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World cuisine おいしい世界  作者: SAI
第一章
41/226

41.国王からの食材

ツクツクツッツッツッ

「クォーッ!!!」


私はいつものように目を開けると同時に頭を避けた。


「おはようございます、ライファ様。」


「おはよう、テン。昨日は出てこなかったね。どうしたの?」


「何やらあやしい者がおりました故、隠れておりました。」


「レイのことかな?レイなら大丈夫だよ。紹介するから、次は出ておいで。それから、こちらはベル。これから一緒に暮らすから、よろしく頼む。」


「ベル、こちらはテン。この家のことにはとても詳しいから、何かあったら聞くといいよ。」


私が二人を紹介すると、ベルはキュンっと鳴き頭を下げ、テンは丁寧にお辞儀をした。

うまくやっていけそうな雰囲気だ。

テンは私を起こすといつも出ていくのだが、今日は部屋を見回したりしてなかなか出ていかない。


「あ、そうだ!テンにお土産を買ってきたんだ。」


私がそう口にすると、テンは勢いよく私の方を振り向き、頭が大きいせいで反動でくるっと一回転した。

まるでダンスでも踊っているかのようだ。


「コロンに興味があるっていっていただろ?買ってきたよ。」


そう言ってバッグから取り出しテンに渡す。


「おぉ、これはこれは。」


テンは嬉しそうにしばらく見つめた後「ありがとうございます。」と深々と頭を下げて、スキップしながら消えていった。


「くすくす、あんなに喜んでくれるなんて買ってきてよかったな。」


「そうだ。返事しないと!」


私はリアン王子から貰った石を取り出すと魔力を通して石を開いた。


「アレン王子、ライファ・グリーンレイです。先日はありがとうございました。

師匠からターザニア行きの許可が取れました。一週間後にはターザニアに向かいたいと思っております。

研究所の件、よろしくお願い致します。

それと、ひとつお願いがあるのですが、私が魔女の弟子だということは秘密にしていただけないでしょうか。師匠からの条件でもあるのです。勝手なお願いで申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」


