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Apostles12~罪を背負いし少年の復讐譚~  作者: 尖閣諸島諸島警備隊第6小隊隊長代理
一章 対[火]の使徒
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温泉での災難 後編

楽しんでお読み下さい。

「あ、やっと来たにゃ。二人とも遅いにゃ~。ん?その子は誰にゃ?」

浴場に入ると、バステトが待っていてくれた。他の皆は既に奥の湯船に向かっているようだった。

「お待たせ~。誰って…あなたと同じ隊の――」

「あ、ベレッタだ。今そこで一緒になってな」

「そうにゃか。ベレッタちゃん、よろしくにゃ♪」

シンは、ベレッタという偽名を咄嗟に思い付き、言った。

――ほっ…カレンとツインテールは首を傾げているが、上手く誤魔化せたようだ…

内心冷や汗を流しながらも、バステトを上手く誤魔化せた事に、シンは胸を撫でおろす。

「…で、何で目を隠してるにゃ?」

両手の手のひらで両目を覆っているシンを、怪訝な表情でバステトは見る。

「め、目に傷があるんだ。見られたくない」

「そうにゃんか…分かったにゃ。極力見ないようにするにゃ」

シンの言葉を聞いて、バステトは罪悪感に苛まれたような表情を浮かべていた。

嫌な事を聞いてしまったと思っているのだろう。

「じゃ、お風呂入るにゃ」

そして、バステトは奥へと歩いて行く。

ツインテールに、行こ、と声を掛けられ、俺も後を付いていった。



◇  ◇  ◇



「でね、訓練が終わったと思ったら次の日には指令が入っててさあ、しかもその指令が――」

「お待たせにゃ~!」

――ドボン!

ボブヘアーの話を遮ったのは途中から湯船に走って行ったバステトだ。

走ってきた勢いのまま湯船にダイブして、辺りに湯を撒き散らしている。

「もう!バステト!飛び込んで来ないでよ~」

【同意】

「にゃはは、悪かったにゃ~」

ライトネルとステラがバステトに抗議するが、悪びれた様子もなく、バステトは湯船の中を泳ぎ始めてしまった。

「あれ?あなたは?」

ライトネルがシン(ベレッタ)の存在に気付き、問い掛けてきた。

「ベレッタだ。先程一緒になった」

「……何なのこの感じ…私が苦手な人と雰囲気が…」

――おい。それってもしや俺の事じゃないだろうな。それにしてもライトネルは勘が良い…気を付けないと

「ところで、何で目を――」

「ライトにゃん、その質問は止めてあげてにゃ」

先程、バステトにされた同じ質問をライトネルがしようとしたところで、泳いでいたバステトがライトネルの問いを遮った。

ライトネルの言葉から察したのか、ライトネルはそれ以上聞いてこなかった。

――意外と、相手を思いやる性格なのかもな…

シンは、ライトネルに感心したような目を向けるが、ライトネルが考えていた事は、『眉毛が無いのかしら?』ということであり、シンは完全に的外れなのだが、それをシンが知るはずも無かった。


「じゃあ、さっきの話ね。その指令がさあ、"リンドヴルム"の討伐隊に参加せよ、っていうのでさあ…」

ボブヘアーが話を再開した。

「"リンドヴルム"ですって!?あれに手を出そうとする人間がまだ居るなんて…でも、良く生き残ったわね」

「いや、私、カレン、リッタは、どういう偶然か同時に体調を崩してさあ、行かなくて済んだの。で、結局討伐隊は全滅。戦略的用語ではなく、そのままの意味よ。生き残りはゼロ。私達は命拾いしたわ…」

