エピローグ
城塞都市ミッテルには、武力があまりなく、魔法使いが全力で防衛を続けていた。
防御結界は最初に掛けたが、攻撃が始まるとアウラステラと姫騎士がドームを展開する。
フィリップスが伝授を受けた回復と、その最上位魔法・魔力分与はなくてはならないものとなった。余裕があるときは魔晶石に“回復”を籠めて兵に与える。砦攻めが始まると、王弟フェロステラ卿が妻を抱きしめてそうしたのと同じように、娘を抱き寄せ自分の魔力を与え、気を失いかけながら支え続ける。公王の娘婿が娘を護り抜く姿は、城塞を守るすべての兵と魔法使いの心を励ました。
城塞を支え続けて2週間、南側から包囲するガリエル軍に向けて轟音とともにエクスプロージョンが撃ち込まれた。地面にすり鉢状の穴ができ、馬と兵が吹き上げられた。
もう1回、さらにもう1回。防衛の力を信じて、強大なエクスプロージョンが選ばれていた。
南面の包囲を排除して、フレデリカの姫隊が最初に裏門にたどり着いた。
「父上―、父上―、フレデリカです、門を開いてー」
門が開くと、白髪が混じるようになったフレデリック・マール宰相が兵に押されて最前列に出、娘を抱きしめる。
「フレデリカ、ありがとう。愛しているよ」
「よくわかりませんが、多分わたくしも愛しております、父上」
そして、これは母上から預かりました、と言いながらフレデリックの頬にキスした。
ミッテルに兵力の備えができて、戦況は楽になった。
王国側の第一次国土回復戦の最終目的は、ミッテル城塞とフェロステラ城跡を結ぶラインを確保して、そこからフラヴェス河、ルーレ湖畔までを制圧することにあった。
フェロステラ城跡をトンネルと山越え両方で制圧し、砦を造りトンネルを確保する。
ミッテルにさらに兵力を送り込むために、双子の火山の間を通る道を拡げて馬車が通る広さにする。
確実に進める。先は長い。
ガリエルを逃れて、王国に来た移民とその子孫に魔法の使い手が多かったことがガリエルの最大の敗因だろう。再び故郷に帰るため、あるいは祖父母、老いた父母を故郷に返すため、移民は固い決意をもって国土回復戦に臨んでいた。
東の植民地で食料生産が順調に進んでいたことも大きかった。兵は糧食に悩まされることがなく、隠れ住んでいた農民も食料の噂を聞いて元の土地に帰り、フィエール領から運ばれてきた麦を植えた。
ミッテルから始まった帝国再建には、長い年月が必要だったが、ギボン9世を名乗るサピエステラは皇都アッカイードに入城し、帝都カンディウルビスと名を改めることができた。
喜びに躍りあがる兵士たち、その家族と市民。
妻の少し後ろで、娘と息子の家族とともにテラスに立って手を振りながら、フィリップスは思いを巡らしていた。
故国ドナティエール王国は、近いうちにフェロステラ公領と改められて、兄の息子が治めることになるだろう。叔父カンデラ公と夫人ローズの長男が宰相として付いており、後継ぎも育っている。
フィエール侯爵領は、カンディステラ公爵領と改めたいと請願が出ている。立場上、これを後押しすることはできないものの、叶えられるといい、とフィリップスは思う。
婚約者だったエイプリルは長い闘いの日々を終え、指揮官としての栄光を讃えられながら、エリスに抱かれ息子ジョットレイに看取られて天に旅立った。
宰相フレデリックは、娘フレデリカに頬を撫でられ、微笑んで眠りについた。その目には、妻ミリアムが手を差し伸べて迎える姿が映っていたかもしれない。“ミリアム”と呟いて旅立った。
こうして自分が妻サピエステラとともに皇城に入ることができたのは、彼らの力強い支えがあってこそだということを、今のフィリップスは知っている。
皇帝である妻に囁きかけ、肩を抱き寄せて執務室に向かった。
フィリップスには父母、義父母、親友フレデリック、伯父アンドリューたちの住む国へ旅立つ日までそれほど時間は残されていない。それまで妻を支えて誠実に生きて行くことだろう。
新帝国に幸いあらんことを
End of “Blood of Candistella”
Thank you, my friends, Granite
お読みいただきまして、本当にありがとうございます。
用語を統一して、間違いをできるだけ直し、約束を果たして書き直すことができました。
得難いことだと思っています。
2024年4月 倉名依都、愛するエイプリルとともに
クエスチョンの答
1.アリエスについて
アリエスは、ガリエル皇国から送り込まれた工作員で、ハニトラを得意としている
ヒントの場所は?
①アニーは顔認識と識別という特殊能力を持っている
②エイプリルとエルが、アニーにアリエスの顔を見せている
③それによって、アリエスはかつて移民船で来た女性だということがわかり、
ロシュフォール男爵令嬢と偽っていることが判明
工作の目的は、国土回復編、2.謀略で語られている通り
2.フィリップスが継承した最上位魔法とは
“魔力分与”という、回復系統の最上位魔法で、王弟フェロステラ卿から伝承されてきた
ヒントの場所は?
①王都編、4.ウイレムの長い話 王弟が、妻を抱き寄せて、“魔力を分け与えている”
②王都編、8.王妃と王子 王妃が、フィリップスを「不妊」としてもいい、と語っている
それは、ウイレムの研究によって“魔力を溜める”ことができるようになるので、
魔力分与の能力者に頼らなくても魔晶石に籠めた“回復”や、自分自身の魔力を“溜めた”魔晶石を“持ち歩ける”ようになるから
お楽しみいただけたでしょうか。またお会いできる日を楽しみにしています。
倉名依都




