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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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12/22

第12話 対立

ハルト「2人を説得するって、どういうことだ」


トアは続ける。


トア「私たちは元々、4人の同盟を組んでいた。そして、4人でこの世界から脱出する方法を見つけた。」


クロウ「どうやってだ」


クロウはなぜ見つけたのか問う。


トア「私の能力:構造解析(ストラクチャ・ハック)は機械そのものの中身、すなわちプログラムを解錠・侵入することができる。そして、この世界を調べたところ偶然見つけたってわけ」


ハルト「そんなメタ能力、AIが許したのは不思議だな」


トア「話を戻すと、私たちは最初4人で脱出する予定だった。けど、あなたたちの存在に気づき人間であるプレイヤー、20人を脱出させようと2人に提案したんだ」


ラウル「その2人ってのは誰なんだよ」


ラウルは謎の2人が気になっていた。


トア「カイとエルマ、私たちの最大戦力だ」


ラウル「ってことは、強ぇのか?」


リン「強い。あの2人は別格。詳しく能力は分からないけど、少なくとも私たちでは太刀打ちできない」


ハルトは不安、ラウルは興奮、クロウは面倒、それぞれの感情を抱いていた。


リン「2人は提案を拒否した。自分の強さ故に自分だけ生き残ればいい、そう考えてる」


トア「もちろん私は納得しなかった。他にも人間がいるのに、それを見殺しにするのかって。私は許せなかった」


トアは下を向き、静かに言う。


リン「けど、カイはこう答えた。“どうでもいい。弱者に構いたくない”」


ラウル「俺が弱者だと!?」


ラウルが疲れを忘れて飛び上がる。

クロウは腕を掴み止める。


クロウ「落ち着け。だが、俺も少しムカつくな」


今まで自分が最強だと思っていた2人は納得がいかなかった。


リン「だから、君たちに頼みがあるの」


リンは全員を見渡す。


リン「カイとエルマ、2人と勝負して説得させてほしい」


一瞬静まったが、誰かが口を開いた。


ハルト「そいつらに勝てば、俺たちは現実世界に戻れる権利を得るってことだな」


ハルトの目は覚悟に変わっていた。

その目は真っ直ぐ、リンとトアに向かった。


ハルト「分かった。勝てばいいんだな。任せてくれ」


リンとトアは笑った。

今まで見せなかった、笑顔。


トア「ありがとう!それじゃあ早速、戦う人なんだけど……」


ラウル「やっぱ俺だろ!俺がやる!」


トアが言い終わるより先にラウルが答える。


クロウ「お前はダメだ。俺の方がいい」


ラウル「なんだとぉ!?」


いつも通り口喧嘩が始まった。

もう慣れた景色で誰も反応しない。


トア「戦ってるところは見たことあるから、少しでも有利に戦えるように話し合おう」


ハルト「そうだな。そっちの方が勝率は上がる。」


リン「それと……」


リンは少し申し訳なさそうに答える。


リン「できれば1VS1(ワンブイワン)の状態にしたいから、戦えるのは2人だけなんだ」


ハルト「じゃああと俺ともう1人決めないとな」


ラウル・クロウ「なんでお前決まってんだよ!」


近くで見てたアイラは笑った。

いつの間にか戦場の面影は消えた。



その頃……

瓦礫の山の上。

崩れた高架の影で、風が低く鳴いていた。

その中央に立つ2人。

カイは片膝を立て、肘を乗せている。

その顔は無表情で、視線だけが鋭い。

エルマは崩れた標識にもたれ、退屈をした顔。

指先で砂を弄んでいる。


エルマ「……結局、どうするのかしら。トアたちは」


エルマは視線を上げない。


カイ「知らん。あいつらの考えることは理解できん」


カイは足を組み直しながら答える。


エルマ「余計なことしなきゃいいけど」


嵐はまだ来ていない。

だが、雲はすでに真上にある。



フィオが展開した草原にセラの結界。

その中にハルトたちは丸く囲んでいた。


トア「とりあえず能力の確認は済んだ。あとは誰がどっちを担当するかだけど……」


レイ「ちなみにカイとエルマの能力ってどんな感じだった?」


