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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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開戦の予兆

「は、博士!大変です!上空にでかい門が......でてきま.....した.....よ?」

桃色の髪を揺らし、息を切らしながら部屋へと突入してきた少女が見たものは、大きな風呂敷にせっせと荷物を詰める白衣姿の男だった。


「......なんですか。博士からコソ泥にジョブチェンジしたんですか」

マッドサイエンティストらしからぬ装いに、思わず心の声が漏れてしまう。

何かしらの罰が下るかと身構えるも、男は気に留めるそぶりもなく口を開いた。


「見てわかるだろう。夜逃げだよ夜逃げ。君も見ただろう?あれは......イカレ宗教団体、フレイヤ聖騎士団だ」


フレイヤ聖騎士団。神フレイヤを主神として崇め、日夜北の大地を警護......もとい徘徊している宗教団体だ。

ただ警護してくれるだけなら大して害はなく、むしろありがたい存在なのだが......


「彼らは悪党に厳しいですからね。博士みたいな子供を拉致して人体実験するような人なんて、ボッコボコにリンチされて川に捨てられるんじゃないですか?」

「流石に言い過ぎだ......と言いたいところだが、否定はできん。くそっ、どこから漏れたか知らんが、非常にツイてないな」


頭を抱え、慌ただしく書類や薬を詰めていくノース。

フレイヤ聖騎士団は悪党を血の果てまで追いかけまわし、残虐に処刑することで有名だ。


そんな噂に怯える彼を呆れたようにみやり、ノーニャは画面に映る上空の映像へと視線を移した。

重厚な門は開いたままで、子供を乗せた騎馬を次々と迎え入れている。


「場所がバレた以上、これ以上の実験は不可能。それに、万一博士が死ねば」

「ああ、半端者の命をつなぐ薬は私しか作れん。......君も君の姉も、皆仲良くお陀仏だ」


不気味な笑みを浮かべるノースに内心舌打ちしつつも、ノーニャは逆らうことができない。

「......私があの門を閉めてきます。その隙に地下通路からお逃げください」

「ああ、頼むよ。ええと.....被験者番号F63番。また王城で会おう」


この男は、長い付き合いになるのに名前すら覚えようとしないのか。

ノーニャは心の底から軽蔑しつつ、大きな足音を立てながら部屋を出た。

自分の苛立ちを露わにするように。


・・・・・・


「......行ったか」

足音が遠のいていったのを確認し、男は奥の部屋へと進む。


「あれにはああ言ったが」

目の前に広がる、薄緑の液体が入った試験管を眺めながらほくそ笑む。


「あいつらに薬など必要ない。......せいぜいタダ働きに興じてもらおう」

言って、それらを風呂敷に詰めていく。


ひとしきり大事なものを詰め終わると、書類の散らばったメインデスクの前にて最終確認。

忘れ物がないか確認し終わると、風呂敷を背に担ぎあるものを拾い上げた。

デスクに置いていた、ロケットペンダントだ。


「.......カレン。私はあきらめんぞ。何を犠牲にしても」

中に入った写真に写る、向日葵のような女性にこう呟く。


「君を、救ってみせる」


・・・・・・


目まぐるしく変わる風景と、頬を撫でる程よい風圧。

青々とした森に朱が混じり、甲高い金属音と悲鳴交じりの鳴き声が木霊する。


風になるとはまさにこのことだろう。


「乗馬ってこんな感じなのかぁ。まぁその、うん。悪くないよ?悪くないんだけど......」

「ダイン君、言いたいことはわかるが、その......」

申し訳なさそうに口ごもる聖騎士の声を背に受けながら、ダインはとうとう我慢しきれず口を開く。


「いくら進めど血と死骸にしか目がいかねーし、腐臭がすげえんだけど!!」



現在、ダインと聖騎士は暴走した隊長を追って森の中を飛翔していた。

森のあちこちには、隊長が通り際に葬った魔物の残骸が転がっている。


「俺、乗り物に乗るの初めてだからちょっと期待してたのに......漏れるのは感動じゃなくてゲロになりそうだよ!!」


そうぼやくダインの口から、さらに不満がこぼれる。

「というか、ヴァイスさん強すぎやしないか?あんなあっさり魔物殺されると、ちょっとへこむんだけど」

眼下に広がる死骸の中には、過去に命がけで倒した魔物、熊型リーパーの姿もあった。

隊長の実力は相当なもののようで、息をするように魔物を殺し続けている。


そんなダインの言葉に苦笑しつつ、

「まぁ隊長は騎士団の中でも別格ですからね。張り合おうだなんて考えないほうがいいですよ?......その先は地獄です」

顔を引きつらせながら助言してくる聖騎士、クルル。


おそらく彼も苦い思いをしたんだろうなぁ......などと考えていると、

「それにしても臭いがきついな......!!鼻が曲がりそうだぞ」


強烈な死臭に眩暈がし、耐え切れず口呼吸をするダイン。

そんなダインを見かね、クルルが口を開く。


「まぁまぁ、こういうのは慣れですよ。どうしても死臭はきついですからね。僕も最近までは悩みの種だったんですが、だんだん慣れちゃいました」


さすが隊長の右腕。踏んだ場数が違うというやつか。

「いや~さすがっす。こんな強烈な臭い、俺じゃあ到底慣れようが......」

ない、と言いかけてチラリと背後を振り向くと、彼の鼻には......


「おいいいいいい!その鼻に突っ込んだ布はなんだよ!?慣れっていうか鼻栓してるだけじゃねえか!!!」

端正な顔立ちを歪ませる純白の布が、両の鼻に詰め込まれていた。


「ごめんごめん。......ほら、片方だけなら貸してあげても」

「いらんわ!!......あーくそっ!グリムは見つかんねーし、隊長速すぎだし臭えーし、踏んだり蹴ったりだ!」


そう吐き捨てると、わずかにでも臭いを逸らそうと空を仰ぐ。

上空では騎馬の群れが雪崩のように押し寄せ、門の中へと吸い込まれていく。


目視できる限りでは、もう空を飛ぶ騎馬はほとんど中へ入ってしまったようだ。

「あん中にグリムがいたら安心なんだけどな......」


そうつぶやいた瞬間、空を一閃の焔が両断した。


『それ』はそのまま門へ直撃し、見るからに重そうな門をあっさりと閉じてしまった。

閉じられた門はそのまま塵となって、空に消えていく。


「......は?今、なにが」


脳が事象を理解するよりも早く、胸に強烈な痛みが走った。

「ぐぁっ......!!な、なんだ!?」

胸骨にかかる痛みをこらえながら目を開けると、移り変わっていた景色が止まっていた。


騎馬が急停止したのだと理解したのと同時に、前方に止まる隊長が目に入る。

「......ヴァイスさん?」


彼はこちらを一瞥すると、上空へと視線を戻し。

「クルル、お前はここで待機だ。ダインボーイを守りたまえ。......俺は緊急クエスト...だっ!!」

瞬きした後には、彼の姿は消えていた。


「くそっ、なにがどうなって.....!!」

突然の事態に軽くパニックになり頭を抱えるダインの肩に、クルルがそっと手を添えた。


「ダイン君、落ち着いて。落ち着いて聞いてくれ。隊長が向かった先は......」

クルルはそういうと、ゆっくりと上空へ指を指す。

「ソーサラー同士の戦場だ」


その方向へ視線を向けると、そこには黄色い閃光と赤い閃光が飛び散りあっていた。

お久しぶりです!

中々筆が乗らず投稿ペースが遅くなっちゃってすみません......

でも完結するまで頑張るつもりなので、高評価とコメント、よろしくお願いします1

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