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47 変なペットを離宮に届けろ大作戦

閲覧してもらえて嬉しい。本当にありがとうございます。

グイグイ…結構強めに引いた。


するとふら〜っと、マリモから貞子の様に立ち上がるもっさり王子。


ホラー……動きが怖いよ……。


ふら…ゆら……ふらら……音無くだんだん近寄ってくる。

いやいや、こっちが怖い。怖いよ、もっさり王子!


怖さで硬直していると、側にきたもっさり王子がまた黒マリモになった。

「…………。」


止まると黒マリモ、進むと貞子、すでに嫌になる。


しかし、このままにも出来ず。

「また見てきます。」

先に階段を降りて様子を見る。


よし階段オッケー。グイグイロープを引っ張る。


上からフラッ………ふら……揺れながら降りてきた。


怖すぎる、夜じゃなくて良かった。


と思っていたら私の背後から、足音が。

咄嗟に防火扉を開けて王子を隠す。


「まあ、ルキアーナ様、この様な所で失礼致しました。」

突然立っていた私にぶつかりそうになり、驚いた王宮侍女が低く頭を下げた。


グイッと王子にロープを引っ張られたが踏ん張り、笑顔を貼り付ける。

「いいえ、突然私がこの様な場所に立っていたのがいけないのです。頭を上げてください。」


私がそう言うと、王宮侍女は頭を上げ、私の後ろの防火扉を見て青い顔をした。

「そちらの扉に不具合がありましたでしょうか?」


なんとも怒られ待ちのように見え、扉の後ろを見ると少し汚れている様だった。


「そうですね、いざという時に使う物がしっかり使えるか、確認をしていました。けれど、扉の裏は少し清掃が行き届いてないようですね。」

まるで小姑のようなセリフだと思いながら言うと、王宮侍女は怯えたように震えた。


「も、申し訳ございません。どうか、どうか……。」

「………。」


え、私こんな小さいのに怖い? 顔もルキアーナちゃんでめっちゃ可愛いんだけど?


「いえ、そんなに怯えなくても大丈夫です。綺麗に清掃してある方が良いのではと思っただけですから。」

より一層意識して優しい笑顔を作ると、王宮侍女は涙目で頭を下げた。

「あ、あ、ありがとうございます。丁寧なご配慮とご助言感謝いたします。」


大袈裟な態度にこっちがびっくりするが、そこは表情が崩れないよう笑顔を保ち続ける。


「すぐ取りかかりますので、先に立ち去る事をお許しください。失礼致します。」

そう侍女は綺麗に礼をすると去って行った。


「………す…ご……く……こ…わが……ら…れ…てる……。」

後ろから少し楽しそうに、もっさり王子の声。


ギッと振り向くと、ドアから半分だけもっさり王子が体をのぞかせていたが、すぐ防火扉に隠れた。


こいつ………笑ってた…よね?


「殿下、放置しますよ。」

冷たい声で私が言うと、扉が

「ごめん…なさい。」

と謝った。


「いいですけど、なんであんなに怖がられてるんだろう?」

呟きながらしっしっと王子を手で払うと、防火扉を閉めてまた階段を降りた。


よし居ない、グイグイッとロープを引っ張る。


フランフラン…降りてきた。


よく考えたら、変なペットと散歩している気分だ。

全くやる気のないペットだが……。


庭園に続く廊下は意外にも人が多く行き来する。


さて、何処を通るか……。

思案していると今度は私がロープに引っ張られた。


後ろに突っ掛かり転けそうになりながら、

「え、ま、ちょっと……」

急に走った王子に着いて行く。


すぐに庭園に入り、人が視界から見えなくなった。


もっさり王子が止まり、ロープを持ってこっちを見下ろしている様だった。


………なんか散歩の形勢が逆転している。


何よ………。

黙っていると。


「ここ…から…こっ………ち。」


遠くに庭園と大きな木々の先に離宮らしき屋根が見えた。


「ああ、ここから1人で帰れるって事ですね。」

納得すると、ものすごくもっさり髪を横に動いた。


「あ、違う?」

「ま…だ…め、まだ…………て…き……おお……い。」


敵って………。

フッと笑うと王子はそっぽを向いてしまった。


でも王子の可愛らしい発言に笑いが込み上げる。

「笑ってすみません。では進みますね。」


私は緩む顔を耐えながら王子の横を通り過ぎて、庭園を進んだ。


引っ張ろうと振り返るとすぐ側に、もっさり王子が普通に立っていた。


近っ!……着いてきてたんかい。


びっくりして目が丸くなる。


「…ここ…け…は…い………うす…い……はやく……す……すむ」


「………分かりました。」

動揺を隠す様に歩み始める。


急にびっくりするではないか、もう、もっさり王子との距離感が全く掴めない!


