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訪ねてきた画家 ①

今回短めです。

「よう!! 久しぶり。元気だったか?」


 シオンはその男を見た。


「貴方は……」


「すっかり都ボーイだな」


「一緒に都に来た。画家の……」


「シオン誰だ?」


「ああ。一緒に都に来た。有名な画家のレックス・スタウトンさんだよ」


「画家? ああ……絵描きの事か」


「レックスさんは、僕が前に住んでいたザラストロ地区の教会の絵の修復をしていたんだよ。所でここにいると言うことは教会の絵の修復は済んだの?」


「ああ。やっと済んだよ。一冬かかってしまって。やっと昨日都に帰って来たんだ。うう……やっと酒が飲める~~あの教会は禁酒だから辛かった~~‼ 今度から禁酒・禁煙の所は断るぞ~~‼」


「お疲れ様~~~」


 シオンとエドは生あたたく見守る。


「で……何でここに来たんだ? ボレス様に会いに来たのか?」


 エドは尋ねた。


「そう。絵が出来た祝いにボレスと一杯やろうと思ってね」


 画家は持ってきたワインを見せる。

 エドは木剣で肩をトントンと叩き、胡散臭い者を見るように画家を見る。

 さっきまでシオンとエドは、教会の庭で剣の練習をしていたのだ。

 ボレス神官は裏の畑を耕している。

 数人の年長組がボレス神官のお手伝いをして畑に居る。


「僕ボレス神官様に知らせてくる。エドは客室に案内してあげて」


 シオンは裏の畑に駆けていく。

 その姿を見て画家は眉をひそめた。

 髪は艶やかで肌もつやつやしている。

 前に会った時よりも健康状態は良いようだ。

 しかしここにいると言うことは……。


「違うから」


「えっ?」


「シオンは孤児院に住んでないから」


「良かった。叔父さんに引き取られたんだね。思ったよりいい叔父さんだったんだね。ちょっと心配していたんだよ。訳ありみたいだから引き取ってもらえないんじゃないかと……」


「違う。クソ爺は引き取らなかった」


「えっ? じゃ誰と暮らしているんだい?」


「メリッサ伯母さんと暮らしている」


「伯母さん?」


「シオンの母ちゃんのお姉さんだよ」


「……そうなのかい……でもシオンは幸せそうだね」


「ああ。本当にメリッサに引き取られて良かったよ。もしまかり間違ってクソ叔父に引き取られていたらと思うとゾッとするよ」


 吐き捨てるようにエドは言った。

 エドは両親が死んで叔父に引き取られ虐待され危うく死にかけたのだ。

 モリス神官がその事に気付き慌ててエドを引き取った。

 あのまま叔父の所に居れば虐待死していただろう。

 エドは教会の裏にある孤児院の客室に画家を案内し。

 そして画家にお茶を淹れる。

 この孤児院でエドが一番お茶を淹れるのが上手いのだ。


「美味い……意外だ」


「へへへ。この孤児院で俺が一番お茶を淹れるのが上手いんだぜ」


 エドはにししと笑う。

 とても虐待された子供とは思えない屈託のない笑顔だ。


「やあ。久しぶりだな。絵の修復は済んだんだ」


「なんとかな。苦労したよ」


 エドは頭を下げ出て行った。


「良い子たちだな」


「本当に素直に育ってくれて嬉しいよ。どの子も精霊様からの預かり者だ」


 精霊教会では子供は精霊様の預かり者なのだ。


「所でここに来たのは一杯やる為だけかい?」


「それもあるけどあの子のことが気になってね」


「シオンの事かい?」


「ああ……結局叔父は彼を引き取らなかったんだね」


「ああ。でもその方が良かった」


「伯母さんに引き取られたんだって。さっきの子に聞いたよ」


「彼女は優しい人だからね」


 彼女の事を思い出して優しく微笑む美貌の神官。

 本当に男でもゾクゾクする。

 こいつにもモデルになって貰いたい。

 画家は常に次の作品の事を考えている。


「うわぁ~女殺し(レディキラー)そんな顔を向けられたらその彼女もいちころだろ」


 レックスはため息をついた。


「白ユリの君はなかなか落ちてくれないんだ……」


 こん畜生‼ 憂いを含んだその眼差しお前本当に人間か? 精霊が化けているんじゃないのか?

 ゾクゾクとおり越してムカムカするぞ。

【精霊様は二物を与えず】と言うが、こいつ二物も三物も与えられているじゃん。


「白ユリね。あの子にモデルを頼みたいから。噂の伯母さんにお会いしないとね。紹介してくれる?」


「紹介するのは良いが。一言言っておく。彼女にホレるなよ」


 ごおほっっ‼

 思わずレックスは噴出した。

 ああ……紅茶が勿体無い。


「何を言ってるんだ……」


「いや……こないだ彼女の所に男爵がやって来てね。彼女に一目惚れしたみたいなんだ。これ以上ライバルは増やしたくない」


「嫉妬深い男は嫌われるぜ」


「教義にも嫉妬を戒めた物があるが。いざとなったらなかなかコントロールできないもんだな」


「おたく。そんな奴だったっけ? いつも飄々としたイメージしかないんだが……」


「まさかこの年で振り回されるなんて思ってもみなかった」


「恋ね~~精霊教会は正妻は認められているから良かったな」


 精霊教会は愛人や側室は認められない。ばれたら辺境の教会に飛ばされるのだ。

 下手をすると神官の位を剥奪されて追放される。

 流石に火炙りや絞首刑はないが。

 精霊教会はぬるい方だが。大陸の端にある【神の光】教会は厳しく。

 権力闘争の度に広場で火炙りが行われている。妻や愛人や側室を持つことも認められない。

 同性愛者も火炙りだ。陰で火炙り王国と揶揄されている。


 窓からロバ車が教会の門から入って来るのが見えた。


「丁度いい所にメリッサ殿が来られた」


「どれどれ……」


 レックスは窓からロバ車に載っている人物を見る。

 白い髪が風に揺れ赤い瞳が優しくシオンとエドに注がれた。

 メリッサは笑いながら二人の頭を撫でる。


「マドンナがいる……」


 レックスは熱に浮かされたようにそう呟いた。


「お……おい……」


 ボレス神官が止める間も無くレックスは部屋から消える。

 瞬間移動したのかと言うスピードでレックスは外に飛び出し、メリッサの手を握る。


「わたしレックス・スタウトンと言います。画家をしています。是非とも私の妻になって下さい!!」


「はあぁ?」


 メリッサは思わず変な声を出した。

 シオンとエドは画家の足をげしげしと蹴っている。


「この馬鹿チンが!!!!」


 追い付いてきたボレス神官は画家の脳天にチョップを打ち下ろす。


「へげぇええぇええ~~~!!」


 レックスは潰れたカエルの様な声を上げる。


「あだだだだだだだ……君たち少し酷くない?」


 頭を押さえて蹲るレックスは涙目を三人に向ける。


「「なに口説いてるんだよ!!」」


 シオンとエドは同時に叫ぶ。






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2018/9/6 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

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