第12話 対立
ハルト「2人を説得するって、どういうことだ」
トアは続ける。
トア「私たちは元々、4人の同盟を組んでいた。そして、4人でこの世界から脱出する方法を見つけた。」
クロウ「どうやってだ」
クロウはなぜ見つけたのか問う。
トア「私の能力:構造解析は機械そのものの中身、すなわちプログラムを解錠・侵入することができる。そして、この世界を調べたところ偶然見つけたってわけ」
ハルト「そんなメタ能力、AIが許したのは不思議だな」
トア「話を戻すと、私たちは最初4人で脱出する予定だった。けど、あなたたちの存在に気づき人間であるプレイヤー、20人を脱出させようと2人に提案したんだ」
ラウル「その2人ってのは誰なんだよ」
ラウルは謎の2人が気になっていた。
トア「カイとエルマ、私たちの最大戦力だ」
ラウル「ってことは、強ぇのか?」
リン「強い。あの2人は別格。詳しく能力は分からないけど、少なくとも私たちでは太刀打ちできない」
ハルトは不安、ラウルは興奮、クロウは面倒、それぞれの感情を抱いていた。
リン「2人は提案を拒否した。自分の強さ故に自分だけ生き残ればいい、そう考えてる」
トア「もちろん私は納得しなかった。他にも人間がいるのに、それを見殺しにするのかって。私は許せなかった」
トアは下を向き、静かに言う。
リン「けど、カイはこう答えた。“どうでもいい。弱者に構いたくない”」
ラウル「俺が弱者だと!?」
ラウルが疲れを忘れて飛び上がる。
クロウは腕を掴み止める。
クロウ「落ち着け。だが、俺も少しムカつくな」
今まで自分が最強だと思っていた2人は納得がいかなかった。
リン「だから、君たちに頼みがあるの」
リンは全員を見渡す。
リン「カイとエルマ、2人と勝負して説得させてほしい」
一瞬静まったが、誰かが口を開いた。
ハルト「そいつらに勝てば、俺たちは現実世界に戻れる権利を得るってことだな」
ハルトの目は覚悟に変わっていた。
その目は真っ直ぐ、リンとトアに向かった。
ハルト「分かった。勝てばいいんだな。任せてくれ」
リンとトアは笑った。
今まで見せなかった、笑顔。
トア「ありがとう!それじゃあ早速、戦う人なんだけど……」
ラウル「やっぱ俺だろ!俺がやる!」
トアが言い終わるより先にラウルが答える。
クロウ「お前はダメだ。俺の方がいい」
ラウル「なんだとぉ!?」
いつも通り口喧嘩が始まった。
もう慣れた景色で誰も反応しない。
トア「戦ってるところは見たことあるから、少しでも有利に戦えるように話し合おう」
ハルト「そうだな。そっちの方が勝率は上がる。」
リン「それと……」
リンは少し申し訳なさそうに答える。
リン「できれば1VS1の状態にしたいから、戦えるのは2人だけなんだ」
ハルト「じゃああと俺ともう1人決めないとな」
ラウル・クロウ「なんでお前決まってんだよ!」
近くで見てたアイラは笑った。
いつの間にか戦場の面影は消えた。
その頃……
瓦礫の山の上。
崩れた高架の影で、風が低く鳴いていた。
その中央に立つ2人。
カイは片膝を立て、肘を乗せている。
その顔は無表情で、視線だけが鋭い。
エルマは崩れた標識にもたれ、退屈をした顔。
指先で砂を弄んでいる。
エルマ「……結局、どうするのかしら。トアたちは」
エルマは視線を上げない。
カイ「知らん。あいつらの考えることは理解できん」
カイは足を組み直しながら答える。
エルマ「余計なことしなきゃいいけど」
嵐はまだ来ていない。
だが、雲はすでに真上にある。
フィオが展開した草原にセラの結界。
その中にハルトたちは丸く囲んでいた。
トア「とりあえず能力の確認は済んだ。あとは誰がどっちを担当するかだけど……」
レイ「ちなみにカイとエルマの能力ってどんな感じだった?」
リンとトアは目を合わせた。
その顔は少し悩んでいた。
リン「私たちもよく分からなかったけど、カイは速かった」
