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悪役令嬢は反省します  作者: 秋乃 透歌
第一章 ある朝の一幕
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割ったのは誰?

 それから数日も経たないうちに、過去への移動が夢ではないと証明されることとなった。

 クローディア達は、一年程前に過ごしていたように、マノン王立学園高等部へと通う日常を過ごしていた。

「おはよう。アビー、ベラ」

 クローディアが、アビゲイル、ベラへと声をかける。

「おはようございますぅ。クローディア様。ベラも」

「おはようございます。クローディア様。アビゲイル様」

 この三人で過ごす時間が多いことは変わらないが、彼女たちは身の振り方に気をつけ、人に親切にしたり、困りごとを率先して解決したりと、行動を変えていた。最初は、驚かれたり気味悪がられたりしたが、生徒たちの反応も少しずつ落ち着いて来たと感じられたある日。

 朝の通学路は、日常の光景にあふれていた。馬車の軋みと馬の蹄の音、女生徒達の喧騒、キャッチボールに興じる男子生徒達の声。揺れる制服の群れ。

 そんな平和な日常の中――。

 学園の一年生の教室で、日常を壊すような大きな音が響いた。

 女生徒の悲鳴や、男子生徒の声も聞こえてくる。

「クローディア様ぁ。例の件、今日だったのですねぇ」

「そのようですわ」

「これで、夢でないことが証明されましたね」

「そんな話もありましたわね」

 左右からの声に、一言ごと応じる。

 クローディアは颯爽と足を進めて、その一年生の教室を覗き込んだ。

 教室の後方、飾ってあった花ごと花瓶が床へと落とされ、無残に割れて粉々の破片になっていた。 

 授業の開始までまだ時間があるため、教室の中には生徒は一人しかいない。その女生徒こそがエリカ=フランジパンだった。

 教室の中央付近の席に座り、訳が分からないといった表情を浮かべながら、割られた花瓶を見ていた。

「なんだ、エリカ嬢が割ったのか?」

 廊下から教室を覗き込んだ男子生徒が、そう声を上げた。

 確かに、教室の中にいるのは彼女だけであり、そう判断してしまっても無理からぬ状況ではあるが――。

「ちっ、違うわ。私は何もやっていません」

「そんな事言ったって、教室にはお前しかいないだろ」

 押し付けようと言うよりは、事実の確認と言った調子で、他の男子生徒からも声が上がった。

 そこで。

 クローディアは扇を広げ、顔の前へと掲げた。

「何やら騒がしいですわね――?」

 凛と声を上げ、左右にアビゲイルとベラを従えて、クローディアは教室の中へと入った。

「ク、クローディア様?」

 突然の闖入に、エリカが驚いて声を上げた。

 やり直した今回も、エリカが同じ行動をとっているならば、彼女はニコラウスの周りに度々現れており、クローディア達とも面識があるのだった。

「げ、あれが三年の悪役令嬢……?」

 思わず声を上げてしまった不躾な後輩には、冷ややかな視線を送って即刻黙ってもらう。

「申し訳ありません。クローディア様」

 クラス長らしき女子生徒が慌てて教室に駆け込んできて、クローディア達へと頭を下げた。

「上級生の手を煩わせるような事ではありません。ここにいるエリカ嬢が、花瓶を落として割っただけなので」

 クローディアは、その言葉を聞いて大きく頷いた。

「分かりました。それでは、エリカ嬢、きちんと責任を持って花瓶を片付けること。よろしくて?」

 クローディアは、満足そうに音を立てて扇を畳んだ。

「これにて一件落着ですわね。おーほっほっほ」

 くいくい、と。

 クローディアの左袖を、ベラが引いた。

「クローディア様。それだと、一回目と全く同じです。完全に悪役令嬢が出ちゃってます」

「――と言いたいところですが」

 と、若干顔を赤くしながら、クローディアは仕切り直した。

「まだ、エリカ嬢が花瓶を割ったと断言することはできません」

「えっ?」

 驚いたようにエリカが声を上げた。

「その通りですわぁ。もう少し慎重に、状況を確認する必要がありますわぁ」

 アビゲイルもフォローの言葉を発した。

 そして、期待した視線をクローディアへと送ってくる。

「コホン。まずは現場の確認ですわ」


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