21話 清流と眠りの巫女と本当の気持ち
前日祭の当日夜明け前、宮はナイトスコープを持ち眠りの巫女が滞在する屋敷が見渡せる山の中腹の木の枝の上にいた。
ウォーンオンオンオン、ニャー。
犬や猫の鳴き声が響く。
宮のナイトスコープからは巫女が滞在する屋敷の警備が数匹の屋敷に侵入してきた首輪のついた犬に駆け寄り対処する姿をが見える。
「清流、今なら大丈夫そうだよ」
前日に頼んだ動物の合図を聞いて宮が清流に無線を送る。
「OK宮!烈華さん手はず通り行きますよ」
「はい!」
清流、烈華、シークは眠りの巫女が滞在する屋敷の塀を宙を飛べるシークの手を借り飛び越える。
屋敷の縁側に1人の布団を被った少女が手招きをする。眠りの巫女のようだ。清流、烈火、シークは足音を忍ばせ部屋に急ぐ。
「よく来てくれました、貴方がたの事は夢のお告げで知っていました。」
少女は被った布団を下ろし3人に一礼をする。よくみると烈華と背格好が似ている。
「烈華さん夢で見た通りそっくりですわ、鏡を見ているようね、宜しく私は眠りの巫女の銀兎」
「は、はい、巫女様お役に立てて光栄でございます。
烈華も眠りの巫女に一礼する。
「それであ、あの、破滅型転生者の小川泰徳さんを助けて頂きたいのですが」
烈華は銀兎の目をまじまじと見つめ懇願する。
「烈華さん銀兎でいいですよ、はい、その破滅型転生者の方も存じております。その方も夢の通りだと助かるはずです。大丈夫貴女の言葉は本物にも勝るから、夢のお告げよ、自信持って大丈夫」
眠りの巫女と烈華は服を交換する。
烈華は更にイヤホンとマイクを目立たない場所に装着する。
「わ、本当に私で大丈夫ですかね、早く帰ってきてくださいよ」
烈華は顔面蒼白でブルブル震えている。
「烈華さん身代わり大変かと思いますが宜しくお願いします、イルさんも烈華さんのフォロー頼みます」
「ああ、任せとけ」
イルは小さなヌイグルミに憑依し、銀兎に化けた烈華のポケットに潜り込んでいる。
「では銀兎様参りましょう」
「あっ、ちょっと待って」
銀兎は布団の方でモゾモゾ潜って何を探している。
「この子も一緒に良いでしょうか?未来っていうの」
銀兎は白にグレーのブチ模様があるウサギのヌイグルミを持って来た。
「勿論大丈夫ですよ、一緒に参りましょう」
清流はコクンと頷く。
清流は銀兎の手を引き元来た道をシークと引き返す。
犬は相変わらず警備の注意を引いている。
「何事か?」
犬の騒ぎに起こされ止水が警備の様子を見にくる。
「止水さん、犬が屋敷に侵入してしまって…」
その時遠くで犬の遠吠えが聞こえると屋敷の犬達は屋敷を去って行った、遠吠えは宮の犬達への解散の合図だ。
烈華が居る部屋に向かって足音が聞こえる。
「銀兎様お変わりはありませぬか?」
止水がふすまの向こうから銀兎に安否を確認する。
「はい、犬の鳴き声で目が覚めてしまいましたが大丈夫です」
「そうですか…明日から予定が立て続けですのでゆっくりお休みになってください、それでは失礼します」
そう言うと止水は廊下を歩き帰っていった。
「はぁ、怖かった、バレなくて良かった」
「良い演技だったぞ烈華」
イルは烈華の演技に関心する。
清流、シーク、宮、銀兎朝日も昇らぬ早朝の為は宮の家へ集まり時を過ごす。
「取り敢えずは作戦成功だな、ひやひやしたぜ」
シークがコタツに入りミカンを食べながらあくびをする。
銀兎もうとうとしている。
「銀兎様もお休みください」
清流が銀兎に声をかける。銀兎はコクンと頷きコタツに横になる。
「この巫女様まだ15歳なんだっけ、まだ小さいのにたいそうな役割課せられちまって可愛いそうにな」
宮がはぁ、とため息混じりに呟く。
「15歳か、俺とそう変わらないな、自由がないのは同情するぜ」
「えぇ、それだけ偉大な預言者様なのです…夜明けまえだし私達も休みましょう」
「だな」
4人は電気を消し睡眠をとる。
その日の朝8時清流が目覚めると宮と銀兎はテレビをみながら朝食を食べていた、シークはまだ眠っている。
「宮、銀兎様おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます」
「銀兎様どこか行きたい場所とかやりたい事はありますか?」
「私、学校に行ってみたいです」
銀兎は目をキラキラさせている。
「学校…ですか、困りましたね、戸籍が無い銀兎様の根回しが出来てないんですが、銀兎様の年頃はちょうど中学3年か高校1年くらいでしょうか」
清流が困ったように考えこむ。
「無理なんですか」
銀兎はうつむき肩をおろす。
「フリースクールはどうかな?私がボランティアで行ってる所なんだけど、銀兎ちゃんを不登校の女の子として見学体験って事で」
宮が案をだす。
「はい!フリースクールがどんな学校かわかりませんが興味あります!宜しくお願いします」
「良かった、じゃあ私が中学の時の制服が銀兎様にちょうど良さそうだから持って来るわね」
清流がニコッと笑む。