リンとトアは目を合わせた。

その顔は少し悩んでいた。


リン「私たちもよく分からなかったけど、カイは速かった」


トア「そう。とにかく速かった」


ハルト「なるほど、俺と似たスピード系か。速いって言っても、どんな感じで速かった?」


またもや2人は悩む。


トア「なんか、こう、ビューンって感じ。ビュビューンって」


ソラ「うん、分からん」


あまりにも端的で伝わらない。


レイ「まぁとにかく速いってことは分かった。エルマは?」


またリンとトアは見合ったが、すぐに言葉は出なかった。


リン「分からない。目の前で戦ってたけど何をしてるのかさっぱりだった」


トア「短剣みたいな武器を持ってただ切るだけなのに、どうやってるのかは言葉で表せない」


ミナ「一番厄介ってことね」


その謎の能力に皆恐怖を抱いている。


ラウル「真面目に考えて、俺とハルトとクロウ(こいつら)がいいだろ。他のやつも戦力にはなるが、リスクが高い」


クロウ「問題は、俺たちでも勝てる相手かって話。相性ってのもあるし下手すると殺されるんじゃねぇか」


ラウル「おいあんまビビらすなよ」


クロウ「なんだ、怖ぇのか?」


ラウル「あぁ!?怖くねぇよ!そんなやつ、この俺がワンパンしてやる!」


ハルト『ビビってたじゃねぇか』


そんな中、レイがログを見ながら言う。


レイ「カイとエルマの相手、私が決めていい?」


応答を待たずに続ける。


レイ「この戦いは不確定要素が多い。だから今はここにいるプレイヤーの中から勝てるビジョンを探す。それしかできないけど、やらないよりはマシ」


皆はレイを見て頷いた。


ハルト「あぁ、頼む」


ミナ「レイちゃんは頼りになるから安心よね!」


ソラ「頼りにしてるぜ!レイちゃん!」


レイ「ソラ、お前は“ちゃん”を付けるな」


ソラ「えぇー、じゃあレイ様!」


レイ「もっとダメだ。普通に呼び捨てでいい」


ソラ「なんか呼び捨てだとなぁ。年上だったら嫌だしー。てか何歳?」


ハルト「お前はデリカシーってのがないのかよ」


トア「……17歳」


その瞬間、賑やかだった空間が静寂に包まれた。


レイ「……え、なんでわかるの!?」


ソラ「奇遇!俺も17歳!」


興奮してソラは立ち上がる。


ハルト「……俺もだ。17歳」


ミナ「私も!え、同い年だったの!?」


また賑わいが戻ったところで。


トア「この世界にいる人間全員、17歳だよ」


一気に静まる。

まさかの出来事に言葉が出ない。


ハルト「……え?どういうことだ?全員17歳って?」


トア「このまま話すと長くなるから、この話は勝ってからのお楽しみね」


ソラ「えー、めっちゃ気になるのに」


クロウ「まぁとにかく、勝てばいいんだろ。改めてレイ……でいいんだよな。頼むぞ」


レイ「うん、ありがと」


空は暗くなり、夜になった。

草原の中、丸い結界だけが光っていた。



夜が明けてすぐ、カイとエルマがいる瓦礫の山に一つの影。


エルマ「やっと帰ってきたわね、リン。トアはどうしたの?」


カイ「結局収穫はなしか?ほら、早く4人で脱出するぞ」


リン「収穫はあった。だから来たのよ」


リンは真っ直ぐ2人を見る。


リン「あなたたちに勝負を挑む」


カイ「何?勝負だと?」


カイの口角が僅かに上がる。

エルマもそれに反応した。


リン「私たち側から2人推薦した。そっちも2人戦ってもらう」


リンは条件を告げる。


リン「その二戦、どちらも私たちが勝ったら――全員で現実世界に戻る。逆にどちらかでも負けたら、君たちの言う通り4人で現実世界に戻ればいい」


沈黙。

空気が重くなる。

カイはリンを見る。


カイ「……面白い。いいだろう、勝負してやる。ただし、」


カイは少し笑う。


カイ「こっちは殺す気でいく」


エルマ「覚悟はできてるでしょうね。私も本気でいくわよ」


リンは振り向きながら言う。


リン「もちろんだよね」


???「あぁ」


一つ、人影が動く。

現れたのは――雷波動(テンペスター):ハルト

そして、また後ろからもう一人近づいてくる。

思考侵入(マインド・スリップ):ユリカ

To be continued…

第13話 理想と現実

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