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第八話「爆弾投下」


 季節はだんだんと冬に近づき、部屋に飾られていた花も枯れてしまった。

 

 転生二日目にして異世界生活の基礎を築いた俺は、来る日も来る日もそれに則って生活していた。

 飯だって相変わらず美味いし、最近は父ケイオスーーー名前は最近知ったーーーに頼んで、書庫の本を読みまくっている。

 唯一の娯楽が読書になったのは気にしない。

 まあ兎に角、結構充実した生活を送っているという事だ。


 「おお寒い。まだ寝てようかな」


 前世の俺の部屋にはエアコンが備わっていたが、異世界にそれはない。魔法で作れば或いは・・・・・・・・・・・・ん? ああそうだ、魔法だよ魔法。あれ使えば一発で暖かくなれるじゃん。


 「火は駄目だろうから、温風で・・・・・・それ!」


 俺は早速手に魔力を込め、熱すぎないくらいの風が部屋の中を循環するイメージを思い浮かべ、約五秒ほどで部屋が暖かくなるのを肌で感じた。

 

 魔法は非常に便利であるが、温風を巡らせて暖房代わりに出来る者はほぼ居ない。

 いわばこれは、無詠唱が出来る者の特権なのだ。


 「うわぁ、あったか~い。よし、寝よ」

 

 部屋も程よく暖まり、本を読むか筋トレするか何か食うかの三つに選択肢が限られた俺は、四つ目の選択肢である、「別に何をするでもなく寝ちまう」を選んだ。

 

 だが、そうしてベッドに横たわっていると俺の心の中の俺が、これは違うんじゃないかと猛然と抗議し始める。


 違う! 俺が求めてるのはこんなのじゃないだろう? と言っている。


 「ーーーーーはぁ・・・・・・取り敢えず頼んだところでなぁ、良い返事は頂けないだろうし」


 このところずっと凍結状態だった話題だが、とても大切な話だ。

 俺の理想としては、ある程度の選別を頂いた上で、何とかこの先の生活の見通しをつけ、暖かい目で見守られながらとっとと王室から出ていくのが良いかなぁ、などと考えているがあくまでも理想は理想。

 よしんばここから出たとしても、選別すら貰えなかったりするかもしれない。

 或いは、絶対に許さんぞ! とか言われ、半ば軟禁のようにこの部屋に閉じ込められて、洗脳教育のようなものを受けさせられたり・・・・・・。

 

 そして、最悪の想定を少し時間を掛けて考えようとも思ったが、止めた。精神衛生上、あまり悪いことばかり考えると不味い。気が病む。


 「よし、こいつは賭けだ。俺が自由を手に入れるか、それとも失敗して一族のゴミ扱いになるか」


 父ケイオスの優しい顔からは想像もつかないが、烈火の如くキレたり、または冷徹な目で俺を睨んだりしそうだ。

 優しい人を怒らせると恐いものだ。 


 だからと言って、この問題をこのままにしておくのも嫌だ。

 どこかでけじめを付けなければならない。


 今度の食事の時にでも言おう。


 「うん、それはそうと・・・・・・眠い。寝よう」





 

  ◇◇◇





 「ーーーーーほら、イグル、起きて! イグル!」


 「いや、起こしつつ体に絡み付いてくるの止めませんか?」


 目を開けると、俺の体にアイリス姉貴がねっとりと絡み付いていた。その姿は、さながらタコのようだ。

 起き抜けに美少女と絡み合うことが出来て嬉しい気持ちと、やはり弟にこんなことをして良いのだろうかという気持ちとが、俺の心中を複雑に交錯する。


 「これが一度や二度じゃないんだよなぁ・・・・・・もう、何回言わせるんですか? 止めましょうよ、こういうの」


 俺は辟易とした表情で、愚痴るように姉貴を注意する。これは半分演技だが、もう半分は本気であり、姉貴にキチンとした将来を歩んで貰いたい故の苦言なのだ。


 だが、そのような俺の優しい気遣いを、十歳程度の姉貴に理解できる筈もなく、えー、いいじゃない。などと言っている。


 こいつが飲んでいる茶には、何かおかしな薬でも入っているのだろうか? 弟に恋愛感情なんて、普通なら抱かないだろう。

 いや、俺だって、そういうコンテンツの中の話であれば、大喜びして続きを見るだろう。が、それはそれこれはこれとはよく言ったものだ。

 リアルでやられると非常に困る!


 「はいー、そうですかー。ではさっさと食堂に向かいましょうねー」


 俺は最早姉貴に対して何か言うのすら面倒になり、強制的に離れさせ、自分だけさっさと食堂に向かった。


 


 「さて、頂こうか」

 

 王宮内で一番偉い人物や、その家族が一同に介するこの食堂は、正直言ってあまり好きではない。

 マナーやらエチケットやらに気を付けるばかりーーー多分俺だけーーーで、とても疲れる。

 

 食事とは、もう少し楽しいものであるべきだと俺は思うが、ここの人間にはそんな思想は無いのだろうか?

 ・・・・・・それでも、料理は一応美味いので、ギリギリ及第点と言ったところか。


 飯は黙って食う。

 ただただ飯と向き合う。

 他の人間なんて知らない。

 俺には飯しか見えない。


 無我夢中で、尚且つ美しく・・・・・・見えるように、出された料理を適当なペースで食っていくと、あら不思議。満腹で、更に飯がもう無い。

 怪奇現象かな? いやいや、俺の奮闘の賜物ですよ。


 飯を食い終わると、小さく一息。そして香りの良いハーブティーをちびちびと消費していく。


 「あの・・・・・・少しよろしいでしょうか、父上」


 皆が食事を摂り終え、リラックスしているところで、俺は爆撃を決意した。


 「む、どうしたイグル? 私に話か」


 「そうです。いや、それがですね・・・・・・私が十五くらいになりましたらですね・・・・・・えー、ここを出て、何処かへ行きたいと思うのですよ」



いやー、遂にやりましたね・・・・・・イグル君はどうなるんでしょうか!?

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