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気がついたら船に乗っていた。そう、船だ。
船が浮かんでいるのは黄金の海、海は空を映しているのだろう、だから空も黄金……いや、少し違う。
地平線より少し上に太陽を横長くしたものがそうだな、簡単に表現するならフラフープのようなものが地球というか、そこを囲んでいてその上に黄金に輝く空がある。
船にはたくさんの人が乗っている、そう、たくさん。
僕がそこであったのは一組の夫婦。
女性のほうが赤ん坊を抱えていたかは定かではないし、なんとなくしゃべった感覚はあるのだが何をしゃべったのかはわからない。
その人たちと会ったのはどこだろうか?奥に船の内部へつながる扉と丸い小さな窓が見えた気がする。
この船に乗っている人は何かを待っているのだろう。何を?ふと、これは生まれ変わりを待っているのではないかと考えたが安い考えかもしれない。
無気力で何もしようとはしない連中が甲板を埋めている。もちろん、近づいておくに行こうとすればどいてくれたりは一応するが、それもあくまで片足分だけ、それ以上は期待できないし期待しない。
僕はなぜか船内へと向かおうとしている。
その途中、多分男だと思う人に話しかけられた。
『君はまだだ』
まだ、何を待っているのかはわからない。だけど、僕の順番ではないことはわかった。
扉を開けるとそこには一人の老人がいた。
白いひげがまるでサンタのように生えていて頭がはげている……そうだったか今ではわからない。
その老人に何か言われたが、覚えてはいない。
外から声が聞こえてきた。女?……それとも男の声?それも二転三転。
多分、どこかについたということなのだろう。
だが、どこにもついていない。進むことなく、ゆれることなく船はそのままだ。
異変が起こっているのはわかっている。甲板を覆い隠していた数人の男たちが消えていた。
多分、僕は驚いた。
扉から老人が出てきて再び僕に何かを言ったはずだ。
そこには誰もいなかった。
夫婦も、甲板を覆っていたほかの人も、老人も。
気がつけば僕一人、黄金の海の上にたたずむ多分、黄金の船。
次は僕の番だとアナウンスが告げる。
ここにいた時間は長かったのだろうか?それとも短かった?
ここはどこだと呟いたつもりだったがそれは弾けて消えた。




