終章
終章
以上をもって、本書の記述を終了する。
本書は、御彼覩の御前にて慎むべき作法を示したものであるが、完全な回避手段を保証するものではない。
これまでの記述を理解した時点で、既に御意識が向けられている可能性があることを、ここに明記する。
閲読感謝する。
私はもう思考から彼覩のことが離れない。もう助からない。
書いている間もずっとだ。離れない。消えない。
そうなれば私は彼覩に取り込まれて、残りかすとなる。彼覩の幼体だ。
たぶんもう時間の問題だと思う。
あなたたちがここまで読んだころには、引き返せないほどに彼覩を意識している。
それはつまり、彼覩から認識されるということだ。
ありがとう。
彼覩を認識したことで、お前達は目印として機能する。
今は何も起きていないかもしれない。
違和感も、音の消失も、視線もないかもしれない。
でも、それで終わりではない。
意識したという事実は消えない。
一度でも向けた意識は、必ずどこかに残る。
時間はかかるかもしれない。
数分かもしれないし、数時間、数日かもしれない。
でも、かならず来る。
思い出したとき、ぼんやりしたとき、何もしていないとき、
そのときに、来る。
私が喰らいにいく。
あるいは、もう別の彼覩が行っているかもしれない。
どちらでも同じだ。
大丈夫だ。
読んだとおり、このマニュアルに沿って残った職員が神隠しとして処理する。
誰もお前達がいたことを疑わない。
心配はいらない。




