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中古屋探偵  作者: 小田川アキ
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平良と矢野家 その1

玄関先まで来ると家の中から人の叫び声が聞こえてくる。試しにドアノブに手を伸ばしてみるが鍵はしっかりとかけられていた。どうしようかと辺りを見回し玄関脇から庭へと進んで行くと叫び声は一層大きくなっていく、どうやら庭に面したリビングの窓が開け放たれているせいで中の様子や声が丸聞こえになっていた。


室内では泣き叫んで暴れる中年の女性を白髪の男性が押さえ付けており、その横でエプロンを身に付けた女性が落ち着きなく周囲を見回している

「早くあの、縫いぐるみを探してくるんだ!」

「そ、それが…」

「どうしたんだ、早くしなさい!!」

「すいません旦那様、それが…縫いぐるみが見付からないんです」

「さっきの女が庭に向かって投げていた、庭を見てきなさい」

その言葉に、平良は辺りに視線を向けるとリンドウが咲き誇る花壇の根本に60cmほどのクマの縫いぐるみが転がっていた。クマの縫いぐるみはチェックのズボンに白いシャツと赤い蝶ネクタイという小洒落た服装をしているが花壇の土で少し汚れてしまった。


平良は縫いぐるみを拾い上げると、開いていた窓ガラスから躊躇い無く入り込んだ

「な、なんだお前は!!」

「ヒィッ!!!」

突然姿を現した厳つい大男に、白髪の男性とエプロンを身に付けた女性は酷く驚き悲鳴のような声を上げる


平良は2人の前を通り過ぎると、涙と涎まみれの女性の前で膝を付いた

「はい、これ。ちょっと汚れちゃってるけど」

「あらやだ"正人ちゃん"たらこんなに泥だらけになって、いったいどこで遊んでたの?」

女性はクマの縫いぐるみを抱き締めると愛しそうに語りかける

「庭の花壇の所で遊んでましたよ。今日は天気が良いから外で遊びたかったんですよ」

「でも、黙って1人で行くなんて危ないわ」

「そうですね。じゃあお母さんも一緒に付いてあげて下さい。まだ遊び足りないみたいなんで」

平良は窓から覗く庭へ顔を向けると、レースのカーテンが柔らかく風になびいている


「もう仕方がない子ね」

女性は縫いぐるみを抱いて立ち上がると庭へ向かって歩き出した。平良はその姿を確認するとエプロンの女性へ視線を移し軽く頷くと、女性は慌てて後を追って行く

「奥様、私もご一緒しますね」

花壇に咲いた花を眺めながら、2人…いや3人は穏やかな表情を浮かべていた







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