決着のその後
ひめ君が目を覚ますと玉座の後ろでした。夜の静けさが城を包んでいます。星の光の中で、扉の開く音がしました。
「ひめ君、御父上をお連れしました」
豪奢な服の胸元を真っ赤に染めて、ひめ君と同じ姿になった王様は眠っていました。ひめ君は小さくしゃくりあげると、父親の頬にキスをします。途端に王様は、茎を折られた金の薔薇に変わりました。
「ああ、間に合った」
若者は満足そうに笑います。
鏡を潜った時を思い出して、ひめ君はもう一度若者の手に触れました。
しかし、何も起こりません。
十二番目の精霊は、悲しそうな目でひめ君を見ます。
「ひめ君、準備をしなくてはなりません。例の者たちは、ひょっとすると戻ってくるかもしれませんから」
ひめ君は賢かったため、時間がないことを理解しました。
奪われた宝物や、持ち去られた武器に吐息をもらしつつ、壊された花を整えます。
精霊は行く先々の通路にまじないをかけて、表門も裏門も隠し通路でさえ固く閉ざしました。
まじないの上にまじないを重ねて、決して入ることができないように用心しました。
城のあちこちには、新しいものから古いものまで、精霊やまじない師が残した結界がありました。
「しめたぞ」
精霊は、これらも城を守るために使いました。
「壊された薔薇は、広間に出来るだけ運びましょう」
生活の道具や城からあふれた薔薇、治さなければならない薔薇は全て、大広間に集められました。ひめ君と精霊はすっかり準備を終えると、はじまりと同じように広間で向き合いました。
ひめ君は白金のドレスに身を包み、真珠の冠をかぶっています。さながら、ご婚礼の衣装のようでした。
「話していただけますね」
厳かな声に、精霊は首を垂れました。
城の周りにはチリチリと、疾風も大地も水も灯も夜も飲み込んだ災いが迫っています。
災いの通った後には、灰ばかりが宝石のみがカラコロと散らばっておりました。




