグレイの背後に隠れる。


「これは……どういうことでしょう」


「分からない。シャルトーチは何をやったんだ?」


「これはこれは、シャルトーチさんのお知り合い……って、ライル皇子!?」


「「「ライル皇子!?」」」


 ライルの元にシュウが来るのだが……彼のことを知っていたようで、驚愕に目を見開く。


「あ、申し訳ございません! まさか王族の方とは知りませんでしたので……」


「構わない。それよりシャルトーチの話を聞かせてほしい。彼女は何をしでかしたのだ?」


「しでかしたなんてとんでもない。彼女は英雄ですよ」


 シャルが何をしたのか、シュウから聞くライル。

 話を聞いている間に胸が熱くなり、感激に口元を押さえる。


「どうかしましたか?」


「いや、何でもない……何でもないんだ」


 シュウから聞くシャルの話。

 それはライルがよく知る、優しく気高い彼女そのものであった。


(シャルトーチ……元の君に戻ったのか? 会いたい、今すぐ君に会いたい)


 彼女への思いが爆発するライル。

 居ても立っても居られなくなり、踵を返して町の外へと走り出す。


「あ、どちらへ参るのですか?」


「シャルトーチの居る所へ! 彼女はどこへ行った?」


「北の方角でございます」


 ライルはいなくなった後のシャルのことを知らない。

 だが狂う前のシャルと再会できる。

 そのことを確信し、笑顔で彼女が去った方角へと向かうのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 鳥の鳴き声が響く夜。

 静かな暗闇の下、私たちはキャンプをしながら食事をしていた。


「いやー、このカルボナーラというのも美味しいな!」


「アーシャ、それでもう五つ目だよ」


「それだけ美味しいってことさ。な、ルキア」


「そうだよねー。美味しいよねー」


 パスタを美味しそうにモリモリ食べるアーシャ。

 ルキアも満足気な表情を浮かべながら食事をしている。

 ちなみにルキアは二皿目のパスタだ。

 二人とも良く食べるなぁ。


「でも無事に解決できて良かったね。町の人たちも喜んでいたよ」


「ですわね。人を助けるのはわたくしの使命だと考えておりますが……喜ぶ顔を見ることができるのは、ひとしおですわ」


「だね。それにまた沢山お魚貰ったし、当分は食事にも困らないね」


「チドリの魚料理、もっともっと食べたいな」


「リリルもチドリ様の料理好きなの」


 嬉しいことを言ってくれる。

 元の世界では人に食事を振る舞うようなことをしたことは無かったが、これだけ喜んでくれるなら本望だ。

 料理が楽しいって人の気持ちが、何となく分かる。


「でも残念だなぁ」


「何がですか?」


「カトルさんがいなくなったことがだよ。何かあったのかな?」


「…………」


 私がカトルさんの話を出すと、無言になってしまうシャル。

 カトルさんとの間に何かあったのかな?

 でも聞いたらいけないような雰囲気だし……黙っておいた方がいいのかな?


 いなくなった人のことも大切かもだけど、でもやっぱり目の前にいる大事な人のことの方が優先だ。

 あまりしゃべりたくなさそうだから、シャルには聞かないでおこう。

 私はそう決めた。


「あーあ。これからもずっと一緒にいたいね。今日みたいに……今日だけじゃなくて、楽しい日々が続いてほしい」


「私も! チドリさんの美味しいご飯を食べて暮らしていきたい!」


「ボクもボクも! この際だから、チドリをお嫁さんにしようかな。そうしたら永遠にボクに料理を作ってくれるだろ?」


「二人共、ご飯のことばっかりだね」


 大笑いする私たち。

 私とリリル、それにシャルとアーシャとルキアがいて……

 これがもう当たり前になっていた。

 これから先もずっと、誰一人として欠けることなく、生活をしていきたい。

 

 そんなことを考え、夜空の月を見上げる。


「リリル、欲しい物が決まったなの」


「そうなの?」


「うんなの。もっと皆と楽しく暮らしたいなの。だから皆と一緒の時間が欲しいなの!」


「リリル……ならボクの時間を君に捧げよう。一緒に訓練をしようか!」


 パスタを手にしながら立ち上がるアーシャ。

 そして高らかに笑い、リリルの方に手を差し伸べる。


「一緒に訓練するなの!」


「いや、しなくていいですから。リリル、一緒に楽しい時間を過ごしましょう」


「うんなの」


 何が欲しいか自分でも分からない。

 そう感じていたリリルだったが、旅を通して、本当に欲しい物を見つけたようだ。


 でもそれは物ではなくて、私たちと過ごす時間。

 仲間であり友人である私たち。

 リリルが私たちを同じように友人と認めてくれたみたいで、私は泣きそうなほど嬉しかった。


「じゃあ一緒に寝ようよ。今日は私の部屋で。ね?」


「ダメなの。リリルはチドリ様と一緒に寝るのが好きなの」


「ガーン……フラれた」


「では、ボクはチドリと寝るとしよう。そうしたらリリルと一緒に寝れるということだろ?」


「あ、ズルい! なら私も一緒に寝るんだから!」


 大騒ぎするアーシャとルキア、その様子がいつも通り過ぎて、私とシャルはクスッと笑う。


「チドリ様」


「ん?」


「悲しいことも、信じれらないことも多い世の中ですが、これからも一緒に生きて参りましょう」


「うん。一緒に生きて行こう。皆で、楽しく」


 頷き合う私たち。

 リリルが私の言葉に賛同するように、頬ずりをしてくる。


「そうと決まれば、今日は皆で寝ましょうか。あのベッドなら何とかなるかも知れませんわよ?」


「ははは……皆で寝れるかな?」


 運転席の後ろにあるベッド。

 アーシャが来てから、あそこで寝てないけど、皆で眠るには狭そうだ。

 でも楽しそう、皆で一緒に寝るなんて。


 笑顔の皆を見て、私も笑顔になる。

 まだまだ旅は始まったばかり。


 シャルを治す旅、そして私たちの友人としての旅行のような日々は、これからも続いていくのだ。

 

 おわり

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