妖精
「ピンコ、ペンコに外にいる仲間を連れてここへ来れないか伝えてくれ」
「ワカッタ」
今思えばラベフルの監視と試合状況のために置いてきたペンコがいてくれてよかった。
(これで、あの少女と対戦相手の誰かが繋がっていることがわかった。どうして僕が狙われているのかは直接聞けばいい)
少しすると外が騒がしくなってきた。ペンコたちが来たのだと思っていたが、それにしては大勢の声が聞こえる。扉から離れ構えた瞬間、大きな音が聞こえ猪が駆け寄ってきた。
「遅くなりました」
「いや助かったよ、どうしてこんなに人が集まってるのか聞いてもいいか?」
猪の入ってきた扉の向こうには、試合を見ていたであろう人たちが押し合い必死になって覗き込んでいた。僕の質問に答えたのはラベフルだった。
「ここへ来る途中子猿魔が見つかってしまい、試合も終わったことで騒ぎになってしまいました。」
つまり、子猿魔を連れている猪が何者なのか追われていたということだが、その子猿魔が見当たらないのでラベフルに視線を戻し無言で訴える。
「あのー、子猿魔たちは怖かったのか逃げ回りこの建物の中へ入ったところで見失ってしまいました。」
「なら落ち着けば戻ってくるかも知れないな、とりあえず次の試合が始まるから出よう。」
人だかりの方へ進み出て行こうとした時、誰かに話しかけられた。
「そこにいる小さな魔物は妖精族ではないですか?」
誰に聞いているのか確認しようと視線を上げると、人だかりの視線は全て肩にピンコとペンコを乗せた僕の方へと向いていた。
ペンコについては珍しい魔物としか知らなかったので、どうしたものかと悩んでいるとピンコが一言言い放った。
「ソウヨ」
(そうだったのか!?)
驚いたのは周りにいた人も同じだった。
だからなんだとも思ったが、余程珍しい魔物なのだろう拝む人まで現れた。
その場の空気に疑問を感じるも、待機室へと急いで向かった。
「おや、逃げてしまったのかと思っていましたが...」
待機室には対戦相手であるインテリ眼鏡と受付の時に世話になった女の子がいた。
「逃げていて欲しかったの間違いでは?」
意外に好戦的な眼鏡の言葉に、閉じ込めたのがこいつじゃないかと思ったが問い詰める前に女の子の口が動く。
「お兄さんたち、もう始めるからついてきてね。」
女の子はこちらに目配せして、階段を登り会場へと扉を開く。向こう側からは今までのように騒がしい声が聞こえるものと3人とも予想していたが、その予想は裏切られただ静かに見つめられていた。
女の子は唾をゴクリと飲み込む、インテリ眼鏡はニヤリと怪しい笑みを浮かべ自信満々のようだ。今更になり緊張してきた僕は、ただ固まっていた。
「妖精の使者」
「魔王に対抗できる勇者と同等の力を持つお方。」
そんな言葉があちこちから聞こえてくる。妖精という言葉に、先ほどの騒ぎの理由がわかった。
「では、試合を始めます」
先ほどまでの試合は、女の子の親が受け持っていたのであろう。騒ぎが起こったことで上の者にその旨を説明しに行っている間、初めて審判を任されたようだ。彼女も突然だったため、ガチガチに緊張して台へ上がり声を発した。
しかし、開始の合図かどうか少し迷い戸惑っている間にインテリ眼鏡が魔物に命令する。そして、自分がラキを呼んでいないことに気づいた時には目の前に黒い影が迫っていた。




