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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
1章 法律
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1章-03「人探し」

数時間歩き回ったが、一向に目的地であるノルンの家は見つからない。

ナオヤ「第一、だ、いきなりおしかけるぐらいなら電話なりメールなりで連絡でもとって、待ち合わせ場所とか決めたりしたらどうなんだ」

サヤ「電話したんだけど、誰も出ないの。メールも全然返ってこないし。何やってるんだか」

ナオヤ「なんだそりゃ。下手すれば旅行中かもしれねえってことかよ」

サヤ「…まあ、そう」

ナオヤ「はあ、行き当たりばったりだね、おまえ」

サヤ「…どーせわたしは最低みたいにしっかりしてませんよーだ」

ナオヤ「べつにおれしっかりしてないぜ。

おれも計画立てるのは嫌いだよ」

サヤ「そうなの?」

ナオヤ「ああ。だってめんどいじゃん」

サヤ「…じゃあ最低も行き当たりばったりじゃん…」

ナオヤ「嫌いって言ってるだけで、立てない、とは言ってないんだなこれが」

サヤ「そういうずるいのやめてよ…」

ナオヤ「ずるいといわれてもなあ。

大人の話し方だ」

サヤ「子供のくせに」

ナオヤ「はいはい」


とか何やら口論しつつも、しばらく歩いた所で、サヤが足を止めた。

サヤ「ここよここ!表札もあるし、間違いないわ!」

アヌビス「ところで、今更なんだがそのノルンちゃんってのはどんな子なの?」

サヤ「うーん…なんていうか、つかみ所の無い子」

ナオヤ「お前も十分つかみ所が無いわけだが」

サヤ「どういう意味よそれ。…でも私なんか目じゃないぐらいつかみ所が無いから」

ナオヤ「ふーん」

つかみ所のなさなんか競ってどうするんだよとか思ったが、口には出さないでおく。

サヤ「おじゃましまーす」


おばさん「何よあなたたち!人様の家に勝手に入ってきて!何用!?

用がないならとっととお帰りください!」

サヤ「おばさん、わたしです、サヤです、しばらくぶりです」

おばさん「…サヤ?…ああ、サヤちゃん!!あのときの」

サヤ「実は、ノルンに相談したいことがありまして」

おばさん「ノルン!?

…ごめんなさい」

サヤ「はい?」

ナオヤ「ノルンさんは今どこに」

おばさん「私が聞きたいわ。

あの子が崖に落ちて怪我をしていないか、野良犬に襲われて瀕死の重傷を負ってはいないか…私は心配で心配で」

サヤ「いないんですか、ノルン!?」

おばさん「ええそうよ、数日前からいないわよ、私はどうしたらいいかわからなくて…」

ナオヤ「探せよ!」

サヤ「最低!失礼だよ」

おばさん「探したわよ町中…でも昔からあの子いつもそうなの。何かあるとすぐ出て行って…

でも、普段なら連絡入れるはずだしそうでもなければすぐに帰ってくるんだけど、

今回は何の連絡もないし…もしかしたらと思うと、気が気じゃなくて、わたし…」

サヤ「メールも全然返信ないし…もしかしたら、ノルンに何かあったのかな!?」

おばさん「!?ノルンに何かあったの!?そんなことになったら、私…私…」

ナオヤ「…」

サヤ「…お、落ち着いて、おばさん!何があったのか、話してください!」

おばさん「ああノルン…ノルン…」

おばさんは上の空の様子で、ぶつぶつと何やら呟いている。

アヌビス「…だめだな…こりゃ」


おれ達は、近所の人に詳しい話を聞くことにした。

隣のおばさん「え、ノルンちゃん?」


「一週間か前だよ。

隣町のロールスロイスを支配してるって言う青龍って男がこの村に来てねえ。

うちの町の商品とロールスロイスの商品を交換しようなんて言い出したのよ。

でね、どっかのバカ商人が、この町の自慢の一品として

ノルンちゃんの持ってる八音の旋律のことを青龍に教えちゃったのよ。

青龍は八音の旋律に興味を持っちゃって、

ついにはノルンちゃんの両親に脅しをかけて無理やり八音の旋律を持ち出して行っちゃったの」

アヌビス「…脅迫に窃盗ですね。それなのに、警察組織や勇者はなにをしてるんですか」

「これはあくまでうわさなんだけどね、あの青龍、うちの国王様のお得意様なんだって。国籍とか外交関係の問題で警察組織や勇者もうかつに手を出せないんですって」

ナオヤ「ほーう」

サヤ「…そんなことってあるんですか…」

「そうよ。

あなたは子供だからまだ知らないかもしれないけど

警察や、勇者だって…手を出すことができないものはたくさんあるのよ」

おばさんは遠い空を見上げて言った。

心だけどこか遠い場所へ行ってしまったようだった。

サヤ「…」

ナオヤ「…で、ノルンとか言う子はどこへ行ったんです」

「ノルンちゃんはね、そのとき家にはいなかったのよ。

あの子はすぐ誰にも知らせずに遠出をして何日も帰らなかったりする子だからね」

サヤ「うん、そうそう」

「その日もどこかへ探検に行ってたらしいの。

それでノルンちゃんが家に帰ってきたとき、その白銀のバイオリンを取られたのを聞いて、取り返してくるって、そう言って…」

サヤ「出ていっちゃった…ってことですか」

「そうよ」

ナオヤ「…ってことは、ロールスロイスの方へ向かったってことか」

サヤ「でしょうね」

「あんたたち…どうするつもりなの?…まさか」

ナオヤ「追いかける」

「あんた達だけでかい?危ないからやめときな」

サヤ「そうはいかないです!

私、ノルンの友達なんです」

ナオヤ「おれは友達でもなんでもないけど、

八音の旋律には用があるので、追いかけます。

ノルンって子が出て行ったのって、何日前のことですか」

「若い子は言ったって聞かないわよね…。

くれぐれも無理はするんじゃないよ。

あの子は昨日、西のぷにぷにロードの方へ歩いていったわ」

サヤ「ありがとう、おばさん!」


ナオヤ「ここか、ぷにぷにロードってのは」

サヤ「うん。この先にロールスロイス村があるの」

アヌビス「追いつけるか?」

サヤ「わかんないよ」

ナオヤ「とにかく、急ごう」


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