第18話
遠くにそれらしき建物が見える。
「あれが旧ドイツの国会議事堂だ。今はドイツ地方議会になっている」
俺は『世界危機』以前の世界を知らない。
「ドイツは、どうゆう国だったんだ?」
加山に向かって聞く。
この年なら、『世界危機』以前の世界を知っているだろう。
「ドイツか?ドイツは議院内閣制、連邦共和制国家。まあ、今の『政府』とそう変わらない」
いまいちピンとこない。
「その、俺は『世界危機』より前を知らない。国というものが感覚にないんだ」
「そうか。今の『政府』がそれぞれの地域にあっただけなのだが、小学校で教えられなかったのか?」
「俺は勉強は無理だったからな」
「国家とは領土と国民、独立した統治組織とを供えた政治共同体だ、一定の領土を基礎にして、固有の統治権によって統治される、継続的な共同社会、が辞書的な説明となるだろう」
なんだかよくわからない説明をされている気がする。
俺は右上に目線を動かす。
「まあ、土地と人間、権力があれば国家だ」
権力、今は『政府』にしかない。
「権力、その権力はどうしたんだ?どうして『政府』だけになった?」
加山は深くうつむいた。
「23年前、『世界危機』が起きた。世界人口の8割が死亡した人類史でも、スペインによる征服しか例を見ないほどだ。崩壊する社会の中、各国政府は互いに手を取り合い、各国に強い自治を残し、世界で唯一の政府を作った。世界は連邦国家となった。だが各国の権力は次第に低下。もはや、一つの地方自治体といえるほどになった。表向きにはそうだ」
「表向きには?どうゆうことです?」
「ああ、私はその裏で全世界を統一した組織がいることを知っているし、会ったこともある。彼らが『世界危機』を引き起こした犯人だ」
「裏の政府ってやつか?それに『世界危機』陰謀論。そんなネットのたわごとじゃあるまいし」
「まあ、いるからなんだという話だ。彼らは別に悪魔崇拝などしていないし、常に人口を調節しようとしていないし、『世界危機』も世界を統一するための計画だった。現に出来上がった世界はディストピアではなく、人権が保障された世界だった」
「それで私たちは、その組織が暴走しないように監視しているのよ」
「そう、我々は『行く末を見るもの』。そろそろ到着だ」
外を見ると、鍵十字を持った人が議事堂前の広場に集まっていた。
銃を持っている人もいる。
「落ちるなよ、しばらく空から攻撃する」
加山はドアを開ける。
俺は叫んだ。
「すでに戦線布告は受け取った!」
「ああ、奴らに春の目覚めを知らせてやろう」
ダニエルが言ったその言葉の意味は俺には分からなかった。




