20話 清流と古き風習と祟り祀る古文書
泰徳が捕まり病院という隔離施設に入れられて約3ヶ月
、清流の周りは監視の目が強化され自由が狭まれ清流は未来に希望が持てなくなっていた。
「はぁ、私も止水おじいちゃんみたいにしがらみにがんじがらめになるのかな、跡取りで将来有望とか悪夢でしかないわ」
今は大学の勉学をこなし、従兄弟の泰徳なんかどうでも良い忘れてしまおうとさえ頭を過ぎるようになっていた。いやいや、できればどうにか助けたいが名案が浮かばない。
「捕まるまで自由に生きて来た泰徳さんが羨ましいな」と口にだし、結局助けだせなかった自分の力のなさにネガティブになる。
清流の大学の研究テーマは慈善町の歴史だ、この地域の権力者の祖父である止水の跡取である清流は慈善町の歴史を小さな時から調べたり調査していた。
清流は図書館から借りてきた郷土資料に古地図など眺めて気づいたことをノートにまとめていく。
「目新しい発見は無いし、…止水おじいちゃんの書斎なら何かあるかも、お願いしてみよ」
清流は止水を探しに止水の書斎へ向かいドアをノックする。
「おじいちゃん居るー?開けるよ」
書斎の扉は開いたが中に止水は居ない。
と玄関の方から
「じゃあ行ってくる今回は眠りの巫女様の護衛で1週間ほど留守にする、家の事は任せる」
と止水の声がする。
「あっ、止水おじいちゃん…鍵かけ忘れたんだ、」
止水は書斎の本棚を探す。ふと、書斎の奥に続く扉に目が止まる。
「そういえば奥の部屋何があるんだろう、ちょっとだけなら…」
ドアを触ると鍵は空いていた、奥の部屋は6畳くらいあり、書棚や雑多なものがホコリも被らず綺麗に並んでいる。清流はゆっくり部屋を見てまわる。
「ふーん、あっこの本良さそう」
バサバサバサッガタンッバタンバタン
「うっわーぁ…いてててて」
清流は書棚の上の方の本に手を伸ばし取り出そうとするとまわりの本も一緒に引っ張られ床に散乱してしまった。
清流が床の本を拾っていると、絨毯の端の紐が床に挟まっているのに気がついた、その床のまわりをみると
60cm×60cm程の四角い縁取りがある。
「床下収納かな?開けてみよ」
清流が床を持ち上げると地下へと続く部屋がありハシゴがかかっている。扉を開けるのと連動して地下の明かりはつくようで中は明るい。
清流は部屋を見渡す、基本おじいちゃんの部屋には監視ようの式神はいない、その確認だ。
清流はハシゴを降り地下室を見渡す、書棚とテーブルと椅子、床には魔法陣、壁は土が剥き出しで洞窟みたいに奥へと続く道がある。
ふと、テーブルの上に本が開きぱなしで置いてあるのが目にとまる。
随分黄ばんだ本で表紙を見ると鬼切り村の歴史とある。古文書のようだ、はじめましてみる。
清流は古文書をパラパラめくる。
「鬼切り村?…この地図古いけど慈善町じゃない?へー、昔は鬼切り村って…なんか物騒な名前ね」
「…私の先祖の御川家の事も書いてあるわ」
戦国時代、御川家当主、御川友善
倒した鬼の血肉を喰らい鬼に自在に化ける力を手に入れ、厳島の平清盛の家臣として数々の戦で貢献する。
平清盛亡き後、御川友善は故郷安芸の国にもどる、子孫も代々鬼を喰らい力を受け継ぎ時の権力者に力を貸し暗部を担う。
明治に入り鬼に化ける力は異形とされ御川家も鬼を喰らうのをやめ御川家は小川家と姓を変え人としての生を全うする方向に歩みはじめる。
鬼の力は陰陽術とされ重宝されるが、鬼を喰らうのをやめた後も鬼として姿を変え自我を保てなくなる者が度々現れ一族はそれを鬼の祟り破滅型転生者とし、秘密裏に処理してきた。
その悩みを解消したのが眠りの巫女様の出現である、
彼女は予知夢を見る事ができたのだ。
それから鬼の発現を預言する眠りの巫女が地位を確立させる。
「え?!何これ泰徳さんも鬼になるって事?」
と清流のフェイスノートが着信を告げる。
同じ大学に通う友達で留学生の宮ニーチェだ。父が日本人で母がオーストリア人のハーフだ。オーストリアで育って暮らしていたが父の育った日本の勉強をしたく日本の大学に留学生としてやって来た。28歳だが19歳の清流とは妙に気が合う。
清流はフェイスノートの画面を開くと宮の顔がアップで映っている。
「なーに、宮、ナンパと合コンなら付き合えないわよ」
「オガ、ナンパ合コン違ーう、今度は街コンさ、ね、一緒に行こ」
清流は宮からの通話をしつつフェイスノートをいじる。一件メッセージが届いている。
「シークさんからフェイスノートにメッセージが届いてる!良かった無事だったんだ」
「オーガァ、私の話しきいてる?」
宮はむくれてブーブーとブーイングしている。
清流はシークからのメッセージを読みながら宮に話しかける。
「ごめんごめん、宮、相談があるんだけどさ、今から言う事は他言しないで欲しいの」
「なーに?恋愛相談、嬉しい!ニーチェ口堅い、誰にも言わないよ!」
「…そうね、そうなの、今から宮ん家行って良い?」
「おー、私今からバイトなの、明日なの夕方5時頃なら空いてるよ!」
「ならその時間訪ねるわ」
「はぁーい!待ってるね、じゃあ明日」
