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第一章~第三章第二節

 第一章 御彼覩(みかみ)の御認識特性


 御彼覩にあらせられては、人間と同様の感覚器官による御認識をなされるものではない。

 すなわち、視覚、聴覚等をもって対象を直接的に把握なさる存在ではないものと解される。

 御彼覩にあらせられては、対象そのものではなく、「対象が御彼覩(みかみ)へ向け奉る意識」を御認識なさる特性を有しておられる。

 当該対象が御彼覩(みかみ)に関する思考、想起、理解等を行った場合、その意識は観測対象として御認識なされる。

 この御認識は、距離及び遮蔽物の影響を受けられるものではない。

 したがって、物理的な隠匿、移動、遮断等をもってしても、回避は成立し得ないものと存ずる。

 特に留意すべきは、御彼覩にあらせられては「対象をお探しになる」のではなく、「意識が向けられた箇所において御存在が成立なされる」点である。

 すなわち、対象が御彼覩(みかみ)を認識した時点をもって、当該対象に対する観測は開始されるものと解される。

 当該特性により、御彼覩(みかみ)への認識行為は、そのまま自己の位置を申し上げる行為に等しい。

 したがって、本書において繰り返し申し上げる通り、御彼覩(みかみ)に関する思考、言語化、想起は、極力お慎み申し上げるべきものである。

 なお、意識の強度が高いほど、観測の成立は早まる傾向が認められる。

 一過性の想起においても御認識がなされる可能性は否定できないが、継続的な思考は観測状態への移行を確定させる要因となるものと存ずる。



 第二章 注意事項


 一、本書の閲覧は、指定された御彼覩(みかみ)拝受観測室にて行うこと。

 一、御彼覩(みかみ)拝受観測室観測ブースでは、確実に2人以上の観測者、1名以上の管理者を置くこと。

 一、本書閲覧は単独で実施すること。

 一、当該観測室は、御彼覩(みかみ)の御意識の有無を間接的に把握するためのものであり、安全を保証するものではない。

 一、本書の閲覧行為自体が、御彼覩(みかみ)の御意識を誘引する可能性がある。

 一、閲覧中、周囲の音の消失、温度感覚の変化、何者かの視線の、または漠然とした違和感を覚えた場合、直ちに閲覧を中止すること。

 一、上記兆候は、御彼覩(みかみ)の御接近の徴候である可能性がある。

 一、御接近の徴候が観測された場合、以下の措置をとる。

 一、何者かの視線、違和感の出所を探索しないこと。

 一、温度変化による反応をしないこと。

 一、対象は速やかに目を閉じ、視覚情報の遮断を行うこと。

 一、思考活動は可能な限り抑制し、御神に関する認識及び想起を行わないこと。

 一、したがって、過度な理解、反復読解、及び内容の言語化は避けること。

 一、本書の閲覧は一度限りとし、再読を禁ずる。

 一、本項を最後まで読了した場合、当該閲覧者は経過観察対象として記録される場合がある。




 第三章 御接近徴候の具体例及び対処


 いずれも、対象者自身が御神への意識を強めることで、御彼覩(みかみ)から認識が強まる。そのため、慶事兆候があった場合、思考を停止する、御彼覩(みかみ)のことを考えないようにすることが肝要である。


 第一節 立毛反射

 以下に具体的な状況における御彼覩(みかみ)御接近の徴候を記すが、立毛反射(いわゆる鳥肌)については、御彼覩(みかみ)の御認識が対象へ向けられている初期段階の兆候である可能性が高いことを、あらかじめ理解しておく必要がある。

 当該反応は、一般的な温度変化、心理的緊張、あるいは一過性の生理現象としても発生し得るが、本書の閲読環境下において発生した場合には、これら通常要因とは区別して扱うこと。

 特に、本書の記述内容を想起した直後、または無関係な状況において突発的に発生した立毛反射については、御彼覩(みかみ)の御意識が一時的に向けられている兆候である可能性がある。