少し早歩きにジグザグ進む。


チラッと王子を振り返ると、庭園の垣根は王子より少し低いように見えた。

廊下の人が気付いたら頭の先くらい見えるだろうな。


庭園を黒いカツラが移動中………なんか笑える。

1人おかしくなって顔がゆるみながら、ご機嫌で歩く。


そんな私を王子が首を傾げながら見ていると気付かず。


庭園が終わると芝生が続く場所に出た。


とても見渡しがいい、しかも右斜め前には使用人が割にいる。

どうやら洗濯干し場があって、取り込み中真っ只中って感じだ。


「……む…りだ。……敵…お…すぎ……る、………た…どり…………つけ…ない。」

急に震え小さくしゃがみ、黒マリモに変身した。


………一体王子の頭の中には、どんな風に見えているんだ。


どう見ても広く整った緑の芝の上で、洗濯物を取り込んでいる女性がワイワイ言ってるだけの、ほのぼのした光景だ。


なんなら彼女らは割に遠い。


へえ〜大きなワゴンでシーツ運ぶのか……。

!!

あれ、いいんじゃない?


「殿下、いいものを借りてきます。ここでお待ちくださいね!」

私はそう言うと、王子のロープを離し、彼女らの所を避けて倉庫に向かった。


きっと他にもワゴンがあるはず。

そっと開けると、あと二台あった。


よしよし。

私は布とワゴンをゲットすると王子の元に戻った。


そして私とワゴンを見て、黒マッチ棒の様に王子が固まった。


そんなもっさり王子にワゴンを指さし

「この中に入って小さくなってください。」


「……………え?」

もっさり王子が小さく左右に揺れる。


「さ、入ってください。さ、どうぞ、どうぞ。」


手を振って王子を誘導するが、

「え、……ええっ………ええ?」

更に左右の揺れを大きくするだけ。


何を戸惑っているんだろう?

この中に入って私が押して運べば良くない?


誰にも会わないし。

心底戸惑ってる王子が意味わからない。


こうなったらと王子の後ろに周り、背中を押す。

「入って下さい!運べないじゃないですか。」


「わ……わわ……まっ」

抵抗する王子に

「つべこべ言わない!」

無理やり押し込んだ。


意外に身丈があるから、長い手足がむぎゅっとなって押し込まれてる。


まあ、大丈夫でしょう。


「殿下。上から布で隠しますよ〜。」

返事も聞かず、布で覆う。


「息はできてますか?」

一応聞くと

「…だ……じょ………ぶ」


大丈夫って言ったぽい声が聞こえた。


「よし、では押して移動しますね。」

そう、声をかけると意気揚々と私はワゴンをグッと押した。


ググググググ…………。


…………………全く、動かない。


は、そうだった!私は非力のルキアーナちゃんだった!


芝生に王子の体重…………遥かに細く軽いルキアーナちゃんに押せるわけないじゃない。


ショックで芝生に膝をついてしまう。

どうやって運ぼう……。


愕然としていると、私を包む様に影ができた。


「どうされました?何がありましたか?大丈夫ですか?」

焦った声と共に両腕を掴まれた。


持ち上がった顔と目が合ったのは、焦った顔のエーデル侯爵だった。


「は?え?エーデル侯爵さ…ま?」

急に現れたエーデル侯爵に混乱する。


私を起こしながら、エーデル侯爵がドレスに付いた芝を払ってくれる。


「はい、私です。触れることをお許しください。どこか痛む所は無いですか?」


心配を払おうと両手を広げて見せる。

「大丈夫です。何処にも怪我はしていません。エーデル侯爵様はどうしてこちらに?」


するとエーデル侯爵は、ホッとした顔になった。

「王宮教養の語学教師が、部屋に行ったらルキアーナ様が私物を置いたまま居なくなっていると騒ぎまして、騒動が起きております。そして先程私の耳に連絡が入り、急ぎルキアーナ様の魔力探知をしまして転移してまいりました。何故このような所にお一人でいらっしゃるのですか?」


