1 クラスメイトの涙
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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「佐藤さん!」
水曜日の放課後。
駅前の雑踏の中を幼馴染の桜と歩いていると、後ろから声をかけられた。
「鈴木先生!」
振り返ると、副担任の鈴木先生だ。
「誰、コイツ?」
ふざけて肩を組んで歩いていた桜が、耳元で小さく話しかけてくる。
この状況は、マズいかも…。
「初めまして、佐藤さんの副担任の鈴木です。
ちょっと佐藤さんと二人で話してもいいかしら?」
先生が桜に向かって話しかける。
ダイジョーブ? と声に出さずに聞いてきた桜に、
「ごめん、ちょっと先生と話してくる」
と小声で返す。
先生に強めに腕をつかまれ、道の反対側に連れて行かれる。
「佐藤さん、あの子は知り合い? 何か困ってることがあったら、隠さずに話して」
あははは…やっぱり先生は何か誤解をしているみたいだ。
私、佐藤小春は、私立のいわゆるお嬢様学校と呼ばれる高校に通っている。
黒髪を一つに結んで、指定の制服を、ひざ丈のスカートの長さまできっきりと守っている、自分で言うのもなんだが、どちらかというと優等生に見える高校生だ。
かたや、幼馴染の田中桜は、学力は高いが自由な校風の公立校に通う、こちらも一般的な女子高生ではある。
ただ、金髪にミニスカート、つけまつげに付け爪、メイクもバッチリの、ちょっとやんちゃそう?に見えるのは否めない。
そして、そんな子に肩を組まれて歩いていると、どう見られるかも、なんとなく想像がつく。
「彼女は幼馴染で…」
と、なるべく不信感を与えないように、先生に説明を始める。
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「っぷはは、なに、センコーが私が小春をイジメか、カツアゲでもしてるかって?」
「笑い事じゃないよ! 昔の写真まで見せて、ようやく納得してもらえたんだから!」
「ウケるー」と笑う桜。まったくもう。
隣を歩く桜を見る。
確かに、私と桜の見た目や性格は全く違う。
でも、家も近所で親同士も仲がよく、昔からずっと一緒にいたからだろうか、不思議と桜と話すのはとても楽で、一緒にいると家族のような安心感がある。
何より、今は同じ趣味があるのだ。
「昨日の歌番組見た? ハヌルが超絶カッコよかったー!」
「見た見た! ダイチとのデュエットの部分もよかったよねー!」
そう、何を隠そう、二人とも、最近オーディション番組からデビューした九人組男性アイドルグループ、OCTAVEに大大大ハマり中なのだ。
ちなみに、私の推しは犬顔可愛い系イケメン日本人のダイチで、桜の推しは努力家正統派イケメン韓国人のハヌルだ。
韓国語でハヌルは空という意味らしく、空と大地で‘天地コンビ’としてのケミの話も大好物である。
昔から、毎週水曜日の放課後に遊んでいるのだが、最近はもっぱら推し活の話でもちきりだ。
「あ、確か、このコンビニでコラボ商品売ってるよね? ちょっと見ていこーよ」
桜に連れられ、見かけたコンビニに立ち寄る。
「ランダムかー、いくつ買う?」などと商品棚の前で相談していたところ、後ろを歩いてきた人にぶつかってしまった。
「あ、すみません…!」
「…すみません!」
ぶつかった相手は、クラスメイトの高橋さんだった。
「高橋さん?」
「佐藤さん…!」
ショートカットで小柄な高橋さんの、子犬のようなつぶらな瞳から、なんだか涙が溢れそうな…?
「あれ、高橋さん、何か落としてるよ?」
心配になりつつ、ぶつかったときに高橋さんが落としてしまったらしいカードを拾う。
「あれ、これって…」
「ありがとう、ごめんなさいっ…」
私の手からカードを奪い取り、コンビニを出ていってしまった。
「小春、今のって…」
横で見ていた桜が聞いてくる。
「うん、クレジットカードだったんだけど、名義が高橋さんのじゃなかったような…」
「追いかけるよ!」
「えっ!?」と言ってる間に、お店を出て高橋さんを追いかける桜の後を追う。
「ちょっと、アンタ!」
「高橋さん、待って!」
幸い、すぐに追いつき、声をかける。
振り向いた高橋さんは、両方の目から、大粒の涙を流していた。
「佐藤さん…私、どうしたら…」




