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42 兄依存の理由

閲覧してくれて嬉しいです。

魔法学が終わりもっさり王子がモジモジしながら、後ろからジワリジワリと近寄ってきた。


なんか背後から近寄ってくる………。


振り返って良いものか思案していると、微かな声が聞こえた。

「も………モッ…プ………を…返し………て……。」


背後からの途切れ途切れに聞こえる低い声、もうホラーだよ。

こっちが怖い。


振り向くのを躊躇い、前を向いたまま。

「はい。」

と言ってモップ様に手を伸ばして、声をかけた。

「モップ様、少し足を触りますがお許しくださいね。」


そっとふわふわの毛並みから足先に触れ、私の髪に差し込まれた爪を外していった。


モップ様は力も入っておらず、小さな爪が可愛い。

可愛さに内心悶絶しながら、モップ様を頭から持ち上げ胸の前に抱っこした。


私が渡す為に近寄るのは良くない気がして、ゆっくりもっさり王子に話しかける。

「殿下はお兄様が大好きなのですね。」


私が殿下の話題を振ると、もっさり王子は猫背からまたシャキッと立ち興奮した。

「あ、兄上はとても素晴らしい方なんだ。き、君は不敬な行動が多いよ……。ぼ、僕は兄上の為ならなんでもできる。尊敬できるしかっこいいし、側にいるとドキドキするし、ずっと側に居たい!兄上の役に立つ人になって一生側に居て何でもしてあげたい!」


え、好き? 恋する乙女のようだけど。

誰よりも発言が恋人っぽい………。


あまり詰まらず言ったその言葉に、私もエーデル侯爵も固まる。


そんな私達に全く気付く様子なく、もっさり王子は続ける。


「僕に唯一近寄って、話をしてくれたのは兄上だけ。兄上がいれば、兄上だけいれば、僕はそれだけでいい。」

そう言うともっさり王子は私の手からモップ様を取った。


「モップ、ダメ、食べ過ぎだよ。少しフラつくかもしれない。急に立たないで。」

あまりの兄依存に驚いて、王子の言葉が素通りしていく。


そして王子はスタスタ後ろに歩いていって、空気の揺らぎと共に王子の気配は消えた。


グッと眉間に皺がよる。

兄弟愛もあるだろうけど、…………依存が強くない?


エーデル侯爵の方を向くと、侯爵は眉を下げていた。

「そのお顔は殿下の生い立ちからお話する必要がありますかね。おいそれと話すわけにはいかない事でしょうが、王太子妃となるルキアーナ様は知っておくべきでしょう。少し私の独り言に付き合ってください。」


そう言うと指を振った。

「シウボーヨシンカ。」

部屋が薄く光り、エーデル侯爵が何か魔法を使ったのだろう事はわかった。


そして話始めた。

「陛下も魔力量が多いのですが、王妃様もとても魔力量の多い方なのです。それはとても素晴らしい事なのですが、多いが故に御子が出来にくいという事もありました。側妃様との間にキロネックス殿下が生まれ、5年後やっと王妃様も身籠もり城は歓喜に包まれました。しかし魔力量がここでも王妃様を苦しめました。身籠った御子は魔力量が多く、多すぎる魔力は母体を蝕んでいきます。魔力酔いと悪阻で食事もままならず、王妃は出産まで痩せこけ体力を消耗しました。王宮医全員のサポートの元、出産になんとか耐え第二王子殿下が生まれました。それ自体はとても喜ばしい事だったのですが、殿下は生まれた直後から多すぎる魔力と闇属性のコントロールができるはずもなく、魔力暴走が始まり、周りの者達が吹き飛び、呪いのかかる者、血をみる者、そして出産直後の王妃、医師も壁に打ち付けられ、呼ばれて私が駆けつけた時には暗殺でも行われたかのような惨状でした。」


そこまで聞いただけでも、その悲惨さに言葉を失う。


エーデル侯爵は1つ息を吐き出すと、また話始めた。


「私が直ちに王子を眠らせ結界を張り、周りに最低限の回復魔法をかけポーションをかき集め皆に回復を促しました。しかし私達だけの力で治せるはずもなく、サンタール医師を宰相宅から転移させ、神殿の治癒師も呼び、王妃様の回復を筆頭に皆の治療に尽力してもらいました。もちろん王宮解呪師に呪いも解いてもらいました。とても難儀だったようですが。皆が回復しても、殿下が目を覚まし泣く毎に魔力暴走が起こるので、誰も近付けず…………いいえ、近付く勇気のある者がいなくなっていったのです。そして魔力暴走に追加するように呪いの事もあり、命の危機に直面する威力の前に皆が背を向けるのは仕方ない事でした。王宮に魔力抑制魔道具が奉納されており、陛下が王子に装着させましたが、それもいつまで持つかという状況でなんとか育児を再開致しました。そして私達魔術師と解呪師に早急に殿下の魔力を抑えれる魔道具を作るよう命じられ、魔道具師や服飾師と多くの者が携わり殿下の魔力抑制力を持つ服を完成させました。それが殿下が着ている服です。定期的に新調しなければならないのですが、その効力は確かな物です。」


