41 第一王子の神獣様
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「殿下の使役獣は歴代の使役獣の中で最も大きいのですよ。」
隣に立ったエーデル侯爵が教えてくれる。
確かに大きい、通常のライオンの5倍はありそうだ。
でも怖さはない。神獣様の濃い茶色の瞳に金色の光が瞬いていて、あたたかみを感じる。
モップ様とは違う魅力がある。
色はアレだが、あのふわっとした立て髪に触ってみたいし、姿がかっこいい。
でも、神獣様が大きすぎて近付くには怯んでしまう。
「どうだ、神々しいだろう。」
ものすごく優越感たっぷりにキロネックス殿下が言う。
「はい、すごくかっこいいです。」
私が興奮気味に答えると、殿下は複雑そうな顔をした。
「神獣は褒めるのだな。」
そりゃ、そうだろう。
モップ様は可愛いし、ラルクァンシエル様はカッコいい。名前もかっこいい、クァンってなに、響きがいい!
そう思っていると、ラルクァンシエル様が私の方を向いて瞳を少し大きくして凝視した。
「はあ、かっこいい。」
正面も凛々しく格好良かった。
動くたびに揺れるレインボー立て髪が柔らかそう。
「ん?どうした?ラルク。」
急に動いた神獣様に殿下は不思議そうにするが、神獣様は歩き始めた。
「え、え、どうした?」
殿下が動揺してるが、神獣様は全く気にしてない。
え、なんかこっちに来てない? え?え?
大きな神獣様が近付いてくるから、ますます存在を大きく感じ、見上げるほど大きなライオンが目の前に。
圧がすごい。
「こんな目の前で神獣様を見たのは初めてです。」
恍惚とした表情でエーデル侯爵が言う。
「どうしたのだ?本当に。」
殿下も神獣様の横に来て体に触れながら見上げる。
キラキラキラキラ、めっちゃ眩しい………。
瞬きをした瞬間、神獣様がグググっと屈んできた。
「ヴェっ⁈」
驚きで変な声が出た。
肩をすくめると目の前に口が。
口は閉じているが、パクッと食べられそうなくらい大きいので、流石にこの位置の口は怖い。
「ルキアーナ様、ラルクァンシエル様は何かモップ様と顔を合わせておいでです。」
怯える私にエーデル侯爵が小声で状況を説明してくれた。
ああ、そうだった。頭の上にモップ様がいたんだった。
神獣同士交信中?
モップ様に用事があったのね。
………神獣様は喋れるのだろうか?
しばらくそのまま会話の邪魔にならないようにじっとしていると、ラルクァンシエル様は顔を元に戻して離れて行った。
離れた神獣様は少しさっきまでの雰囲気と変わった気がした。なんというか瞳が厳しい。
全てを見抜くような視線なのだ。
「どういう事だ?おい、ラト、神獣同士こんなに近寄ったのは初めてじゃないか?」
思わずと言った感じで殿下が弟に聞く。
「はじ、はじ、初めででです!」
殿下の声かけにもっさり王子が大興奮。カミすぎ。
「一体何をしたんだ?」
顎に手を当てて殿下が首を傾げて私を見る。
え、何…なんで見るのよ。
ハッ!
「私また結界解きました?」
思わず聞くと、
「いや、私の神獣にはかけていない。近付こうと思う者がいないからな。それに神獣は使役する者が呼ばない限り姿は見せない。」
と神獣様を撫でながら言った。
そうなのか。そうよね、こんなに大きく立派な神獣様が迂闊に現れたりしないよね。
それこそ畏怖の対象になりかねない。
まだ神獣様は私を厳しい目で見続けている。
そんな神獣の様子に殿下は気づいて、ニヤリと笑った。
「神獣は聡いからな、お前の本性を見抜いているんだろう。私の神獣に認められないとは、その辺の奴らと同じという事だ。一臣下に私の神獣は畏れ多いという事だ。」
不遜な態度に腹が立つが、その通りだとも思う。
私のような一般人が近寄れる方ではないはず、神に仕えているような存在なのだから。
モップ様が特別なのだ。私の魔力と頭の上が気に入ってくれていて嬉しい。
そっとモップ様をひとなでして、私は姿を見せていただいた事に感謝して、神獣様達に精一杯のカーテシーをした。
殿下は片眉をあげて、不思議そうな顔をし、横2人も首を傾げてる。
普通なら言い返してくる所なのに、急に黙って最上級のカーテシーをしたから。
その姿に満足したのか、ラルクァンシエル様は起き上がり音もなく消えた。
「あ、おい、ラルク!」
殿下が声をかけた時、そこには光の粒が舞っているだけだった。
「急に消えて……まあ、私の素晴らしい神獣を一目見せてやるだけだったのだからな。神獣もこの国を守る為に忙しいのだ。普通は目にする事もできないのだから、感謝するが良い。」
殿下の声を頭に受けて、ゆっくり立ち上がった。
「殿下、神獣様の拝顔、ありがとうございました。」
私のお礼の言葉に、殿下は明らかに驚いていた。
そしてそっぽを向くと、
「わ、私は政務に戻る。師団長、あとはたのんだぞ。」
踵を返した。
「あ、兄上、お戻りになるのですか?」
しょぼんとした雰囲気を醸し出したもっさり王子が後ろから声をかけると、殿下は顔だけ振り返り、静かに言った。
「お前は頭だけは良い。しっかり私の役に立つように、勉学に励め。」
「はいいいっ!」
ものすごく背筋が良くなり、ピシッと直立した。
……………もっさり王子は臣下なの?もう兄が王様みたいじゃん。
2人の関係性に困惑したが、もっさり王子は殿下が去った後もどこかウキウキした感じだった。
「兄上が褒めてくれた……兄上が褒めてくれた……兄上が褒めてくれた……兄上が褒めて」
ずっとブツブツ言ってただけだったけどね。
王太子の座がかかってるからどうなのかと危惧もしてたけど、思ったほど兄弟仲も悪くなさそうで拍子抜けしたのだった。
いつも閲覧してくれて、ありがとうございます。
神獣同士なにを交信したんでしょうかね。
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