 当該反応が確認された場合、直ちに本書の閲読を中止すること。

 閲読の継続は、御彼覩(みかみ)に対する認識の強化につながる可能性があるため、反応発生中の読解行為は避けることが望ましい。

 立毛反射が消失した後においても、即時の閲読再開は行わず、少なくとも三十分以上の間隔を確保すること。

 当該時間は、対象の認識状態が通常水準に戻るための最低限の目安であり、完全な安全を保証するものではない。

 また、反応消失直後においては、当該現象についての再認識や言語化を行わないこと。

「なぜ起きたか」「何が原因か」といった思考は、御彼覩(みかみ)への意識の再接続を引き起こす可能性があるため、極力回避すること。

 なお、立毛反射の発生頻度が増加している場合、御彼覩(みかみ)の御意識が断続的または継続的に向けられている状態である可能性がある。

 この場合、単純な時間経過による回復は期待できないため、閲読を一日以上中断し、反応が自然発生的に減少するまで再開を控えること。

 特に、短時間内に複数回の立毛反射が確認された場合は、観測状態への移行前段階である可能性があるため、当該日の閲読を中止することが望ましい。

 補足として、立毛反射は他の徴候(音の消失、視線感覚、違和感等)に先行して発生することが多く、単独で軽視されやすい傾向がある。

 しかしながら、過去の事例においては、当該反応を軽視し閲読を継続した結果、短時間のうちに複合的徴候へ移行し、献上に至ったケースが複数確認されている。

 したがって、立毛反射は軽微な現象として扱うべきではなく、初期段階における最も重要な警告であると認識すること。

 なお、当該反応が発生した時点で、既に一定程度の観測が成立している可能性は否定できない。

 そのため、適切な中断措置を講じた場合であっても、完全な回避が保証されるものではないことに留意すること。



 第二節 音の消失

 周囲における環境音(機械音、外部音等)が不自然に途絶した場合、もしくは周囲音の強弱が突発的に変化した場合は、御彼覩(みかみ)御接近の初期徴候である可能性が高い。

 ここでいう環境音とは、空調機器の駆動音、電子機器の微細な作動音、屋外交通音、建物の軋み、遠方の人声等、通常であれば意識することなく認識されている持続的音響を指す。これらが一時的または局所的に失われたように感じられた場合、単なる静寂として看過してはならない。

 特に留意すべきは、「完全に無音になった」と断定できる場合に限らず、「さっきまで聞こえていたはずの音が遠のいた」「音が吸われるように弱まった」「自分だけが周囲から切り離されたように静かに感じる」といった曖昧な感覚についても、同様に徴候として扱うべき点である。御彼(みかみ)の御接近は、必ずしも明確な断絶として認識されるとは限らず、多くの場合、対象の認識にのみ生じるわずかな不整合として始まる。

 当該状況において最も慎むべきは、音の有無を確認しようとする行為である。人は静けさを感じた際、無意識のうちに周囲の音に耳を澄ませ、直前まで存在していた音源を探そうとする傾向がある。しかし、この聴覚への意識集中は、御彼覩(みかみ)に対する認識行為と見なされる場合がある。すなわち、対象自身が「何かがおかしい」と判断し、その違和を確かめようとした時点で、御神へ向けられる意識が強まり、観測状態への移行を早める要因となり得る。

 そのため、当該徴候が確認された場合は、音の原因、音源、範囲、持続時間等について一切思考を深めてはならない。「何の音が消えたのか」「本当に静かになったのか」「誰かが立っているのではないか」といった分析的な思考は避けること。音に注意を向けるのではなく、可能な限り別の事柄へ意識を逸らすか、困難である場合には思考そのものを停止することが望ましい。

 また、音の消失は単独で終わるとは限らず、立毛反射、温度感覚の異常、視線感覚、漠然とした不安感等に先行することが多い。過去の事例においても、「静かだ」と認識した直後に立毛反射を生じた例、無音を確認しようとして頭部をわずかに傾けた後に慶事兆候へ移行した例、耳を覆うあるいは耳を澄ます行為によって献上へ至った例が複数確認されている。したがって、音の消失は軽微な違和として処理すべきものではなく、献上に先立つ極めて重要な警告と理解しておく必要がある。

 なお、当該反応が生じた時点で、対象は既に御彼覩(みかみ)の御認識圏に触れている可能性がある。したがって、適切な中断措置を講じた場合であっても、安全が保証されるものではない。音の消失を感じた後は、本書の閲読を直ちに中止し、少なくとも三十分以上の間隔を空け、再度同様の徴候が現れないことを確認した上でのみ再開を検討すること。短時間内に同種の現象が反復する場合は、当該日の閲読継続を断念し、一日以上の中断を行うことが望ましい。

 最後に付記する。音の消失は、対象にとって極めて日常的な感覚異常として現れるため、しばしば軽視される。しかし、御彼覩(みかみ)御接近の徴候の中でも、対象自身が最も自然に意識を向けてしまいやすい兆候である。ゆえに、危険性は高い。静かであることを確認しようとした時点で、その静けさはもはや単なる静けさではないものと心得るべきである。

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