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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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「選ばない王と、選び続ける者たち」

最初に動いたのは、影だった。


 


床を這う影が、音もなく伸びる。


机の脚を伝い、壁を駆け、天井へと広がる。


 


逃げ場はない。


 


“囲まれている”というより、

“最初からここが檻だった”ような錯覚。


 


『排除を開始する』


 


その一言で、世界が引き裂かれた。


 


――来る。


 


アリアの身体が、反射的に前へ出る。


 


思考より先に、足が動いていた。


 


(守る)


 


理由は分からない。


 


だが、それだけで十分だった。


 


「――っ!」


 


振り下ろされる影の腕。


 


それを、紙一重でかわす。


床が抉れる。


 


遅い。


 


いや、違う。


 


(見えている)


 


昨日までより、はっきりと。


影の動きが、線として捉えられる。


 


「……いけるのじゃ」


 


自分に言い聞かせるように、呟く。


 


その背後。


 


セレナが、影の流れを“読む”。


 


「右、三つ!」


 


言葉は短い。


 


だが、それだけで十分だった。


 


アリアの身体が、迷いなく動く。


 


右へ。


三歩。


 


影の腕が、空を切る。


 


その隙に――


 


「今っ!」


 


リオナが飛び込む。


 


恐怖は、ある。


 


だが、それ以上に。


 


(この人を、守る)


 


その感情が、身体を押し出していた。


 


拳を振るう。


 


影に触れた瞬間、

“重さ”が伝わる。


 


――効いている。


 


影が、わずかに揺らぐ。


 


『……抵抗を確認』


 


代替の王が、静かに言う。


 


『だが、無意味』


 


その言葉と同時に。


 


影の数が、倍に増えた。


 


 



 


「……増えたのじゃ」


 


アリアの声が低くなる。


 


セレナは、すぐに状況を分析する。


 


「違う。分裂じゃない」


「最初から“複数として存在してる”」


 


つまり。


 


個体ではない。


 


“構造”。


 


リオナの呼吸が乱れる。


 


「これ……どうすれば……」


 


その時だった。


 


背後の“小さな影”が、揺れる。


 


弱い。


 


だが。


 


確かに、“指示しようとしている”。


 


(……何?)


 


セレナが、わずかに目を見開く。


 


影の流れが、一瞬だけ“止まった”。


 


そこに、“空白”がある。


 


「……そこだ!」


 


叫ぶ。


 


アリアが反応する。


 


迷いはない。


 


踏み込む。


 


影の密度が、最も薄い一点へ。


 


 


「――貫けぇッ!!」


 


 


拳ではない。


 


“意思”で、叩き込む。


 


 


影が、裂けた。


 


 


初めて。


 


明確に、“傷”がついた。


 


 



 


『……解析』


 


代替の王の声が、わずかに変わる。


 


『未完成個体の残滓』


『戦術補助機能を確認』


 


“補助”。


 


その言葉に、リオナが反応する。


 


「……違う」


 


首を振る。


 


「違います」


 


涙をこらえながら、言う。


 


「この人は、そんなものじゃない」


 


理由は分からない。


 


名前もない。


 


それでも――


 


“それだけじゃない”と、分かる。


 


 


『感情的誤認』


 


冷たい声。


 


『個体は機能である』


『それ以上でも以下でもない』


 


 


「違うッ!!」


 


 


叫んだのは、アリアだった。


 


一歩、踏み出す。


 


影を睨みつける。


 


 


「お主には分からぬのじゃ」


 


 


「“選ぶ”ということが!!」


 


 


その言葉に。


 


代替の王が、初めて沈黙した。


 


 



 


影が、再び動く。


 


今度は速い。


 


先ほどとは、比べ物にならないほど。


 


 


セレナの目が、追いつかない。


 


「速――」


 


言い終わる前に。


 


影の腕が、セレナへ伸びる。


 


 


間に合わない。


 


 


その瞬間。


 


 


影が、割って入った。


 


 


小さな影。


 


弱くて、頼りない。


 


それでも。


 


確かに、“庇った”。


 


 


衝撃。


 


影が、大きく揺れる。


 


崩れかける。


 


 


「――ッ!!」


 


リオナの声が、震える。


 


「ダメ……!」


 


 


その時。


 


 


声が、聞こえた。


 


 


――……だい、じょうぶ……


 


 


かすれた、

ほとんど消えそうな声。


 


 


でも。


 


確かに、“そこにいた”。


 


 


三人の動きが、止まる。


 


 


(……今の)


 


 


(誰の……)


 


 


分からない。


 


 


でも。


 


 


涙が、止まらなかった。


 


 



 


代替の王が、ゆっくりと手を下ろす。


 


『……理解不能』


 


『未完成個体』


 


『機能を失っているにも関わらず』


 


『なお、存在を維持』


 


 


ほんのわずかに。


 


声が歪む。


 


 


『非合理』


 


 


その一言に。


 


セレナが、静かに返した。


 


 


「合理じゃなくていい」


 


 


「それでも残るものがあるから」


 


 


リオナも続く。


 


「名前がなくても、覚えてなくても」


 


 


「ここにいるって、分かるから」


 


 


アリアが、最後に言い切る。


 


 


「それが“存在”なのじゃ」


 


 



 


沈黙。


 


 


代替の王が、ゆっくりと三人を見る。


 


 


『……再評価』


 


 


『未完成個体の排除を』


 


『優先対象へ変更』


 


 


空気が、凍る。


 


 


次の一撃は。


 


今までとは違う。


 


 


“終わらせるための一撃”。


 


 


三人が、同時に構える。


 


 


小さな影が、揺れる。


 


 


弱い。


 


 


でも。


 


 


まだ、消えていない。


 


 


(ここにいる)


 


 


その事実だけで。


 


 


十分だった。

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