そのエーデル侯爵の誇らしげな表情にとても大変な事を成し遂げたという事が伝わった。

でもすぐにエーデル侯爵の表情は翳った。


「しかし出来上がるのは遅かったのです。生まれる前に出来ていれば良かったのですが、属性までは分かるはずもなく。魔道具が出来上がり魔力が抑えれるようになった時には、殿下は1人で歩けるまで成長しておりました。しかしその時には………危険がないと分かっていても、殿下に近寄る者が居なくなっていたのです。王族付き侍女、侍従、乳母などは殿下の呪いや魔力暴走に巻き込まれた者も多く、惨状を目にした者もいたので、恐怖心が生まれ、人伝に恐怖が伝わり、側仕えの手配が上手くいきませんでした。陛下は世話人がいない事を憂いて、格を下げてでも殿下に使用人を手配しましたが、皆怯え気味に接してしまう。更には殿下を悪と見做し雑に扱い、とても王族に対する態度ではない者までおり、殿下は次第に周囲に傷付き怯え、近寄る事をやめて自身の中に籠るようになったのです。殿下があのような性格になったのは私達に責任があるのです。」


まるで懺悔のようだった。


あまりの残酷さに息を呑んでしまった。

自閉になるには十分な理由。


「王様や王妃様は第二王子の育児が可能となった時、王子と過ごしましたか?」

我ながらわかりきった事を聞いてしまったなと思ったが、はっきり聞きたかった。


「いいえ、基本的に王族自身が子育ては致しません。しかし王妃様は自身が回復してすぐに王子の状況を危惧して、王子対策をして何度か育児に加わろうとなさりましたが、その際ほんの少しの危険回避ができず大怪我を。殿下の目の前で傷ついてしまいました。そこからです、殿下が王妃様も含めて徹底的に身近な者が近付く事を拒否するようになったのは。陛下も王妃様の安全のために殿下に近付く事を禁じられ、そこから今まで全く陛下も王妃様も殿下とは接触しておりません。」


やっぱり、家族なのにまともに家族として過ごせてなかった………。


王子自らの手で、母親を傷付けてしまった事は第二王子の心をかなり傷付けたと思う。そりゃ怖いよね、自分の思いとは裏腹に勝手に自分の大切な人達を傷付けていくのだから。


「涙が出そう………。」


思わず私がそう言うと、エーデル侯爵が少し目を開いて笑った。

「そういう感情のあるルキアーナ様がいらっしゃる事を嬉しく思います。」


声にならず、頭を下げ礼をした。


「そして第二王子殿下が7歳になった頃、第一王子殿下が弟殿下のいる離宮に訪れたそうです。」

「キロネックス殿下は大丈夫だったのですか?」

私が聞くとエーデル侯爵は頷いた。


「大丈夫です。その時キロネックス殿下は12歳になられており、魔力操作も魔法も長けている御人でしたから。けれど殿下が初めて離宮に足を踏み入れた時は、内部は壊れ荒れ放題、物は散らかり放題、弟殿下は酷く汚れていたそうです。」

「…………。」


なんでネクス殿下が離宮に行ったのか分からないけど、初めてナイスっと思った。


「第一王子殿下はとても優秀な方でしたので、魔力抑制の効いた弟殿下に恐れる事もなく、離宮をまともに整備していき弟殿下とも頻繁に接するようになりました。」


……………今のネクス殿下を思い浮かべると、少し首を傾げるが、当時は天使のようだったのかもしれない?

何か思惑があったのではと疑う私の性格が曲がっているのか………。


「へ〜殿下は素晴らしく弟思いでしたのね。」

「そうなのです。そのおかげで第二王子殿下は第一王子殿下にならまともに話ができるようになり、勉強を含め多くの事を教えてもらったようです。私は第二王子殿下から嫌われていたと思います。暴走した殿下を抑えるのが私の役目でしたから。しかし第一王子殿下が第二王子殿下の元に行く際、私も連れて行くようになりましたので、私も少しは近付く事を許されたように思います。」


この間の第二王子への羽交締め、まあまあ嫌われそうな捕まえ方だったけどね………。


「そういう経緯があり、あのように兄王子を慕い、崇拝しているという訳です。いい事なのですが………少し関係性が歪で、それが良くない方に働く事もあるのです。しかし殿下方への罪悪感もあり陛下も強く出れず、今の状態を放任しているという状況です。」


また!問題があるなら介入してやれよ。家族に問題があるなら、早めに!

その問題を後回しにする王室にイラッとする。


「その問題ってなんですか?」

私が聞くと、エーデル侯爵は言葉を濁した。

「私の口からは憚られます。いずれ目にする機会があると思いますので、ではルキアーナ様今日はこの辺りで、次の講義も始まりますから。」

そう言うとエーデル侯爵は指を弾いて魔法と解くと、部屋から出て行った。


…………問題ってなんだろう?


第二王子のもっさり引きこもりの訳は分かった。その境遇も悲惨極まりなく、よく生きていたなと思う。

まあ外見も含め色々あれだが、性格はネクス殿下よりは優しいと思う。よく優しく育ったよね、奇跡。


ネクス殿下が案に弟を心配したのか、思惑があったのかは分からないが、殿下の行動で弟が救われたのは確かだ。

それゆえに兄を崇拝する弟の図が構築されるのは当然だ。


今日のネクス殿下の弟に対する態度も普通だった。

…………本当、何処に問題が? 全く見えてこないけど。


…………ま、いっか、そのうち分かるでしょう。


次もっさり王子に会ったら少し優しくしようかなと思うのだった。








閲覧ありがとうございます。


キロネックス殿下に思惑があったのかなかったのか、助けてもらえて弟王子良かったね。


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