「名前も銀兎ちゃんのままだと眠りの巫女様そのままだから月で兎が飛び跳ねるって意味で月兎飛ちゃんってのはどうかな」
「はい!宮さんとても素敵だと思います」
銀兎が嬉しそうに頷く。
銀兎は宮がフリースクールに連れて行き、清流とシークは見張りだ。
「今日は雛人形の飾りつけをしてるの月兎飛さんも一緒にどう?」
「おおっ!いいんじゃない月兎飛ちゃん日本の文化ね」
2人は雛人形の飾りを準備している部屋に通される。
棚が組み立てられており何人かの女の子が箱から人形や飾りつけを出し説明書をみながら並べている。
「雛人形ですか?なんですかそれは?」
「こんにちは!新入りさん?雛人形はね、女の子に降りかかる厄災を代わりに引き受けてくれるの、もしよかったら一緒に飾りましょう」
雛人形の飾りつけをしている中学生くらいの女の子が職員の代わりに答える。
「はい!是非私もお手伝いします」
銀兎と宮も加わりフリースクールの女の子で手分けして飾りつける。
「完成っと!」
「まあ!圧巻です、とても神秘的です」
銀兎は初めてみる雛人形に釘付けになっている。
「3月3日が終わると片付けちゃうんだけどね、早く片付けないとお嫁に行けなくなってしまうって言い伝えもあるの、まあ、私は結婚したくないから関係ないけど、でも厄災が怖いから毎年飾るのお手伝いしてるの」
銀兎と一緒に雛人形の飾り付けをした少女が声をかける
「お雛様飾らないと厄災や悪いものが取り憑いて自分がお人形みたいに無表情になっていくんだって言い伝えだけど」
少女は銀兎に幽霊の話でもするかの様なふうに話す。
「…えっ」
「真夜ちゃん!月兎飛ちゃんを怖がらせるなよー?大丈夫ただの迷信だよ月兎飛ちゃんきにすんなって」
宮が話しに割って入る。
「はい…」
銀兎は真夜の話しをまに受けてしまってるようだ。
「ごめんなさい怖がらせちゃったね、月兎飛飛さんまた来てね!私は真夜よ」
「うん…大丈夫、ありがとう真夜さん」
「とても素敵な時間でした、できればまた来たいです」
と銀兎は寂しそうな顔をする。
フリースクールから帰り際、銀兎と宮、清流とシークは合流する。
「銀兎様どうでしたか?フリースクールは」
「はい、できればこのまま時が止まって欲しいくらい…現実から逃げ出したいです」
銀兎は小声で現実から逃げ出したいといった。
「銀兎様?それは…」
「もう眠りの巫女の現実に戻りたくありません!私も普通の女の子みたいに家族と暮らして学校にも行って友達を作って遊びたい!でも無理なの私はクローン作られた人形、家族も居なければ自由もない夢の中だって変えられない未来を見るだけでもう疲れたの」
銀兎の目からポロポロ涙が溢れる。
「私の命はあとどれだけか分からないけど、私は初代眠りの巫女のクローン多分短命なの、私の代わりのクローンもたくさんいるわ、私はその連鎖をおわらせたい、お願い私達をたすけて…」
「とても難しい相談ですが…今すぐは無理でも準備を整えいずれ助けに参りましょう、約束します。今は耐えて下さい」
「清流、助けるってどうやって」
宮が心配そうに清流にたずねる。
「そんなのでまかせよ!私は短命なのよきっと助ける準備ができる前に死んでしまうわ!」
「巫女様の御前恐縮ですが、眠りの巫女様はご自分の死に関する未来の夢の予言は分からないとの事、私を信じて下さい」
清流は無線を取り出し烈華に連絡をする。
「烈華さん、作戦変更するわ、ごめんなさいもう少し今の状況を耐えてほしいの、詳しくはフェイスノートのメッセージで送るから…」
烈華は前日祭の正装に無事着替えて御殿の御簾の中に居る。御簾とは簾のカーテンみたいなもので御簾の中を外より暗くすることで中からは外がくっきりみえるのに外からは中が見えない作りになっている。そこから前日祭の様子を伺っている。そこで清流の急な予定変更の知らせを受け烈華は驚く。
「へぇええ?!な、何なんですか?で、でも魂を導く者さんである泰徳さんを助ける為ですよね、私頑張ります!」
烈華は外の護衛に聞こえない様小声で清流に返事を返す。
「巫女様どうかされましたか?」
護衛に声が聞こえたようだ。ヤバイどうしようどうしようと烈華は焦せった。
「なんでもないわ、少し寝言を言ってしまったみたいなだけ気にしないで」
「はあ、そうでございますか、失礼しました」
烈華は内心心臓バクバクで護衛を誤魔化した。
「ありがとう烈華さん」
清流は急な作戦の変更に烈華に申し訳なく思いそれと同時にどことなく頼りない烈華に頼もしさを感じ清流も頑張ろと勇気を貰った気がした。
「銀兎様、お昼ご飯食べに行きましょうか」
清流が銀兎に微笑みかける。
「清流さん貴女の言葉信じて良いんでしょうか…」
「はい、銀兎様にも幸せになれる権利はあります、その為にもまずは腹ごしらえしましょう、銀兎様はハンバーガー食べた事ありますか?」
「ハンばがー…?何ですかそれは?食べてみたいです」
「じゃあランチ決まりね!」
清流、銀兎、宮、シークはお昼ご飯のお店に向かう。




