48 婚約者候補に興味(第二王子視点)
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物心ついた時には自分が化け物と思う様になっていた。
自分の黒い瞳と目が合う者は皆僕を魔王のように恐れるから、この顔が大嫌いで前髪で顔を隠すようになった。
自分の意思と関係なく暴れる魔力が憎らしかった。嫌だった。
だって近づくとみんな傷つく。
僕に近寄ると危ないから、自分から人を遠ざけた。
母が傷ついた時が1番胸が痛くて悲しかった。
母も父も側近も侍従も侍女も………もう誰も傷ついてほしくなかったし、怯えた目で見られたくなかった。
みんなを遠ざける為に結界を張り、その中にいるうちに、皆が同じ真っ黒な人形に見えるようになり、見える景色もぼんやりした。
周りがはっきりしないのはひどく落ち着く。
結界があれば誰も近づかない。
何の視線も感じない結界の暗い世界は安心を与えたけど、何もする気もおきなくなる。
起きてぼんやり過ごして、たまに食べて、また寝る。そんな繰り返し。
そんな中、突然僕の兄という光が現れた。
真っ暗な世界で兄上だけ、僕に変化をくれた。太陽の様な方だ。
その光が救いで、光の側にいると周りの景色がはっきり見えた。
兄上はたまにしか会えない僕に色んな事を教えてくれて、僕が知識を増やしていくと褒めてくれた。
褒められる=嬉しい 初めての感情。
それは心地よく、勉強だけが僕を裏切らず喜びを与えてくれる物になった。
そんな自分はたまたま王の息子に生まれた為に第二王子という身分があり、兄上と共通の婚約者候補が存在していた。
しかもその婚約者候補が、兄上と僕のどちらかを婚約者に選んだ方が王太子になるという。
僕みたいなのが王太子になれるわけがないのに、第二王子という肩書きがあるだけで何も出来ない僕も王太子候補になっているのが心底不思議だった。
全く王の考えが分からなかった。
知らない人は怖いし、僕には必要ない。
選ぶとかそもそもなんなんだ、婚約者候補が王太子妃に決まっているなら、兄上と婚約したらいい。
そしたら兄上が王太子になって、ゆくゆくは王になる。
それでいい、それがいい。
だから僕は婚約者候補に会うことも、興味すら持たなかった。
ある日天気が良いから離宮の裏庭のガゼボで結界を張って、読書をしていたら結界を通過する人物がいた。
は? なんで通れた? 兄上なら今日ここに来ないはず。誰だ?
しかも僕の結界には呪いも仕掛けているのに、呪い返しまでしてきた。
僕を抑えるための新手の魔術師か?
痛むお腹を抱えながら警戒してたら、垣根から出てきたのは銀髪で透き通るようなアメジスト色の瞳を持つ華奢な少女だった。
誰だ?いや誰でもいい。近寄るな!
近寄れないように呪いのストッパーを引いた。
これでこれ以上近寄れない、少し安心する。
そしてどうやって、ここに来たか聞いた。
けど返ってきた答えに会話が成り立たない。
そもそもこの結界は迷子で辿り着けるものでもないし、仮に結界に辿り着いても気付かず通過なんてできない。
更に結界に触れたのに、呪いもかからず平気な顔をしているなんてありえない状況だ。
全て弾き返すなんて、僕より魔力が多いって事だぞ?
聞くとこの子が僕らの婚約者候補のルキアーナ嬢だった。
こんなに魔力多いのに魔力が見えない?
信じられなかった。
こんな小さい子でこんなに魔力が多い子がいたなんて、確かに魔力量だけなら兄上に相応しいと思った。
そして迷子だというから帰り道を教えてあげたら、喜んであっさり呪いのストッパーを通過して、また呪い返しをしてきた。
く、痛い……。
自分のせいでこうなっていると気づいてないのか心配してくるし。なんなんだ、この子は。
奇妙な生き物に出会った気分だった。
そしてしばらくして彼女の存在を忘れていたら、彼女が王宮教養に参加するようになったから僕にも魔法学を学ぶよう王が命じてきた。
魔法は怖い、魔力も多く闇属性も扱いにくい、魔法を扱おうとすると勝手に魔力が暴走する。
何度城を壊したか……。
王命で仕方なく講義室に転移すると、すぐルキアーナ嬢が気づいて振り返った。
え、気づいたの? 普通誰も気付けないはずだけど? 気配消してるんだけど?
