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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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氷刃


「コログか!?無事だったんだな!.......少女も一緒?......そうか、助けられたんだな」

うずくまるダインの頭上から、クルルの安堵が伝わってくる。


通信機の声はこちらまでは届かないが、どうやら相手はコログらしい。

少女というのは......もちろん、グリムだろう。


「なんだって!?そんな....じゃあ、今まで遭遇した魔物は元人間......!?それに、ここはソーサラーを作る実験場だって!?......とてもじゃないが、信じられないな」


ーーーソーサラー。

この世で魔法が使える唯一の存在にして、規格外の化け物。

今この瞬間にも、圧倒的な力の差を見せびらかすように両者の衝突で暴風が吹き荒れている。


「え?龍の肉を摂取........?まさか、ここの管理者は龍を殺して解体したとでもいうのか!?」

頼むから静かにしてくれ。

龍がなんだとか、バカにしてんのか?


「お、おいちょっと待てコログ!お前何を考えて.....!!」

どうやら通信は切れたようで、神妙な顔つきで通信機を見つめるクルルがいた。


「......ダイン君。どうやら僕たちが思っている以上に、この場所は危険でおぞましい物なのかもしれない」

クルルの緊迫した声がかかるが、それに答える余裕は今のダインにはない。


たった今、ダインの心を支配しているのは圧倒的なまでの無力感であった。

嫌というほど見せつけられた、ソーサラーとの実力差。生まれ持っての天賦の才。

「力がなきゃ、救いたくても救えねえ」


グリムがいい例だろう。

一緒に重荷を背負うと言っておきながら、彼女の命を救ったのはコログだ。

断じてダインではない。


ダインがしたことと言えば、周りに無理言ってなだめられ、無様に地面を転がったことくらいである。

自分で思い返しておきながら死にたくなってきたが、ダインはふと先ほどの会話を思い出した。


「.....なぁ、さっきソーサラーを作るとか言ってたよな。参考までに聞くんだけど、どうやってなるの?」


ずけずけと禁忌に踏み込んだ質問をするダインにクルルはため息をつきつつ。

「バカな考えはよせ、ダイン君。聞いた限り、ほとんど成功した者はいないそうだ。君が戦ってきた魔物も、そのなれ果てって話だよ」


失敗すれば、理性なき魔物になってしまう。

しかし、ほんのわずかでも規格外の生き物、ソーサラーになれるのであれば命を懸ける価値があると。

そう思ってしまうのは間違いなのだろうか。


「冷静になれば当たり前の話だ。龍の肉......つまりは龍の魔力を体に取りこめば、体が耐え切れず朽ち果てる。簡単に予想できる話だろう?」

「......でも、成功した例はあったんだろ?」


それでもめげないダインの口ぶりに、呆れたとばかりに首を振ると。

「数人ね。しかし、適合した子供はみな、心身ともに優秀な子だったそうだ........その、言いたくはないが......」

「......俺が優秀じゃないことくらい、俺が一番分かってるよ。嫌ってくらい、なんどもそれを味わった」


正直、ダインがこれまで生き残れたのは不死身の力を付与してくれる魔装のおかげと言っても過言ではない。

「現に何度か死んでるしな......」


人並の知恵に、人並の身体能力。

唯一人並外れたものは、良くも悪くも三度経験したことによる、死への抵抗感の薄さだろう。


「それでも、俺は」

力が欲しい、と言いかけ、突如異変に気付いた。

ーーー寒い。


体を鞭打つ風がひどく凍え、白く色づいていることに今更気づく。

見れば地面は凍っており、靴が地面にくっついて離れない。

肌を焼くような冷たさに目を剥きつつ、咄嗟にクルルの方へ向く。


「クルルさん!これ、もしかしたらあいつが......!」

瞬間、飛び込んできたクルルの姿は何かが欠落していた。


金属製の靴に、金属製の脛あて。

腰回りに巻き付いたバッグ代わりの魔道具に、手入れの行き届いた騎士直剣。

キラキラと反射する鎧の上部には、飛び散ったような赤黒い液体がこびりついている。

数少ない肌色をみせる、細くすらっとした首。そして......


「......ぁ」

そこから先にあるはずの、頭部がなかった。

あまりの衝撃に声が出せず、肺から送られてきた空気が微かな音となってこぼれ落ちる。


同時に、足元から鈍い音がした。

ゆっくりとその音源に視線を動かすと、

「.......!!ぁ、あああああああ!!!!」

そこには、虚空を見つめるクルルの頭部が、鮮血を漏らしながら転がっていた。


一瞬の出来事に、思考がまとまらない。

体が全力で警告を鳴らし、ここから逃げろと怒鳴りつける。

激しい耳鳴りと動悸に視界が暗転しかかるのを、唇をかむことで制止した。なぜなら、


「......次」

ダインの正面。

真っ赤に染まった氷剣を無造作に払い、こちらへ距離を詰める鬼面の男が目に入ったからだ。


ご愛読ありがとうございます!

もうすこしで二章に入れそうです!お楽しみに!

面白かったら星とコメントよろしくお願いします!

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