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23/23

【第23話:お仕置きの後は、世界を丸ごとハッピーエンドにお片付けいたします。】


ドレスの怪物さんを綺麗にお掃除した日の夜。

私は、レイヴンの私室(寝室)にある、天蓋付きの大きなベッドの上にいた。


「レイヴン様? お掃除の後片付けなら、もう終わりましたわよ?」


首を傾げる私を、レイヴン様は無言のままベッドへ押し倒すようにして、上から覆いかぶさってきた。

銀髪がはらりと私の頬に落ちる。

紫の瞳は、まるで獲物を捕らえた肉食獣のように、妖しく、そして深く、私だけを見つめていた。


相変わらず、氷の彫刻のように冷徹な鉄仮面。

だけど、至近距離にある彼の頭上の好感度メーターは、もはや爆発の火花すら通り越して、真っ白な超新星爆発シンギュラリティを起こしている。


バチバチ、バチバチバチッ!!


(……うん。やっぱり今日のレイヴン様は、お洋服のオバケとの戦いで、神経が完全に興奮してしまっているのね。

だって、私の肩を掴む彼の手が、まるで嵐の日の木の葉のようにガタガタと激しく震えているもの。)


「レイヴン様、そんなに手が震えるほど興奮が抜けないのなら、私がまた、極上のマッサージ(お掃除)をして差し上げますわ」


私が純粋な親切心で彼の首に手を回そうとすると、


ガシッ。


「……っ」


レイヴン様が、私の両手首を一本の手で優しく、けれど絶対に逃がさない強さで、頭の上へと固定した。

完璧なポーカーフェイスのまま、彼の綺麗な耳どころか、首筋までがみるみるうちに真っ赤に染まっていく。


((((((マッサージだと……!? この状況で、そんな無防備な潤んだ瞳で、俺の首に手を回そうとするのかエルサ! あああ可愛い尊い愛おしい、もう我慢の限界だ! 勝手に危険な魔導具を作ってポイ捨てしたお仕置きが必要だな! 今夜は一歩もこのベッドから出さない、その薔薇色の肌も、可愛い泣き顔も、すべて俺だけのものだッ!!!))))))


脳内では凄まじい独占欲の嵐が吹き荒れているようだが、彼は一言も喋らない。


鉄仮面を真っ赤に染めたまま、私を閉じ込めるようにじわじわと顔を近づけ、私の鎖骨、そして首筋へと、深く、何度も、痕を残すように唇を這わせていく。

熱い。だけど、どこか心地よくて、私の頭は少しずつ、ふわふわと融けていく。


「ふあ……、っ、レイヴン様、これ、なんの、術式かしら……?」


「……((((((術式ではない、俺の愛だエルサ……っ! そんな可愛い声を出すな、本当に俺の理性が塵になる、今すぐそのすべてを貪り尽くしてしまいたい……っ!!!))))))」


レイヴンは完全に鉄仮面にヒビが入りそうなほど真っ赤になりながら、ついに、エルサの唇へとその熱い唇を重ねてきた。


何度も、角度を変えて、深く、深く、吸い上げるような濃厚な口づけ。

呼吸を忘れてしまうほどの激情に、私はただ、彼の胸にしがみつくことしかできなかった。


その時――。


バァァァン!!!


「……エルサ様、陛下。大変申し上げにくいのですが、隣の寝室から漏れ出ている『限界突破した糖度(結界干渉)』のせいで、私の執務室の空気が物理的に甘くなっております。脳がバグりそうです」


ドアを蹴破って入ってきたのは、緑色の『世界樹の根の凝縮塊』をバケツから直接、口に放り込んでいる宰相キースだった。

眼鏡の奥の瞳は完全に死んでいる。


「あらキース様、お疲れ様です。こんな夜更けにどうなさったの?」


私がベッドの上から声をかけると、キースはスンと鼻を鳴らして一枚の報告書を突きつけた。


「帝国に買収されて滅亡したプロスタニア王国の最終報告です。エルサ様を冤罪で婚約破棄した元王太子エドワードたちは、我が国のお茶汲み神様(タダ働き中)の下請けの雑用係(奴隷)として、毎日泥水をすすりながら炎天下で手漕ぎボートを漕ぐ生活へ完全転落いたしました。これにて、因果の彼方へのざまぁは完全完了です」


「まあ、皆さんお元気そうで何よりですわ」


「元気ではありません。それより、私の胃が限界です。明日、一ヶ月の有給が取れなかったら、私は本当にエルフの里へ亡命します」


キース様の限界っぷりを見て、私はハッと閃き、ポンと手を叩いた。


「キース様、いつもごめんなさいね。お詫びに、そのお仕事と胃袋を、まとめてお掃除(お片付け)して差し上げますわ!」


私が懐から取り出したのは、お茶汲み神様(動力源)のエネルギーをさらに横流しして作った、新しい一対の歯車だ。


起動オープン


私が魔力を通した瞬間、パァァァ……!と神聖な光がキースを包み込んだ。

神の権能による超高速の『全自動書類決済&胃袋完全修復術式』である。


シュルシュルシュルシュルッ!!


一瞬だった。

キースの抱えていた山のような書類が、全自動で一糸乱れぬ芸術的な手際で全て決済(お片付け)され、同時にキースのボロボロだった胃袋が、神の光でピカピカに完全修復されていく。


「……は、え? 胃が、痛くない……? 書類も、終わって……?」


きょとんとするキース様に、私は満面の笑みを向けた。


「完璧なお片付けです! これで胃薬も、残業も必要ありませんわ!」


「……エルサ様。神の権能を『社畜救済デバイス』に術式変換するのは世界の理に対する最大の冒涜ですが……。最高です。私はこれから、一ヶ月の有給をいただきます。探さないでください」


キースは、生まれて初めて見るような本物の輝かしい笑顔を浮かべ、光の速さで執務室から旅立っていった。


静かになった寝室。

邪魔者が消え、再び私を後ろからぎゅっと抱きしめてきたレイヴン様。

彼の頭上の好感度メーターは、もはや測定不能(無限大)の星々となって、宇宙の彼方へ突き抜けていた。


「レイヴン様、またお掃除マッサージの続きをしましょうか?」


首を傾げる私を見て、レイヴンは極上の鉄仮面を真っ赤に染め上げ、嬉しそうに私をお姫様抱っこした。


((((((あああエルサ、愛している、一生離さない、俺たちの愛は無限大だッ!!!))))))


相変わらず脳内は大爆発しているが、表向きは幸せそうに微笑むレイヴン。


これからも、私たちの素敵な帝国生活を、末永くハッピーエンドにお片付け(プロデュース)していきましょうね!



(完)

ここまでお読みいただきありがとうございます!


これで完結です。



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