表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/22

第14話 託された言葉

一直線の道路の上。

風が軋み、雷が鳴る。

カイが踏み込む瞬間、ハルトも反応する。


カイ「空走脚(エアステップ)!」


カイの姿が掻き消える。

対するハルト。


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!」


2人は衝突する。

衝撃波が鉄骨を吹き飛ばす。

だが、カイの攻撃はそれだけじゃない。

打撃の後。

遅れて見えない斬撃が空間を裂く。

ハルトの脇腹から血が出る。


ハルト『くそっ、打撃と斬撃どちらも対応しきれない』


カイはもう背後。


カイ「風閃打(ウィンドブロウ)!」


高速接近からの連打。

連続する見えない追撃。

だが、ハルトの瞳が光る。

雷が脚に絡みつく。


ハルト『避けきれ!』


ドンッ!

爆発的加速により、間一髪斬撃は避けた。

ハルトはすぐさま反撃に移る。


ハルト『速度で押す!』


ハルトが鎌を振るう。

雷が一直線に走る。

カイは空中へ跳ぶ。


ハルト『そこだぁ!』


カイを捉える。

確実に入る一撃だ。

しかし、


カイ「雷はいいなぁ、動きが単純で」


風の足場。

ありえない角度からの蹴り。


ハルト「はぁ!?」


ハルトは地面に叩きつけられ、斬撃をもろに喰らう。

背中には大きな傷。

打撃の衝撃と合わさり、ダメージがでかい。


カイ「もう終わりか?ふっ、これでお前の理想ともお別れだな。じゃあな」


拳が振り抜かれる。

――だが。

バチンッ!

空気が爆ぜた。


カイ「お前、その傷でまだ立てるよかよ」


ハルトの身体の周囲に青白い電光が走っていた。

ハルトは俯いたまま、低く息を吐く。


ハルト「……最初は、止める側だった」


足元から雷が走り、地面に稲妻が枝分かれする。


ハルト「……まさかここまで追い詰められるとはな」


顔を上げる。

瞳の奥が、稲光で燃えている。


ハルト「今、めちゃくちゃ楽しい!!」


地面が砕け、ハルトの姿が消える。

カイの瞳が揺れる。


カイ『速い!いや、さっきとは別次元だ!!』


雷そのものの軌道で移動。

直線ではない、跳躍でもない。

“落雷の発生地点”のように瞬間出現する速度。

カイは反射で殴る。

だが、その拳は空を切る。


ハルト「遅い」


背後から声。

肘打ちによりカイは吹き飛ぶ。

空中で体勢を戻す。


カイ『どうなってやがる!あいつ、まだ力を隠していたのか!?』


クリオによって潜在制御を解除された者は、強制的に潜在能力が上がる。

さらに、潜在能力の上限が上がった者は自己的に制御を解除可能。

そして今、ハルトは再び120%の力を手にする。



ユリカの視界がぶれる。

頭の奥がざわつき、思考の糸が絡まる感覚。


ユリカ『侵入には成功しているはず……!でも』


さっきから何度も試している。

恐怖を流し込む。

判断力を鈍らせる。

記憶の断片を揺さぶる。

だがエルマは少し鈍るだけ。


エルマ「時間擦過(タイムスクラッチ)


