日常には戻れない
あのあと、どうにか追い出し日常に戻ろうとした。
帰り際にこれだけは知ってて欲しいと病院と病室が書かれた紙を渡された。
ふと、外を見るともう夕暮れだった。笑われているようなきがして、好きだったはずの夕日を見ることができなかった。違う。見えなかったのだ。どんなにまっすぐ見ても、滲んで見えなくて、ただオレンジのような、赤のような色だけが見えてどうしようもなくうずくまる。家の扉の前でまるで世界でたったひとりになったみたいに、透明な暗闇に放り込まれたように、何も見えなくて何も見えて欲しくなくて感情を塞いだ。
部屋に戻ると、あいつが心配そうな顔をしてこっちを見ていた。
こいつもこんなとぼけ顔ができたのかと関心をしながら頭を撫でてみた。暖かくて、髪は柔らかくて人間と変わらない温もりがあった。撫でられてる本人は「うわっ」とか「おい...」とか切れたり、驚いたり、せわしなく表情を変えていて面白くてこんなやつにも心配されていたのかと自分に呆れそうにありながら、手を止めた。
顔をあげようとしたこいつの頭を抑えながら、必死で外をみた。
夕日に反射した家たちはそれぞれの明るさがある気がした。暖かい、家庭がそこにはあるのだと思い知った。知りたくなかった。こんなに温もりを求めている自分がいるだなんて...
今はまだいいかもしれない。これから、わかってしまったことに背を向けることはできないだろう。
どうすべきか、本当は悩んでいる。
雲をつかむような、水を切るような、きりのなかをさまようような、もがきながら悩もうと思う。結果は出ないかもしれない。悩んでも無駄なのかもしれない。時間は限られている。だけど、背を向けないで前を向いてしっかりと見ていこうと思う。
そう心に誓って、頭を抑えていたやつの顔をみた。不思議な表情になったあと、納得したような顔をした。こいつには、助けられている部分が多すぎる。だけど、感謝を伝えるのはなんか違う。部屋に2人。名前も、年齢もお互いよくわからない関係。改めてこいつとこ関係に疑問に思うけど、それはそれでいいんだと納得している自分もいる。僕達はこういうものだ。