私が言葉を吹き込んで魔力を通すと、石は固く閉じた。その石を窓から投げると、石は猛スピードで飛んでゆく。


「これでよし、あとはターザニア行きの準備だ。でも、その前に、この荷物を開けてみよう。」


私は国王から頂いたお土産の箱を机の上に置いた。


これ、どういう仕組みになっているんだろう。

とりあえず、箱を開けようと箱の上に手をかけたとき、ぐぅんっと音がして魔方陣が起動した。


「其方の名は?」


箱が喋る。


「ライファ・グリーンレイです!!」


名前を言ったとたん、箱が弾けた。


「ヒィィィィーっ!!師匠―っ!!」


私の叫び声にテンが現れ、目を見開くとサッと消えた。

ベルは飛び跳ねた、ところまでは見ていたがその後何かに擬態したらしく姿を消した。

するとすぐに、部屋の外で音がした。


「リベルダ様、ライファ様は部屋を虫園か何かにするつもりですぞ!!」


テンが師匠を呼んできてくれたらしい。

虫園になんかしないよ、と心の中でつっこみつつ体に張り付いた虫を一匹引っ剥がした。


「どうした!?」


師匠はバンッと部屋のドアを開けた瞬間、うえっと声を出した。

魔木や魔花、果物もあるが大半が虫。

大小様々100匹はいるんじゃないかと思うほどの虫がウゴウゴと部屋の中を這いまわっていた。

私にも虫が張り付いて酷い有り様だ。虫は苦手ではないが流石にこれは勘弁してほしい。


「これはベルライトの仕業か・・・。40も半ばのはずだがガキのまんまだな。」


師匠は呆れてため息をつくと、魔法で虫は大きな虫かごに入れてひとまとめに、走り回る魔木や魔花は足元を固定して動かないようにした。

魔木や魔花は盛大なブーイングを師匠に送るが、師匠がひと睨みすると何事もなかったかのように静まった。ベルが安心したように姿を現す。


「あとはお前がなんとかしろ。処理できないやつはマリアのとこに放り込むから言え。」


師匠はそう言って部屋から出ていった。


ふぅ、助かった。

王宮で国王に食材を褒美として欲しいとお願いしたときの国王の笑みの意味が分かった気がした。




朝食後、部屋に戻ってきた私は早速本で調べ始めた。まずは魔木から。

他の本が近くにあると威嚇するため、一冊だけ離して保管してある魔木の本を手に取った。


「えーっと、この木はサザーの木というのか。魔力ランクは1。数年育てると夏に実がなるらしい。欠点は、人見知りのくせに慣れるとものすごく喋る。か。」


サザーを見ると枝を垂れてモジモジしている。


「なるほど。」


この木は庭に植えることに決めた。その他は、


・トトップルの実【魔力なし】ハートランド原産の甘酸っぱい果物→食べる

・ビョーン花【保温効果 3】根を食べることが出来る。辛い。→庭に植えて増やす。

・キラ花【ヒーリング効果1】お茶にするとよい→庭に植えて増やす。

・ココンの枝【魔力なし】コクのある出汁がでる→乾燥させて保管。

・どんどん虫【魔力なし】から揚げにするとうまい→食べる。先生にもあげる。

・ドガ虫の幼虫【ヒーリング効果2】煮込んでスープにすると美味しい。→先生へ持っていく。


どれもユーリスアではなかなか手に入れられない物ばかりのようだ。

さすがは国王様!私は一通り調べ終わると庭に植えるものは植え、ココンの枝は庭で天日干しした。

それからどんどん虫をキッチンへ運ぶ。


「なんか、抵抗あるな・・・。」


どんどん虫は黄緑色をしていて羽や足もある丸みのある形の虫だ。

煮物や炒め物では手足がチクチクして喉に引っかかりやすいから、から揚げが良いらしい。


「コオリーン!お願いがある。」


私が呼ぶとコオリーンが出てきた。


「このどんどん虫を少しだけ凍らせてくれる?動きが緩慢になるくらいまで頼む。」


コオリーンがどんどん虫に息を吹きかけて凍らせてくれている間に、私は僅かに残っていたブンの木の実を全部砕いた。

素揚げバージョンと、ブンの木の実をまぶしたバージョンを作るつもりだ。


「よしっ」


気合を入れつつも動きの鈍ったどんどん虫を見るとなんとなく決心が揺らぐ。平常心、平常心。美味しくいただきます。と心で呟き、ひと思いに揚げた。揚げたてを恐る恐る口にいれてみれば、あれ?