怖いと思った。僕より異質に感じ、何を言われるかと身構える。
けどエーデル侯爵にルキアーナ嬢は魔法で拘束されて安心した。
これだけ離れていれば危険もないし、視線も感じない。
エーデル侯爵の見解に疑問を感じついつい発言してしまったら、ルキアーナ嬢が大声を出したので、怖くなって机の下に隠れた。大声は全て悲鳴や罵声に聞こえる。
聞きたくなくて小さくなっていると、拘束魔法を自力で解いたルキアーナ嬢が土下座してきた。
奴隷が跪くように、床におでこが付きそうで、驚いたら机で頭を強打した。
公爵家のご令嬢だろう? 絶対しないだろう? ドレスも汚れるのに全く気にしていない。
信じられない思いの中、頭を上げてほしかった。
僕なんかに下げる必要はない、君は兄上の婚約者になるんだ。
今まで人とまともに会話してこなかったから、うまく頭を上げるように言えなかった。
そしたら無邪気な表情で笑われた。
笑顔が可愛いくあまりに楽しそうに笑うので、こっちもすっかり気が抜けた。
そしたら気分が落ち着いて、最後まで講義を受ける事ができた。
終わって自室に戻ると、変わった令嬢だったなと笑顔を思い出した。
しばらく魔法学に参加すると、エーデル侯爵が体内の魔力を感じる実習をすると言った。
他人に触れられるのは我慢ならなかったので途中で帰ったら、師団長が追いかけてきた。
抵抗しても捕まるのはわかっていたけど、どうしても嫌だった。そしたら久々に魔力暴走を起こして転移先の城の一部を吹き飛ばしてしまった。
そのおかげで魔力が枯渇し目覚めたら丸2日以上経っていた。慌てて神獣を探したが見当たらない、そしたらモップにかけていた呪いが弾き返ってきた。慌てて呪いを解いて、モップを探したがわからない。
けどこの感じは、あの時と同じ。絶対ルキアーナ嬢が呪いを解いたと思った。
王宮教養に顔を出すと、案の定ルキアーナ嬢がモップを連れていた。
しかもモップはルキアーナ嬢の魔力を食していて、空腹になっていなかった。それどころか居心地良さそうにしていて気に入らなかった。この神獣は僕のなのに。
次に王宮教養で転移しようとしたら、モップが急についてきた。そしてルキアーナ嬢の頭に張り付いて取れなくなった。
張り付いたモップはルキアーナ嬢の魔力をガンガン吸っている。この子大丈夫なのか?
ものすごく魔力吸われているけど…………魔力を感じていないのはよくわかった。
気分悪そうにないもんね。
僕の魔力より、その子の方が魔力美味しいの?
なんか負けた気がして悔しかった。気に入らない。
更にルキアーナ嬢は兄上に対して態度が悪かった。兄上は王になる方なのに、凄さがわかってない!この子が兄上の婚約者になるのは敬いが足りず嫌だと思った。
そしてもうモップをルキアーナ嬢に近付けまいと、空間拘束して行こうとしたら、モップが怒って僕の魔力を遮断して、城の廊下に放り出された。
まずい、怖い、人がたくさんいる。転移が使えない、歩いて帰るのか?ここから?
遠すぎて、怖くて、うずくまって動けなくなった。
廊下で小さくなっていると、上からルキアーナ嬢の声がした。
聞いたことのある声がして少しホッとした。
彼女は僕を怖がらないのも害さないのも知ってるし、僕の攻撃も効きにくい。
でも近すぎるのは危険だ、じわじわ離れてみる。
するとルキアーナ嬢はまた令嬢らしかぬ行動でしゃがみ込みにじり寄ってきた。
なんなんだ、この子は、本当にご令嬢なのか?