【何故、あのような化け物に戦いを挑むのだ】

「それが…組織の方針で今後、使徒を撃滅する上で障害になりうる存在を排除することになったみたいなの…」

既にシンが討伐済みの、鳥類の変異種である、災厄を超えし者ファイナルキングバードを始めとした、

大陸北部の永久凍土地帯ヴァンレギンを領域(テリトリー)とする黒龍、"ファーヴニル"。

大陸南部の超巨大湖、ニヴル湖に土地神として君臨する天龍、"リンドヴルム"。

そして、情報が少な過ぎる故に、存在のみしか知られていない星龍"バハムート"。

その四体が、討伐対象だった。


「でも、無理。あんな強大な存在に人間が勝てるはずもない。それでも、組織は狂ったようにリンドヴルム討伐の指令を送るの」

ボブヘアーの表情は分からないが、声は沈んでいた。

楽しくお風呂に入ろうと言っていた初めの頃とは大違いである。


「こりゃレナ!そんな事言ってると自慢のお胸も萎んでしまいますぞ~」

先程、リッタと呼ばれていたツインテールが、レナと呼ばれたボブヘアーの胸を背後から鷲掴みにした。

「ちょ、ちょっとリッタ!あ…そこは…」

――何だろう…物凄く目を開けたい気分だ…

シンはそう思ったが、自慢の自制心で、欲求を抑え込むことに成功した。

「ほれほれ~。しっかし、ホントにけしからん胸よのう、ステラちゃん」

【全くだ】

「もう…!二人とも…ぁん…!」

――無、無だ。心を無に…

「にゃはははは!泳ぎが得意なのは犬だけじゃないのにゃ!」

「ねえ、カレンちゃんは信じてくれるわよね!?ね!?私は女神なのよ!」

「……へぇ」

「ちょっと!何よそれえ~!」

リッタの行動を皮切りに、場に明るさが戻ったようだ。場を明るくする才能でもあるのかもしれない。

無、を唱えるのを止めて、シンは思う。

両手の向こう側に、どんな光景が広がっているのかは分からない、が――

そして、口に笑みを浮かべる。

少なくともこいつらには、暗いより明るい方が似合ってる。


「ベレッタちゃんもこっちおいでよ。話聞かせて~」

「…ああ」

気配からして、声が聞こえた方向は分かっている。

やはり、お風呂は大勢で入った方が楽しいというのは、あながち間違ってないのかもしれないな。

そして、シンは気配のする方向へと、ゆっくりと歩いて行った。


この後、シンは恥ずかしい過去を掘り出された挙げ句、リッタに体をまさぐられたりするのだが、ここでは割愛しよう。



◇  ◇  ◇



で、これはどうすればいいんだ?

先に風呂から上がったシンは、現在男子トイレの個室に居た。

そして、シンは自分の体を見下ろす。

いつもより膨らんでいる胸。何だか頼りない下半身。


どうやったら戻れるんだ?

早く戻らないと、男湯に入った事になっている俺が出てこない事を疑い始めるだろう。

あの時、俺は何を思った?何をした?

シンは、女体化する直前の自分の思考や行動を思い出す。


――そう言えば…


そして、一つの結論へと到った。

俺はあの時、こう思った。


――女だと思っててくれ

と。

つまり、願望がそのまま事象として発生したということか?そんなことが有り得るのか…試してみるか

「右手よ。大きくなれ」

シンは、自分の中で二種のエネルギーが蠢くのを感じた。あの時は必死で分からなかったのかもしれない。

ズモモモ、という効果音が似合う変化をしていた右手は、個室の中にギリギリ収まる程度の大きさで停止した。

「ま…マジでか…!」

その変化に、シンは大きく目を見開く。

左手を見ると、元の手の小指程の大きさしかなかった。

――なるほど。変化には限界がある、と

「戻れ」

すると、シンの手は風船が萎むように縮小していき、元の大きさへと戻った。

次に、シンは右手を突き出し、言った。

「剣よ。現れろ」

今度は何も起きなかった。

僅かな恥じらいを感じながらも、シンは分析を始める。

――何か物質が必要、なのか?自分の体以外ならどこかに触れておく必要もあるかもしれない

シンは、右の手のひらを地面に付き、再び言った。

「剣よ。現れろ」

すると、今度は地面と同じ色をした土色の剣が右手に握られていた。

――…よし、ある程度は把握出来た



そして、シンは分析結果を心の中で纏める。

まず、口に出すだけで、自分の体や地形なら変形可能。ただし、自分の体は元の体積より大きくすることは出来ない。

次に、手の中に物を顕現させる場合、材料となる物質に手を付かないと発動しない。地形の場合、体積の限度は不明。

と、いったところか。

おっと、大事な事を忘れていた。

さっさと男に戻ってトイレから出ないと、文句言われそうだし。

「男に――」

だが、言い終わる前に、シンの体は男に戻っていた。

そうか。口に出さなくても想像するだけでいいんだな。

シンが身に付けた能力は、この世で初めてのもの。"罪能"と"怒り"の両方を扱う事が出来る、現在シンのみが使用可能な能力だ。名付けるならば、"万物創造"。広い分野で使用出来る、"極めし者"に匹敵する程の力を秘めている。だが、あくまでも()()する、だ。今のシンには"極めし者"に到達することは出来ない。それは後に明らかとなる。


――意外と、有用な能力を身に付けることが出来たかもしれないな


そして、シンは外へ歩き出した。


ほのぼのパートなのに気を抜くと一気にシリアスに……何故

感想、レビューお待ちしております。

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