空気が重くなる。

エルマの一歩が滑るように近づく。

ユリカは横に跳び避ける。

だが、またしても遅れて腹部に痛み。

服が裂け、傷ができる。


ユリカ『……なんだか、未来から攻撃されてるみたい!』


ユリカは何かに気づく。


ユリカ『いや、違う。“反応がワンテンポ遅れて現実に反映される”!』


能力の空振り、遅れるダメージ。

ユリカはやっと、答えが出る。


ユリカ「あなたの能力、時間系でしょ!そうじゃないと、今までの出来事に辻褄が合わない!」


エルマは微笑み、淡々と言う。


エルマ「やっと気づいたわね。私の能力は“今を遅らせる”のよ。動き、視覚、その傷も」


エルマは少しずつ近づく。


エルマ「でも、仕組みを知ったからって今のあなたじゃ、私には勝てないわ。なんでって、私に指一本も触れられないから」


ユリカの呼吸が速くなる。

そして、ユリカは決心する。


ユリカ「……じゃあ、指一本も触れずにあなたを倒してあげる」


ユリカは思考を切り替え、新たな方法を試す。


試行①:強い感情の爆発


怒りと恐怖を一気に流し込み、精神バランスを崩す。

エルマの眉が一瞬動く。

だがメスは正確に振られる。

肩に浅い傷。


ユリカ『効いてる。けどダメ……』


失敗。


試行②:幻覚干渉


視覚情報を書き換える。

床の位置をずらし、距離感を狂わせる。

エルマの足が一瞬空を踏む。

だが転ばない。


エルマ「残念、それも無駄よ」


また失敗。

ユリカは後退しながら気づく。


ユリカ『この人、能力を喰らった瞬間、“結果が起こる前の自分”まで時間を遅らせて無効化してる』


エルマは時間差を盾にして戦っていたのだ。

ユリカは目を閉じる。

深く息を吸う。

狙うのは恐怖でも混乱でもない。

“選択”そのもの。


試行③:選択妨害


相手の思考に入り、“どの行動を選ぶかの枝”を増やす。

右に動く。

左に動く。

刺す。

引く。

行動の可能性を大量に発生させる。

エルマの動きが僅かに止まる。


エルマ「……なにこれ」


声が初めて漏れる。

エルマの額に汗が流れる。


ユリカ『攻撃を喰らってから対応するなら、喰らった瞬間からアウトにすればいい!』


エルマの能力:短時間遅延(クロノ・スロウ)は、時間を遅らせる。

その対象は自分だけでなく相手の行動や思考まで。

今までエルマは、ユリカの視覚と動きを遅らせることで、避けていた攻撃も当たるように仕込んでした。

さらに、自身が攻撃を喰らった瞬間、自分を攻撃が喰らう前まで時間を遅らせることで、ユリカを対策していた。

ユリカの能力は、“線ではなく点”であったのだ。


エルマ「対策が分かったからって、私自身にダメージが無ければ意味が無い。少し遊びすぎちゃったけど、次は心臓(ここ)を狙ってあげる」


エルマは自分の心臓を指さしながら言う。


エルマ「未来遅延圏(フューチャーラグ)!」


空間を横に裂くようにメスを振る。

その先にはユリカの心臓。

その攻撃は自分まで届くと、確信した。



ユリカ「……無理だよ、私」


ユリカは地面に座り、手を強く握っている。

目の前に立つレイは何も言わず、光る文字列を指でなぞる。


ユリカ「ものすごく強いんでしょ?それに、正直私の能力は戦闘向きじゃないし……」


声は小さいが、本音だった。


ケイル「……それ、僕が弱いって言ってるようなものだよね」


遠くでハルトと話していたケイルには聞こえていた。

未だにユリカに完敗したことを根に持ってるらしい。


ユリカ「あっ、聞こえちゃった?でもケイル君、強かったって!」


ケイル「今更そんな言葉で喜ばないよ……」


ケイルはさらにしょんぼりする。


ハルト「元気出せって。ほら、さっきの話の続きをしてくれよ」


隣にいるハルトが慰める。


ユリカ「……とにかく、私は人の思考に入るだけで、直接倒せる力なってないよ。ほら、クロウ君とかラウル君の方がいいんじゃないの?」


レイが口を開く。


レイ「ラウルは頭がダメ。相当難しい能力だから考える前にやられる。クロウは能力頼りで対策されたら終わり。どちらも負ける」


ラウル・クロウ「なんだとぉ!?」


2人は同時に振り向く。

やはり聞こえていたようだ。


ラウル「お前一回俺と勝負しろ!二度とその舐めた態度とれなくてしてやる!!」


クロウ「俺が先にやってやる!」


ラウル「お前は引っ込んでろ単純馬鹿!!」


クロウ「馬鹿はおめぇだろ馬鹿!」


ラウル「なんだとぉ!!」


2人は軽い取っ組み合いになった。


ゼイン「おいおい、もう今日で三回目だぞ」


ブラン「全く、懲りねぇなぁ」


2人を横目にレイは続ける、


レイ「恐らくエルマの能力は火や水のような単純なものじゃない」


レイが初めて正面を向く。


レイ「どんな能力でも、ユリカなら必ず対応できるはず」


ユリカ「私……が?」


レイは小さく笑う。


レイ「可能性が一番高いのはユリカ。これは期待なんかじゃない。結果がそう言ってる」


ログを閉じ、まっすぐユリカを見る。


ユリカ「でも、怖いよ」


ユリカの喉が詰まる。

正直な声。


ユリカ「私なんかが、勝てる保証なんて……」


レイは即答する。


レイ「保証なんて最初からない。でも、」


ユリカの手を握る。


レイ「ユリカだけが、“届くかもしれない”場所にいる」


静かな目。


レイ「だから、任せたい」



ユリカはゆっくりと目を開く。


ユリカ「……私は、選ばれたんじゃない」


震える手を握り直す。


ユリカ「“届く可能性がある”って言われたんだ」


前を見る。

そして、力を振り絞る。


ユリカ「だったら、届かせる!!」


To be continued…

第15話 最強になりたい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