トア「そう。とにかく速かった」
ハルト「なるほど、俺と似たスピード系か。速いって言っても、どんな感じで速かった?」
またもや2人は悩む。
トア「なんか、こう、ビューンって感じ。ビュビューンって」
ソラ「うん、分からん」
あまりにも端的で伝わらない。
レイ「まぁとにかく速いってことは分かった。エルマは?」
またリンとトアは見合ったが、すぐに言葉は出なかった。
リン「分からない。目の前で戦ってたけど何をしてるのかさっぱりだった」
トア「短剣みたいな武器を持ってただ切るだけなのに、どうやってるのかは言葉で表せない」
ミナ「一番厄介ってことね」
その謎の能力に皆恐怖を抱いている。
ラウル「真面目に考えて、俺とハルトとクロウがいいだろ。他のやつも戦力にはなるが、リスクが高い」
クロウ「問題は、俺たちでも勝てる相手かって話。相性ってのもあるし下手すると殺されるんじゃねぇか」
ラウル「おいあんまビビらすなよ」
クロウ「なんだ、怖ぇのか?」
ラウル「あぁ!?怖くねぇよ!そんなやつ、この俺がワンパンしてやる!」
ハルト『ビビってたじゃねぇか』
そんな中、レイがログを見ながら言う。
レイ「カイとエルマの相手、私が決めていい?」
応答を待たずに続ける。
レイ「この戦いは不確定要素が多い。だから今はここにいるプレイヤーの中から勝てるビジョンを探す。それしかできないけど、やらないよりはマシ」
皆はレイを見て頷いた。
ハルト「あぁ、頼む」
ミナ「レイちゃんは頼りになるから安心よね!」
ソラ「頼りにしてるぜ!レイちゃん!」
レイ「ソラ、お前は“ちゃん”を付けるな」
ソラ「えぇー、じゃあレイ様!」
レイ「もっとダメだ。普通に呼び捨てでいい」
ソラ「なんか呼び捨てだとなぁ。年上だったら嫌だしー。てか何歳?」
ハルト「お前はデリカシーってのがないのかよ」
トア「……17歳」
その瞬間、賑やかだった空間が静寂に包まれた。
レイ「……え、なんでわかるの!?」
ソラ「奇遇!俺も17歳!」
興奮してソラは立ち上がる。
ハルト「……俺もだ。17歳」
ミナ「私も!え、同い年だったの!?」
また賑わいが戻ったところで。
トア「この世界にいる人間全員、17歳だよ」
一気に静まる。
まさかの出来事に言葉が出ない。
ハルト「……え?どういうことだ?全員17歳って?」
トア「このまま話すと長くなるから、この話は勝ってからのお楽しみね」
ソラ「えー、めっちゃ気になるのに」
クロウ「まぁとにかく、勝てばいいんだろ。改めてレイ……でいいんだよな。頼むぞ」
レイ「うん、ありがと」
空は暗くなり、夜になった。
草原の中、丸い結界だけが光っていた。
夜が明けてすぐ、カイとエルマがいる瓦礫の山に一つの影。
エルマ「やっと帰ってきたわね、リン。トアはどうしたの?」
カイ「結局収穫はなしか?ほら、早く4人で脱出するぞ」
リン「収穫はあった。だから来たのよ」
リンは真っ直ぐ2人を見る。
リン「あなたたちに勝負を挑む」
カイ「何?勝負だと?」
カイの口角が僅かに上がる。
エルマもそれに反応した。
リン「私たち側から2人推薦した。そっちも2人戦ってもらう」
リンは条件を告げる。
リン「その二戦、どちらも私たちが勝ったら――全員で現実世界に戻る。逆にどちらかでも負けたら、君たちの言う通り4人で現実世界に戻ればいい」
沈黙。
空気が重くなる。
カイはリンを見る。
カイ「……面白い。いいだろう、勝負してやる。ただし、」
カイは少し笑う。
カイ「こっちは殺す気でいく」
エルマ「覚悟はできてるでしょうね。私も本気でいくわよ」
リンは振り向きながら言う。
リン「もちろんだよね」
???「あぁ」
一つ、人影が動く。
現れたのは――雷波動:ハルト
そして、また後ろからもう一人近づいてくる。
思考侵入:ユリカ
To be continued…
第13話 理想と現実




