1話 握力
1話、約1000文字で
のんびり更新です
「なあ松崎」
「ん?」
「ゴリラの握力って500kgくらいあるらしいで」
「さっきまで期末テストの話してたやんな?
急にゴリラの握力事情にシフトされた側の気持ち、もうちょい考えた方がええで?
“いつゴリラの話したっけ?”って無駄に記憶遡ってしもたやん」
「いや急に、ふと思ってん。そんだけ握力あったら“絶妙な力加減で握る”とかできひんのちゃうかなーって」
「ふと思うジャンルがエキセントリックやなお前。
まあせやな、ある程度力加減できても“1目盛あたりの力が人間よりデカい”とかはあるかもしれへんな。
ちなみに野島、お前は握力いくつなん?」
「最近測ってへんから分からんけど、多分0.03ゴリラくらいやな」
「え、なんでゴリラ換算なん?しかも15kgくらいやん。
そんなゴリラ顔やのに」
「別にそんくらいの握力のゴリラがおってもええやろ。
例えばやけど、ゴリラの握手会に行くとするやん?」
「ゴリラの握手会て聞いた事ないねんけど。
地球の世界観で例えてくれへん?」
「動物園の裏手で密かに開催されてんねん。知らんけど。
ちなみに“マサル”っていう、握手の時だけ目をそらしてくるシャイ系ゴリラがおったり」
「ほう」
「こっちが差し出した手に唾飛ばしてくる
“ゴリラ子”ちゃんがおったり」
「マサルとの名前格差がすごいな。
せめて“マサコ”とかにしたれや」
「そこに握力15kgの“ノジー”こと俺がおるねん。
松崎やったら誰と握手する?」
「お前はその扱いでええんか。完全にゴリラと見なされてるやん。でもまあ、その中やと誰とも握手したないかな」
「いやいや、絶対選ばなアカン場面やったら、握力15kgの“ノジー”やろ?」
「そんな消去法で選ばれて嬉しいん?」
「ちなみに握手のあとのバナナ渡しタイムで、推しにバナナを手渡しできるんやけど、マサルは“皮ごと派”やから注意やで」
「もしマサルに皮むいて渡してしもたらどうなるん?」
「裏でめっちゃ飼育員に文句言うらしいで
"あの客なんやねん!"って。
ゴリラ子ちゃんはずっと“やめてぇ!”って止めに入ってる」
「マサルめっちゃ面倒臭いやん。
あとゴリラ子ちゃん、客に唾吐く割にそういうとこは止めに入るんやな。倫理観が謎すぎて1番こわいかもしれへん」
「てか松崎は今回の期末テスト自信あるん?」
「お前、話題のチャンネル変えるリモコン壊れてるん?
んー自信はまあ、普通やな。お前はどうなん?」
「俺は全然アカンわ。勉強してへんもん。」
「そか。まあゴリラやし、ええんちゃう」
「誰がガリィラやねん!!」
「さっきまで自分がゴリラである事、受け入れてたやんけ。
あと何でネイティブっぽく言うたん?
声もでかいし、今すれ違った人、肩ビクッ!跳ねてたやん」
「あー、発音の良さにビックリしたんかもしれへんな」
「ポジティブやな」
「っしゃ。家着いたし、また明日な。
今日からちょっと握力鍛えるわ」
「いや勉強せえや。ほななー」
「ういー」