第88話 焼き芋
風が吹く…
落ち葉もちらほら…
社交シーズンでもあり、兄ジーンの学園入学もこないだ済んだばかりである。自分は関係ないのでいつの間にか終わっていた。婚約者のレキシー嬢がちょっとやらかしたと聞いたが問題ない範囲だと思うし、おそらく大丈夫だろう。
そんな感じで季節の移り変わりを感じつつ、オルの背に寝転がりミチをゆく…
八百屋の前を通りふとサツマイモが目に入った。その季節か…と思いつつも少し早い気がした…追熟が十分ではないだろう…あれ寝かした方が美味いんだよな…置くとこあるかな…
「だからってここに置かなくてもいいでしょう…屋上庭園があるじゃないですか」
アーロンに不満たらたら言われてしまう…
「屋上は狭い…オレの生活を圧迫してしまう…」
「いや、それ自分にも当てはまるじゃないですか!」
「大丈夫大丈夫!床下に置くだけ、ちょうどよさそうな場所でしょ…」
「いや武器庫なんですけど…」
「いいからいいから」
そういってサツマイモを保存した。結界を施しておいて虫にやられないようにしておいた。ベストな温度はわからんけど問題ないはず…
ただ全部は追熟しない‥今食べる。
一つは干し芋に、もう一つは焼き芋に…
干し芋は簡単、スライスしてから乾燥魔法をかけるだけ…水分を飛ばして甘みを凝縮するだけ…
これだけで充分うまいのよ…
そんで焼き芋の方も準備…落ち葉は少ないので散歩中に集めておいた落ち葉を収納魔法から取り出し、乾燥魔法を適度にかけて火を作る…
「いや小屋の前でやんないでもらっても?小屋に移ったら大惨事ですぜ…」
「あぁ、ご愁傷さま…」
「違う違う…ケアしてくだせぇ!結界でいいんで!」
アーロンがそこまで言うなら仕方ないな…干し芋で機嫌を直しつつ火の粉が倉庫に飛ばないように結界で囲った…
「燃ぉ~えろよ燃えろぉ~よ~♬炎よ!燃ぉ~え~ろ~よぉ~♪」
だいぶ良くなってきたので焼き芋を土属性の造形魔法で保護しつつ、炎に放り込む!
さぁさぁ焼けろ焼けろ!!アルミホイルにいれて焼き芋したことはあったけど、今回はこれでいけるか分からない。一応アルミっぽい物質にはしたけど…
よく考えてみるとどういった仕組みなのか考えたことなかったな…石焼き芋とかもあったし、岩盤浴みたいな調理方法だったのだろうか…包み焼きハンバーグ的な方かな…となると基本的には蒸し料理?
ってことはわざわざ焚火に放り込むこともないのかもしれない。そんなことを考えつつ、造形魔法でトングを使って位置を変えていく。うん熱の位置的に焼けてないかもしれない…
今までで一番ムズイ調理かも…
鑑定魔法を使いつつ焼き芋の状態を常に観察していく。このやり方では効率悪いとか出てるけど、そんなこと知るか!!これで始めたんだからこれでやるんじゃい!!!
美味しいホクホクの焼き芋ができた…これはイケる!!!
サツマイモを買い集め、石焼き芋を研究することにした。
まず作るのは石!黒かった気がするけど、何層かに分けてみるのもいいかもしれない。とりあえずおおきな石から敷き詰めて熱が加わるようにセットしていく囲いから熱が出て全体的に広がっていく仕組みになるのかな…下からも一応温めておくか…温度的には100℃は超えない方が良いのか…よしよし
なんとなく屋台っぽくなってしまった。いずれ「石焼ぁ~き芋ぉぉ~~~♪お芋!!どんな~とき~も君と!!」ってマルちゃんに歌わせつつ練り歩こうかな…
「なにを作っているのかしら?」
裏庭でやるの忘れていたので母上が来てしまった…
くそっ!!めんどくさいことにならないようにしなければ…!!
「おはようございます、母上!これは石焼き機です!これで芋を焼きます!」
「お芋?美味しいのかしら?」
「食べてみますか?」
造形魔法でイスとテーブルを作り待っててもらうことにした。すぐさまラヴェが現れ、テーブルクロスと日よけを用意した。その間に熱を上げて造形魔法で紙に近い薄さ包みに芋を入れてセットした…
「それはサツマイモかしら?ハナ、あなた食べたことあるかしら?」
「はい、蒸したものなら何度かあります」
「そうなのね、楽しみだわ…」
「良ければこれも食べますか?」
「これは?」
「干し芋ですね、さっき買ったものを乾燥魔法で乾かして甘みが凝縮してます。ラヴェ、お茶お願い!」
「はい、失礼します」
干し芋を並べた皿と一応カトラリーも用意した。あとつまようじ…
「いただくわね…うん、結構しっとりしてるのね、予想以上に甘いわね?これもカフェで売るの?」
「そうですね…素朴な味でもあるので時々ですかね?この秋限定とか?」
「いいわね!!限定品…いい響きだわ!!」
なんか勝手に盛り上がってくれる、よかったぁ~
何とかラヴェやハナが話を繋いでくれたので石焼き機の方の具合を見て、熱が安定してないことに気づき修正しつつ、芋を動かして調整した。鑑定魔法の判定でもいい感じになってきたので皿に盛り、母上に給仕した。
トムに通信魔法で表の庭に牛乳を持ってくるように指示をして席に着いた。
「あら、これはそのままかぶりついていいの?」
「ええ!貴族的な作法はないはずですので…熱いですがどうぞ!」
「ぱくり…うん!すごいわね、もはやスイーツじゃない!!」
「だよね~ハナもどうぞ!」
「ですが、業務中ですので…」
「いいえ、食べなさい!ハナ!美味しいわよ!」
「…では」
後ろでもしゃもしゃ食べてるラヴェに苦笑している母上を伺いつつハナも食べる。しっかり笑みをほころばせていた。
「マイク様~、牛乳お持ちしましたって!奥様!!し…失礼しました。どうぞマイク様!」
「ありがとうトム、コレ持ってって!」
「焼き芋ですか?いただきます」
去っていくトムを横目に見つつ質問される。
「牛乳が好きなの?」
「ええ!特に焼き芋には合いますね…母上はカフェオレにしますか?」
「コーヒーが入ったヤツよね?お願いするわ」
こうしてマイクはサツマイモを通して母ヴィータローザと親交を深めるのであった。