「うん、明日宜しく」
清流は宮との通話を切る。
「宮ならきっと」
清流は古文書を一旦閉じる。
「何か他に目新しい資料はないかしら、おじいちゃんは1週間帰ってこないみたいだから今がチャンスね」
清流は古文書と地下の書棚から7冊程古書を取り出して自室へ運ぶ。途中、止水が家に仕掛けた家の盗聴式神や監視の目を思念で操作し映像を差し替える。
清流は夜通し書斎から持ち込んだ古書に目を通して気付けは朝になっていた。
シークはフェイスノートを操作し、止水のスケジュールを確認する。こっそりハッキングしてみると成功したのだ。
「止水おじいちゃんのスケジュールは、と」
20xx年
2月24日下準備
2月25日護衛(今日)
2月26日前日祭
2月27日鬼呼び出しの儀式
2月28日鬼切りの儀式
3月1日鬼喰らいの儀式
3月2日鬼の慰霊祭
3月3日眠りの巫女様の予言の儀式
3月4日護衛
「うんうん、これなら作戦決行可能かな」
シークに返事を送る。
『シークさん無事で良かった、泰徳さんを助け出すの是非私も参加するわ!作戦を思いついたのシークさん達と会って細かい事とか調整したいから今日夕方5時なこの住所にあつまれないかしら、慈善町菜乃川2ー2008リバーサイド1ー3お返事下さい来るのが無理そうならまた作戦を練ります。』
いつも様にそのまま朝食をとり大学へ行く。講義は半分うとうとしながら何とか持ち堪えた。
シークからはお昼に返事があり了承との事だった。
大学の帰り道、監視式神を思念で映像を差し替え清流は監視の目をすり抜け宮ニーチェの家へ向かう。
その日の夕方5時、清流、宮、シーク、イル、烈華は宮の部屋に集まり軽く挨拶をする。
「私は小川清流、水の呪いと、古武術を使う事が出来るわ」
「私は宮ニーチェ、動物と話ができるよ!それとタロットも得意ね!」
「俺はシーク、地獄から来た鬼だ、ねーちゃんを探している、泰徳とも知り合いだ」
「同じく地獄から来たイルだ、今は犬の姿だがぬいぐるみとか人形に取り憑く事も可能だ、宜しく」
「私は魅魂烈華と言います。つい最近言の葉神社の神様から真言を教えてもらい力を使えるようになりました、宜しくお願いします」
清流の目がえっ?!という風に見開く。
「魅魂さん?魅魂さんって漢字どう書くの?この古文書に書いてある名前と一緒かな?」
清流は古文書の魅魂と書いてあるページを開き烈華にこれですか?と指をさし確認する。
「はい、名前おんなじです。」
「魅魂さん慈善町の歴史に興味はあるかしら!貴女と同じ姓の魅魂紫って名前の女性が古文書に出てきてその人も真言を使えるの!」
清流は目を輝かせて烈華に話す。
「オガー、恋愛相談とか嘘付いてー!泰徳って従兄弟助ける作戦会議するんじゃなかったのぉ?」
「そうだった作戦が先ね、魅魂さん!今度ゆっくりお話ししましょう」
「は、はぁ、私喋るの苦手ですが私で良ければ宜しくお願いします」
「烈華さん宜しくね!」
清流は心を落ち着かせ作戦を述べる。
「まずは日本国首都のお抱え陰陽師であり慈善町の預言者である眠りの巫女様を私たち側に引き入れる必要があるの」
「巫女様って予言者だろ?私たちの事ばれてるんじゃない」
「もうバレてるわ、私巫女様のSNSの裏垢見つけたの、巫女様少しでいいから自由な時間が欲しいみたいなの、取り引きは成立してるわ、巫女様の自由と引き換えに泰徳さんを施設から出す為に予言を修正してもらうの」
「作戦は明日の2月26日、儀式に入る前の前日祭で巫女様をさらって夜にはお帰りしてもらうわ多分大丈夫」
烈華が手を上げ発言する。
「あのぉ、私作戦のチーム名考えてきたんですけど…ねこねこ輝く目力同盟ってどうでしょうか」
「そうねチーム名があった方が臨場感があっていいかもね」
「よくわからんチーム名だが良きとしよう」
シーク、イル、宮は頷く。
異論はなくチーム名はねこねこ輝く目力同盟に決定した。
「じゃあ作戦を話すわね」
清流は一同に持ち場と作戦指示を提示する。
「練習もなく行成明日に作戦決行だとハードね、オガ」
「わわわ、私自信ないです」
烈華は頭がぐるぐるする。
「俺も土地勘ないしなぁ、今から下見してくるか、イルも一緒に行くか?」
「ああそうだな、シーク行こう」
「私も明日の準備があるから一旦解散だな」
シーク、イル、宮は明日の準備のため外出し、清流と烈華は3人を見送った。
「烈華さん!まだ時間あるかな!貴女の事も知りたいしさっきの魅魂紫の話を」
「はい大丈夫ですよ、親に夜ご飯は友達と食べて帰るって連絡しときますね」
烈華は勇気を出して清流の事を友達と呼んだ、否定されたらどうしようとドキドキした。
「ありがとう烈華さん!」
清流は下の名で呼んでくれている。友達OKって事かも!と烈華は思った。
「はい清流さん!宜しくお願いします」
友達疎遠歴それなりの烈華はこれがリア充か、としみじみ思い涙が溢れ出た。
「どうしたの烈華さん!大丈夫?」
「はい、目に虫が入っただけです大丈夫です」
2人は飲食店へ向かい。烈華は清流から魅魂紫の話と慈善町の歴史に耳を傾けた。




