46 王宮は魔窟なの?
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本日の王宮教養も語学で終わりという頃、突然廊下の空気が揺らいだ気がした。
第二王子?
ふとそんな感じがしたけど、よく考えたら今日の魔法学は終わっている。
しかも第二王子なら目標からずれて転移するとは思えなかった。
何故なら人が怖いから、人に出会したくないのだ。
うーん、気のせいならいいけど、もし本当に廊下に来ていたら?
………怯えて壁で小さく黒マリモになってる気がする。
「ええい。」
もうすぐ始まるが、覗いてみよう。
急いで立ち上がってドアから顔を出す。
「……………。」
……………思ってた以上に近い位置に黒マリモがいた。
目線のすぐ下にだ。しかも割にデカかった。
本当もっさり王子は15歳の男の子でしょう、強くあれと思う。
「あの、殿下?ここで何を?」
ゆっくり静かに、怯えさせなよう注意して話しかける。
少しビクッとしたが、私に多少慣れてきたのか、逃げなかった。
顎がこっちを向いたので、もっさり王子はこっちを見たようだが、顔が全く見えないのでよくわからない。
「…………じ……し…つ…………に、はい…………れ…ない。モップ………いじ………わる。」
なんだか少し怒っているのか、いじけ気味だ。
「なんでモップ様が意地悪なのですか?自室に入れないとは?」
私が話している間中、じわじわ座ったまま離れていく。
「モッ…プ……連れ…て、……こ…ない……ように………と…じこ……めた…ら、おい……だ…さ…れ…………た。」
モップ様を連れてこないように閉じ込めたら、追い出された?
………もっさり王子よ、何をしているんだ。
モップ様の行動制限したら反対に逆襲にあったのね。
それにどういう移動なのよ、その丸まったまま、よく私から離れて行けるわね。
2メートルほど離れたもっさり王子に半目になる。
「それは殿下がモップ様に意地悪したので仕方ないですね。」
「………し…てない。」
もっさり髪が横に振れる。
ふう、息を吐くと私もしゃがむ。
「どうしてモップ様を閉じ込めたのですか?」
「………モッ…プ…きみ……の、ま……りょく……食べ……て…し………まう。」
…………なんと私を気遣っていた!
私の為? いや、モップ様を取られない為?
大きく目を開く。
で、モップ様を閉じ込めて、自分が締め出されてるの?
ふふふ、なんか可愛いではないか、このもっさり王子。
私は顔が笑いそうになるのを我慢して、
「それで殿下はどうしてこんな所にいらっしゃるのですか?」
3メートル先になったもっさり王子に話しかけた。
じわじわ私もしゃがんだまま、にじり寄る。なかなかドレスの布が多くて難しい。
そんな私の動きに、驚いた様子で殿下が大きくビクついた。
「ド……レス…………が。……ど、ど……こに…で…も、……ひとが……い…る。ここ………すく…な…い。」
「ここから、殿下の離宮の近くまでいつものように転移してはどうですか?離宮の側ならすぐ歩いて帰れますよ。」
「…モップ……て…んい、……じゃ……ま…して…う…まく、……つか……え…ない。あ……るく………し…か…ない。……い…きて………かえ……れ…ない〜。」
あ〜完全にモップ様怒っているのね。
ふふふ、生きて帰れないって、王宮が魔物の巣窟の様ね。
「では、私が殿下より先に歩いて人が居ないのを確認しながら、殿下の部屋を目指すのはどうですか?」
なんだかスパイごっこの様で楽しくなってきた私はそう提案してみた。
殿下はしばらく考えている様だったけど、廊下の端に人の気配を感じる度に縮こまり、やがて、
「そう…する。」
小さく渋々頷いたのだった。
その返事の遅さも笑える。
「分かりました。殿下の離宮は西でしたよね。ではまず、あちらの廊下の角へ見に行きますので、ついてきてくださいね。」
私は立ち上がると、廊下を小走りに進んだ。
早くしなくちゃ、語学の先生に出会しちゃう。
そっと角から覗くと、遠く先に侍女のお着せが見えるが、手前の階段で曲がれば大丈夫そう。
「よし」
殿下を勢いよく振り向くと………………全く来ていなかった。
遠くに黒マリモのまま………。
「いや、遠い。全く。」
私はぼやくと、殿下の元に寄った。
「殿下、一緒に動いてもらわないと困ります。離れていると進んでいいか教えれません。」
「……行け……ないか…も……しれ…ない…のに………動け…ない。」
…………少しイラッとする。
少々大丈夫だよと思うけど、殿下にとっては死活問題なんだろう。
私はもう一度しゃがむ。
「殿下ここにもうすぐ語学の先生がいらっしゃいます。すぐ離れる必要があります。進めるかどうか、どうやってお知らせしましょう?」
すると、黒マリモのもっさり髪の下から、なんともおぞましいあのルンバール医師の手に巻きついていた様な、黒くウゴウゴ動くロープの様な物が伸びてきた。
え、怖っ……キモ……。
徐々に私に向かって伸びてきている。
私は顔が引き攣りながら、
「で、殿下、これをどうしろと?」
体を反る。
「…た…だの……ひ…も、……いく……と…き、……ひっ……ぱ……て。」
「触っても大丈夫なのですよね?」
蠢くロープから目が離せない。
もっさり髪が大きく縦に動いた。
信じるよ? 本当大丈夫だろうね?違ったら怒るよ。
「………触ります。」
意を決して握ってみる。
触った感じは意外にも、ただのロープ。何も違和感は感じない。
見た目はあれだが、まあ引っ張れるな。
くいくい引っ張って感触を確認して、立ち上がる。
「殿下、大丈夫なら2度強く引きますので、来てくださいね。」
私の言葉にもっさり髪が縦に動く。
「よし。」
再度さっきの場所に走って行く。
黒いロープは面白いくらいスムーズに伸びて行く。
角から覗きさっきと同じ状況に安堵して振り返る。
私から伸びたロープが黒マリモに繋がっているのが、なんともシュール。
この状況に少し固まってしまった。
私は無事に殿下を連れて行けるのだろうか………好奇心半分、不安半分。
閲覧してもらえて嬉しいです。
さあ、無事にもっさり王子は離宮に帰れますかね?
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