「意外とうまい・・・。これは酒のつまみに良さそうだ。」


テーブルに並ぶどんどん虫のから揚げ2種類。スープにサラダにパン。

目の前にした師匠の顔は引きつっている。


「ついにこれを食べる日が来たか・・・。」


師匠はどんどん虫を見て呟いた。


「私、さっき食べましたけど、香ばしくて美味しかったですよ。」


私はベル用にどんどん虫を取り分けた。ベルはなんの抵抗もなく、キュンキュンと喜んで食べている。


「師匠、私、午後から先生のところへ行きたいので、魔方陣を起動してもらえますか?どんどん虫のから揚げも持っていきたいし、ドガ虫についても聞きたくて。」


「いいぞ。用意ができたら呼べ。あぁ、マリアの所に行くならランク8の回復薬を60本程、作ってきてくれ。今日中じゃなくてもいいから、お前がいる間に頼む。」


覚悟を決めたらしい師匠はどんどん虫を口に放り込むと、お、意外といけるな、これ。と呟いた。




午後。空間移動魔方陣をくぐって先生を呼びながら歩くとジュリアが現れた。

私の肩に乗るベルを不思議そうに眺めつつもこっち、こっちと先生の調合部屋に連れて行ってくれる。

コンコンコンとノックをしてドアを開けると、先生は丁度、調合をしているところだった。


「ライファ、いらっしゃい。もう少しで終わるので待っていてくださいね。」


先生はこちらを振り向くこともなくそういうと、ポヨンと何かの液を足した。

ぱあぁぁっと部屋に青白い光が広がる。


「丁度良かった。ライファ、この薬の効果を教えて下さる?」


「えーと、この効果は【ダンス効果5】!?」


「やったわ!やりましたわっ!」


「ダンス効果ってなんですか?」


「ふふふふ、これは、この薬を飲むと踊りたくて仕方がなくなるという効果ですのよ。嫌でも踊り続けますからダイエット効果絶大ですわ!ただし、効果が5あるとなりますと5時間ほど踊り続けることになりますわね。」


「それはなんだか、体にいいのか悪いのか良くわからない薬ですね。」


私の言葉は先生の耳には入らないようで、先生は嬉しそうに笑っていた。


「先生、これは差し入れで、こっちが何か調合に役立つんじゃないかと持ってきたドガ虫の幼虫です。」


先生はありがとうと受け取ると、どんどん虫のから揚げを摘まみながら言った。


「ドガ虫はヒーリング効果がある幼虫ですね。あまり見かけることはありませんが、勿論、調合に役立つでしょう。あとで何の薬にするか考えてみましょ。」


「それと先生、師匠からのお願いでランク8の回復薬を60個作る様に言われたのですが、どうやって作ったらいいのですか?」


「なんですって!!リベルダはいつも簡単に言うから困りますわ!ランク8だなんてどれ程調合に魔力を消費することか!」


と言ってからこちらを向いて「あっ、そうか、ライファが調合すればいいのでしたわね。」と言った。私の存在を思い出したらしい。


「仕方ない。今日はやることがありますので、明日、もう一度おいでくださいな。」




その日の夜のこと。

少し早くに夕食を終わらせターザニアに行くまでにやることをノートにリストアップしていると、リトルマインが話し出した。


「ライファ、いる?」


突然聞こえたレイの声にビクッと驚く。


「レイ?」


私がレイの名前を呼ぶと、ちびレイはニコっと笑い、こんばんは。と挨拶した。


「どうしたの?」


「ん、昨日貰った焼肉のタレのお礼をと思って。家で大好評だったんだ。今、料理長が焼肉のタレのレシピを一生懸命解明しているよ。」


「なんだ、言ってくれればレシピ教えるのに。」


「いいんだ、料理長はあぁやって自分で探すのも好きだからさ。」


「そうなのか。」


「ライファは何してたの?」


「んー、ターザニアに行くまでにやることを整理しておこうと思って書き出してた。」


「あ、ごめん、誰か来たみたい。ちょっと待ってて。」


レイがガサガサと移動する音が聞こえる。

その後、レイが誰かを制止するような声が聞こえて、次に喋り出したのはヴァンスのようだった。


「あ、ライファちゃん?ターザニアに行くんだって?」


ちびレイの顔と声はそのまま、口調だけがヴァンスで変な感じがする。


「ヴァンス様?」


「あたり。レイとリトルマインでやり取りしているだなんてずるい。」


ちびレイが拗ねる。


「ちょっと、兄さん!」


レイの声が大きく聞こえて、ちびレイが今度は怒った様子を見せた。


「なんだか、リトルマインのレイが大忙しですよ(笑)。」


私が笑っていると、今度はズンの声が聞こえた。


「レイ様、レベッカ様とのデートのお時間ですぞ!!」


「ズン!デートとかそういうんじゃなくって・・・」


ごにょごによと何か話してるような声が聞こえて、「ライファ、ごめん、私出かけないと。」とちびレイが言った。


「うん、わかった。じゃあ。」


「待って。私はまだライファちゃんと話があるのだけれど。」


今度はヴァンスの声だ。


「わかった。わかった。ほら、お前は早く行け!デートに送れるぞ!」


そんな声の後、「おまたせ。」とちびレイが大人びた表情で言った。




次回は【ずるい大人とランク8の回復薬づくり】です。

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