1/9
神話の終わり
千年前。世界は滅びかけていた。これはしょうもない冗談ではない。事実だ。
空は縦横無尽に裂け、大地はうねりをあげるように燃え、海には黒い雨が降り続ける。
全ての原因は、“古代竜王”グラディウス。神代に生まれた最悪の災厄だった。
国は次々と滅び、英雄は奮闘するまでもなく死に、数千万の命が一瞬にして灰になった。
誰もが絶望した、その直後。
たった一人の魔導師が現れた。
黒髪の少年。
その隣には、灰銀の巨大な魔狼。
終焉級幻獣――フェンリル。
『本当にやるのか』
フェンリルが低く唸る。
少年は眠たそうに頭を掻いた。
「早く終わらせて寝たい」
『…一応世界の命運が懸かっているのだが』
「面倒だなぁ……」
そう呟いた少年は、空を見上げる。
彼はゆっくりと空へ手をかざした。
――《封界》。
空そのものが閉じはじめる。
神々の声が消えた。
世界から、”奇跡”そのものが失われていく。
世界最古にして、最強の禁忌。
古代竜王は封印され、世界は救われた。
だが、その代償として。少年は、仲間も居場所も失った。
そして、その名は歴史から消えた。
誰も彼を知らない。
しかし、一部の古き存在だけは、今でも彼を恐れている。
――”終焉の魔導師”レインを。
千年後。その“落ちこぼれ”は、魔導学院で昼寝をしていた。