「あ、語学教養の先生!そ、それはお騒がせ致しました!申し訳ございません!」

思い切り頭を下げると、エーデル侯爵は私の肩を叩いた。


「大丈夫ですよ、ですが見つかった事を先に連絡させていただきますね。」

そう言うと、エーデル侯爵は指先に光の玉を浮かせ、口元で何か囁くと飛ばせて行った。


光の玉はスーッと城の周りを飛んで行った。


「これで連絡が行きましたので大丈夫ですよ。それでどう致しました?」

再度向き直り、怒りもせず麗しい顔を向けられ、急に気まずくなった。


だって冷静になれば、王子を離宮に連れて行く為とはいえ、黙って講座を抜け出し、更に王子をワゴンに押し込んだなんて。現在も押し込まれたままだけど………。


エーデル侯爵の後ろでワゴンに乗せた布がヒラヒラしてる……。


私の視線に気づいてエーデル侯爵がワゴンを見る。

「リネンワゴンですね。」


そう、その通りリネンワゴンです。


観念した私は全て話すことにした。

「語学教養が始まる少し前に、廊下で第二王子殿下の気配を感じたんです。」

「……気配ですか……。」


「はい、空気が動いた気がして、出たら殿下が小さくなっていたのです。そして自分の離宮に帰れないと申しまして。どうもモップ様を怒らせてしまったようで転移もうまく出来ず歩いて離宮に帰らなくてはならないようで、王子だけでは帰れそうになかったので、私が他の人に会わないようにここまで誘導して連れて来たのです。」


そう話してチラッと視線を上げてエーデル侯爵を見ると、目を開いて片手を口元に当てていた。

「それで、殿下はあそこの離宮に戻られたと。」


その言葉に詰まる。

「あー………えー………えっと。」

指をモジモジさせてしまう。


そんな私を見てエーデル侯爵が首を傾げる。


「それでここまで来たのですが…………使用人の方々がたくさんいるので、その……ワゴンに王子を入れて運ぼうとしていたのです。ごめんなさい。」

肩を落とし、とりあえず謝る。


エーデル侯爵はワゴンに近付き、布を取った。

「本当ですね、殿下が入っておいでです。どうぞ殿下出て来て下さい。」

「………………………。」

王子が何か言ったようだが聞こえない。


その途端、

「ははははっははは!」

エーデル侯爵がもう我慢ならないといったように笑い始めた。


びっくりして目がギョッとなった。


「は、は、っはは、モップ様に魔力遮断され、自室に帰れなく、クククク、あまつさえワゴンから出れなくなって、ははははははは。」

笑い転けるエーデル侯爵に腹が立ったのか、ワゴンがゆっさゆっさ揺れる。


「笑ってないで出せ!」

今日一番スムーズなもっさり王子のセリフを聞いた。


「ふふふふふふふふふ。」

おかしくなってくる。王子には悪いが、自分のしでかした事がおかしすぎる!


笑いが止まらない。


エーデル侯爵は涙目になりながらお腹を押さえてる。

「せっかくルキアーナ様が考えてくれたのです。このまま私が運びましょう!」

そういうとワゴンを押し始めた。


力があるのか、スムーズに動き出した。

私も笑いを押さるため、口を手で押さえて小走りについて行く。


「出せと言っているだろう。進めと言っていない!」

もっさり髪を揺らして、王子が怒る。


でもむぎゅっと詰まってるから全く怖くない…………いかん、また笑いが!


「いいのですか?側には侍女達がたくさんいらっしゃいますよ?」

意地悪そうな顔をしてエーデル侯爵が言う。


途端にもっさり王子は動きを止め、

「そ……れは…………こ…ま…る。」

突然どもりだした。


「そうでしょう。もうすぐ、着きますよ。」

本当エーデル侯爵が押したらすぐに離宮に着いた。


「では出して差し上げますね。」

エーデル侯爵が指を振ると、王子の体が浮きワゴンから出てきた。


ふわっと一瞬髪も浮かび、キリッとした黒目が見えた気がしたが、そんなのも束の間。

ダッシュで王子は離宮に飛び込んだのだった。


それから、私はエーデル侯爵にもう一度謝り、一緒にワゴンも返し、語学教師や迷惑をかけた方々にも謝り、本日の王宮教養を終えたのだった。


騒ぎを起こして、ごめんなさい。







今回も閲覧ありがとうございます。


無事にもっさり王子帰れて良かったね(笑)


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