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夏の思い出  作者: 凡。
5/9

(5)「現状報告」

昨日のと、他にも色々。

帰ると親に怒られ、友達にも心配された。


「何がどうだったのか教えろよ。」

「1人で神社行ったのか? ズルいな。」

「悪かったって。どこから説明したもんかな。」


俺は役場の手伝いの続きをしながら、昨日の出来事を話す。

勿論信じてもらえる気は無かったので大まかな話だけをする。

本殿のところに狼の銅像があったとか、500年前からあるとか。

雨降ったので仕方なく本殿で雨宿りしてたとか。


「あー、確かに土地神の話は資料にも書いてあるね。

 500年前から居て、神社に祀られてるって。

 銅像を作られたのは、少し後みたいだけど。」

「そうなんですか?」

「そうみたい。お祭りも、昔はあったみたいだね。

 屋台も出て、花火も上げる夏祭り。

 土地神様に豊穣と厄祓いを感謝するんだね。

 でも、もう何も残ってないなぁ……。」

「残念です……、あ。またお祭りしたり出来ないんですか?」

「その話なんだけどさ。ちょっと厄介な話があってね……。」


役所の人に話を聞いてみたら、あの場所自体に問題があった。

実はあの山は持ち主が長いこと分からなくて、

つい先日『所有者放棄扱い』として国の所有になったばかり。

新しい区画整理事業として大々的に更地にした後、

あの辺りと駅を含めてビジネスビル街になる構想があるらしい。


「もう決定しちゃったんですか!?」

「いや、まだ確定というか何というか、かな。

 土地の所有者が名乗り出たりしてくれれば、

 正しい所有者と交渉したりするんだけど。」

「どうにかならないんですか?」

「今のところは……難しいね。」


このままだと、あいつもあの場所も無くなってしまう。

それでいいのか? あいつが約束してたのはもういいのか?


「せめて、夏祭りだけでもやろうぜ。

 いっつも他のとこの祭りしか行ってないし。」

「そうそう、とりあえず夏祭りだけでも。」

「おねがいします!」

「……そうだね、この資料を見つけなかったら何もなかったんだし。

 資料が出てきたこと自体が、奇跡みたいなもんだしね。

 よし、夏祭りの提案と交渉は大人たちに任せて。」

「はい、よろしくおねがいします!」


これで何とか夏祭りはやってくれることになりそうだ。

後は……今後の話か。俺みたいな子供に出来ることはあるんだろうか。

帰って自分の部屋のベッドで考えてると、いつの間にか少し眠ってしまっていた。

親に言われて急いで風呂に入る。体を洗い終わって、湯船に浸かりながらまた考える。


「あいつ今何してんのかな……。」

「え?キミと一緒にお風呂入ってるよ。」

「うわぁっ!?」

「えっ、どうしたの。大丈夫!?」


急に大声を出したから、親に心配された。

何でもないと答えてから、目の前のそれを見る。


「神社の近くしか駄目じゃなかったのか?」

「えっと、神通力も少し回復したから、キミを探してた。」

「何で?」

「神社の話を聞きに来たの。早い方が良いと思って。何か聞けた?」


今日の出来事を伝えると、やはり悲しそうな顔をしてこっちを見た。


「無くなっちゃうのか、あそこ。」

「今のままだとそうらしい。」

「約束、守れなくなっちゃうのか……。」

「まだ分かんないだろ。」


俺は悲しそうな顔をしたままのそいつの頭を撫でた。

最初はビクッとしてたが、次第にそのまま目を細めた。


「久々、撫でられるの……。」

「撫でられるの好きなの?」

「うん、好き。」

「そっか。」


暫くそのまま撫でていたが、急にそいつが顔を上げてこっちを見た。


「どうした?」

「いや、成長途中にしては、ちょっと小さいかもなって。」


そう言いながら見ていた視線は俺の股間。


「さっさと出てけ! 変態!」


思いっきりお湯を掛けてやったが、うまいこと避けられてしまった。

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