第四章第二節
第二節 音の消失事例
【事例報告:拝受状況観測室 拝受係主任 〇〇 〇〇】
記録番号:E-11
対象:拝受係員(男性・40代)
事前承認番号:R01-E52-拝観1298
管理者:室長補佐 〇〇 〇〇
係長 〇〇 〇〇
拝受観測員:
主任 〇〇 〇〇
主任 〇〇 〇〇
係員 〇〇 〇〇
拝受観測機:正常作動
PM02:11 拝受開始
PM02:18
・対象が右手を挙手。
・発語「音がしない」
・観測室内機器は正常稼働を確認。
PM02:20
・対象が発語「静かすぎる」
PM02:21
・対象、頭部をわずかに傾ける動作を確認。
・音源探索の兆候と判断。何かしらの音に耳を傾けていると思料。
PM02:24 慶事兆候
・拝受値、急上昇。
・基準値の1.8倍を記録。
※以降は事後記録
PM02:26 対象隔離、緊急慶事連絡
・規定に基づき、拝受室を施錠。
・対象を室内に隔離。
・情報基盤部に緊急慶事連絡。
PM02:31 慶事連絡受理通知
・国土交通大臣より慶事連絡受理通知。
指示事項:
①拝受対象の隔離
②観測職員の二次的な献上を慎むこと
③当該事象の記録継続
PM02:32
・対象が発語「おられます」
・目を閉じた状態を維持するも、発語増加。
PM02:33
・対象、両手で耳部を覆う動作を確認。
・当該行為により聴覚への意識集中が強化された可能性。
PM02:35
・呼吸数増加を確認。
PM02:36
・対象、静止。
・目を開けて、耳を覆っていた両手を離す
・通信を開始(通信先:息子)
PM02:40
・通信終了
PM02:41
・遺書を書き始める
PM02:42 御彼覩に対する献上
・対象、座位のまま消失。
その他職員、御彼覩に対する献上無し。
本事例における献上は、音の消失に対する初期対応の遅延に起因するものと考えられる。
対象は拝受開始後、比較的早期の段階において「音がしない」と発語しており、この時点で既に環境音の消失が認識されている。
当該徴候は初期段階のものであるが、認識行為が伴っている以上、閲読中断を検討すべき状況であったと判断される。
さらに、二度目の発語「静かすぎる」により、対象が当該現象を異常として明確に認識していることが確認される。
この段階においては、単なる感覚ではなく認識として成立しているため、即時の中断措置が必要であった。
しかしながら、本事例では当該対応が行われておらず、結果として対象は音源探索に移行している。
頭部を傾ける動作及び聴覚への意識集中は、御彼覩に対する認識行為の強化と見なされる可能性があり、観測状態への移行を促進したものと推定される。
また、慶事兆候発生後においても、対象の発語及び行動が継続している点について留意が必要である。
特に「おられます」との発語は、御彼覩の存在を認識した上での言語化であり、観測状態の確定を示す挙動と考えられる。
その後の通信行為及び遺書作成については、最終段階における一般的行動と一致するが、これらの過程においても意識が継続して御彼覩に向けられている状態が維持されていた可能性が高い。
以上より、本事例は、初期徴候に対する対応遅延、認識行為の継続、及び中断判断の欠如が複合的に重なり、献上に至った典型例として位置付けられる。
特に、観測値が基準値以内であることを理由に対応を先送りする判断は、事象の進行速度を過小評価する要因となる。
音の消失は突発的に発生し、短時間のうちに観測状態へ移行する可能性があるため、数値的指標のみに依存した判断は適切ではない。
当該徴候は、発語の有無及び認識の明確化を基準として、早期に中断措置を講じる必要がある。
最後に付記する。
音の消失に関する認識は、対象が最も自然に意識を集中させやすい徴候の一つである。
そのため、軽微な違和として扱われやすいが、実際には観測状態への移行を最も促進しやすい段階である。
当該事例は、当該特性を示す典型例として、今後の対応指針に資するものと考えられる。