そして僕が自室に帰れなくなったと聞くと、連れて行ってやると言う。
僕は嫌だったけど、ここでこうしている方が怖かったから、お願いした。
黒いロープを出してルキアーナ嬢が引っ張ってくれる。それだけで、なぜか信じれる気がして小さいのに頼もしく感じた。
途中侍女に彼女が魔王の如くものすごく怖がられていて、僕と一緒だと思ったら笑えてきて、笑ったら睨まれた。でも小さいからあまり怖くないなと思った。
そして庭園前は人に見つかりやすくなるから、庭園内に引っ張ったら小走りについてきて人形のようで可愛かった。紐に繋がれてペットのようだと思った。そしてなんだか楽しそうだ。なんで君が楽しそうなんだよ、意味がわからない。
あともう少しで離宮というところで、最大難関!うじゃうじゃ人がいる。
怖すぎて一歩も動けずいたらルキアーナ嬢が閃いたとばかりに何処かへ行った。
戻ってきたルキアーナ嬢の手にはリネンワゴン。しかも僕にこの中に入れと言う。
あの、あのね、僕これでも王子なんだけど。
いじめとかではないとは分かるよ。分かるけど、僕がここに入るの?
戸惑っていると無理やり押し込まれた。
キツっ、狭いよ。僕これでも男なんだよ?
君じゃないんだからと思っていたら、ご機嫌で布をかけられた。
もう動けないし、だいたい君にこのワゴン押せるの?って思っていたら、案の定一歩も動けてないようだった。
ほらね。どうするんだよと考えていたら、外から師団長の声がした。
ルキアーナ嬢が謝りながら状況を説明していた。
騒ぎになったのは僕のせいだ。彼女は僕を見かねただけなのに。
申し訳なくなって大人しくしていたら、師団長に布を捲られ上から覗かれた。
狭すぎて自分で出れないって伝えたら大笑いされた。
腹が立つ!なんとか抜け出そうと暴れても、全く抜け出せなかった、脚力腕力もないから無理だった。
その間師団長に散々笑われ、体を鍛えようと思った。
そして師団長は面白そうにワゴンを押して離宮まで行った。不合理な状況に納得いかない。
魔法も使えないし、力もなく、されるがままなのが腹立った。
絶対魔法も体も両方鍛えてやる!
あっさり師団長の魔法で体を浮かされた時は、恥ずかしくて自分が情けなく感じて、さっさと離宮に入った。
ドアに背をつけ、しゃがみ込む。
師団長を絶対超えてやると思いながらも、今日のルキアーナ嬢を思い出した。
戸惑ったり怒ったり、意味不明に自信満々だったり、笑顔だったり、表情がコロコロ変わって面白かった。
そして何より自分にもびっくりだった。
こんなに怖かったり、笑ったり怒ったりしたのはいつぶりだろう? もしかしたら無いかもしれない。
今日1日で一生分の感情が動いたと思った。
なんかひどく疲れたし、1日がとても濃厚でもう2度と嫌だけど、景色が色付いて人生で初めて面白かったかもと思ったら笑えてきた。
「くくくく………。」
声を出して笑ったのなんて初めて。
なんかルキアーナ嬢は意味不明で、令嬢とはとても思えない行動をとる。公爵家で育った人間のとる行動とルキアーナ嬢が不一致で、難解な証明問題に思えてきた。
兄上の為にもっと彼女がどういう人物なのか知る必要があるな。
何者なのかしっかり追求して解明していかないとね、僕は調べたり問題を解くのは得意なんだよ。
覚悟しておいてね、ルキアーナ・ノア・ウィンテリア嬢。
閲覧してもらえて嬉しいです。
もっさり王子に興味持たれちゃったね。
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