デスロード
俺は予想外にも程がある襲撃を受け、戸惑っていた。かの鬼神銃のメンバーが一斉に攻めて来たのだ。もちろん俺にとっては不意打ち。その上、相手にはたくさんの敵。苦戦を強いられる。
「うっぜ」
俺は心の底から思っていた事を言う。もちろん相手達には聞こえている。その為、相手の気が立つ。
「んだとぉ!?」
「一番キレたいのは、俺だっての!」
俺は必死になる。キレたいのは山々だ。しかしそれはそれでめんどくさくなる。面倒なのはあまりやりたくない。だから未だに剣は抜いていない。
全力で逃げていた。
「大体、なんで俺なんだよー!?」
俺の悲惨なる叫びは空に木霊した。それが何故か悲しくもあった。
マシンガンによる連射を集中して避ける。弾丸の速さ、ましてや偽物のなら、動体視力で追いつくことができる。その為避けるのも簡単、というわけでもない。
もちろん苦戦する。何よりもめんどくさい。
「どっかいけぇ!」
「それでどっか行く奴がいるかっ!」
何気に変なツッコミを入れてくるユニークな奴が襲ってくる。逆に戦いにくい。
「やめろぉ!」
「それでやめる奴が…」
「黙れぇい!」
俺は静止させる。さらにめんどくさくなりそうだからだ。
「面倒なのは嫌いなんだよ!」
まさに悲痛の叫びであった。
俺の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
俺は腕を大きく振って走る。逃げる。
前には、荒廃したビルがある。
「あそこで隠れよう」
俺はビルに飛び込んだ。そして暗い中、手探りで何処か隠れれる場を探す。
手に何かが当たる。手に取っても軽いものであった。俺は手に取り、それをジッと見る。暗くて何かはわからない。しかし何と無くはわかる。
これは頭骨だ。しかも人間の。
俺はそういうのには態勢がある。というわけでもない。生で見るのはおそらくこれが初だ。
「うっ」と思わず声を漏らしてしまう。
「ここ、なんのビルだよ!てか、ここ何処だよ!」
俺は大声をあげる。
「おい、あっちだ」
決して遠くは無い位置から声が聞こえる。
「やヴァイ」
俺は回れ右をして、もう一度走った。
☆★☆★☆★☆★
ここはクリアネル国、イティディアという都市にある街だ。しかしゴーストタウンと化してしまっている。
その昔、ここで金が取れ、人が大勢集まった。色々な民族、色々な人が集まる。するとやはり金を巡り戦いが生じる。この戦いは[金の6年戦争]として後世にも語られている。確か、この戦いが起きたのが今から、40年くらい前の事であった。
金の6年戦争とは、金を巡り民族間で6年間行われたからだ。戦いに出た民族数は100近くあったという。犠牲者は35万人でたそうだ。
そんな街に俺は居る。
何故か?
修学旅行だ。
いくらなんでもデスロードは言い過ぎなのじゃないか?いや、そんな事はない。
毎年、死にかける者が現れるそうだ。直接、命こそは落とさなくても再起不能になる者もいるらしい。
だから生徒達の間ではデスロードと呼ばれている。
そして全く嬉しくない自由行動の時間。俺は変なのに追われていたのだ。
☆★☆★☆★
「つかここ、マジでどこだ?」
俺は全力で逃げていた為、道がわからなくなってしまった。
「これが巷に言う、迷子とやらであろうか?」
俺は呼びかける。誰もいない事を知って居るのに。
「修学旅行、恐ろしい。」
俺はブルっと身震いをした。
「奴はどこだ!?」
やけに低い声が聞こえる。
「ここまで追って来ますかー…」
俺は小さく呟いた。
俺はこの時初めてデスロードにて剣を取った。
俺は剣を前方に伸ばす。
「これ以上はさらにめんどくさくなりそうだ…」
☆★☆★☆★☆★
「ダルい!」
相手も相当な手練れ。その上数もある。
俺はこれまでにない大苦戦をしていた。
「チッ」
俺は後方にいる敵に剣を当てようと、回った。その時、軸足のほうに衝撃が奔る。
「うっ!」
「どや?足払いされた気持ちは?」
俺は無理に笑みを作る。
「とても最低だね」
<覇!!>
足払い小僧はここでリタイアとなった。
「ちょっと、あんた」
「お、瑠奈じゃねぇか!」
瑠奈はガクッと肩を落とす。
「あんたがどっか行くから、探す事になったじゃないの!
でもピンチなようね…」
「ピンチじゃないやぃ!」
俺は強がる。瑠奈はそんな俺をキッと睨み、続けた。
「あんた、何したらこんな恨み買われるの?」
瑠奈が首を傾げる。
「I don't know.」
俺も首を傾げた。顔はニヤニヤしながら…
「何と無くわかった…」
瑠奈の顔に苦い汁でも飲んだんじゃないか、と思う程の縦皺ができた。
「そりゃあ、良かった」
俺はヘラっと笑う。
「死ね」
「何故に!?」
俺は数歩、後ずさる。
「なんとなく」
「理不尽っ!?」
「この世は理不尽が溢れてるのよ」
俺は勝てない事を悟り、頭を下げた。
「なんかすんまそん」
瑠奈はふぅっと息を吐いた。
「俺らをほっとくな!」
鬼神銃のメンバーがキレる。
「「うっさい、黙れ!」」
俺と瑠奈は見事にシンクロした。
「とりあえず、ザコは任せなさい」
「二人なら、すぐだな」
「え?私、1人でやりたいのだけど」
俺は目をパチクリさせた後、「頑張れよ」と伝えておいた。
「まあ、本当は四郎と雄大が来るからね。
あんたは黒幕とやってきなさい」
「なんかありがとう」
「恩で返してね」
俺はその場を必死で離れた。