(5)「現状報告」
昨日のと、他にも色々。
帰ると親に怒られ、友達にも心配された。
「何がどうだったのか教えろよ。」
「1人で神社行ったのか? ズルいな。」
「悪かったって。どこから説明したもんかな。」
俺は役場の手伝いの続きをしながら、昨日の出来事を話す。
勿論信じてもらえる気は無かったので大まかな話だけをする。
本殿のところに狼の銅像があったとか、500年前からあるとか。
雨降ったので仕方なく本殿で雨宿りしてたとか。
「あー、確かに土地神の話は資料にも書いてあるね。
500年前から居て、神社に祀られてるって。
銅像を作られたのは、少し後みたいだけど。」
「そうなんですか?」
「そうみたい。お祭りも、昔はあったみたいだね。
屋台も出て、花火も上げる夏祭り。
土地神様に豊穣と厄祓いを感謝するんだね。
でも、もう何も残ってないなぁ……。」
「残念です……、あ。またお祭りしたり出来ないんですか?」
「その話なんだけどさ。ちょっと厄介な話があってね……。」
役所の人に話を聞いてみたら、あの場所自体に問題があった。
実はあの山は持ち主が長いこと分からなくて、
つい先日『所有者放棄扱い』として国の所有になったばかり。
新しい区画整理事業として大々的に更地にした後、
あの辺りと駅を含めてビジネスビル街になる構想があるらしい。
「もう決定しちゃったんですか!?」
「いや、まだ確定というか何というか、かな。
土地の所有者が名乗り出たりしてくれれば、
正しい所有者と交渉したりするんだけど。」
「どうにかならないんですか?」
「今のところは……難しいね。」
このままだと、あいつもあの場所も無くなってしまう。
それでいいのか? あいつが約束してたのはもういいのか?
「せめて、夏祭りだけでもやろうぜ。
いっつも他のとこの祭りしか行ってないし。」
「そうそう、とりあえず夏祭りだけでも。」
「おねがいします!」
「……そうだね、この資料を見つけなかったら何もなかったんだし。
資料が出てきたこと自体が、奇跡みたいなもんだしね。
よし、夏祭りの提案と交渉は大人たちに任せて。」
「はい、よろしくおねがいします!」
これで何とか夏祭りはやってくれることになりそうだ。
後は……今後の話か。俺みたいな子供に出来ることはあるんだろうか。
帰って自分の部屋のベッドで考えてると、いつの間にか少し眠ってしまっていた。
親に言われて急いで風呂に入る。体を洗い終わって、湯船に浸かりながらまた考える。
「あいつ今何してんのかな……。」
「え?キミと一緒にお風呂入ってるよ。」
「うわぁっ!?」
「えっ、どうしたの。大丈夫!?」
急に大声を出したから、親に心配された。
何でもないと答えてから、目の前のそれを見る。
「神社の近くしか駄目じゃなかったのか?」
「えっと、神通力も少し回復したから、キミを探してた。」
「何で?」
「神社の話を聞きに来たの。早い方が良いと思って。何か聞けた?」
今日の出来事を伝えると、やはり悲しそうな顔をしてこっちを見た。
「無くなっちゃうのか、あそこ。」
「今のままだとそうらしい。」
「約束、守れなくなっちゃうのか……。」
「まだ分かんないだろ。」
俺は悲しそうな顔をしたままのそいつの頭を撫でた。
最初はビクッとしてたが、次第にそのまま目を細めた。
「久々、撫でられるの……。」
「撫でられるの好きなの?」
「うん、好き。」
「そっか。」
暫くそのまま撫でていたが、急にそいつが顔を上げてこっちを見た。
「どうした?」
「いや、成長途中にしては、ちょっと小さいかもなって。」
そう言いながら見ていた視線は俺の股間。
「さっさと出てけ! 変態!」
思いっきりお湯を掛けてやったが、うまいこと避けられてしまった。




