第二十六話 こういうのは困るんだが、どうすればいい?
気分転換に始めた小説を一気に終わらせていたので、こちらのほうがお留守になっていました。
ストックは既に尽きていますが、これからまた頑張ります。
そして、毎日更新を目指します。
どうやら逆恨みと言うか、意趣返しと言うか。
確かに迷宮では殺さずの精神でやっているが、侵略の意思を持った存在は話が別だ。
と言うか、積極的に誘致していると言ってもいい。
統括に向かうトラブルは、そのまま誘致になった挙句、攻撃スキル禁止区域で捕縛され、オレが居ない時はフロア担当の一存で処分が成されるから、その顛末だけが総合執務室に送られる。
そいつらは身包みを剥がれて投獄された後、厳正なる審査の結果、選ばれた人員のご飯になるのだ。
その抽選会は熾烈を極めると言われている……なんてな。
食生活の改善の結果、あんまり喜ばないんだよ。
ただ、かつての習性の名残りとして、儀式のように食するのが大半のようだ。
もっとも、外敵対策班にはその手の好き者が集まっているから、捕まえたら分配に忙しいらしいが。
そんな訳で、既に消えた国からの意趣返しのような人員は、彼らの胃袋に消えちまった。
お裾分けはもらったけど。
◇
結局、3大国はそれぞれに領地を増やし、あの小さな国は分割統治となり、勇者召還の儀式も費える事になった。
元々、3大国に囲まれるような位置取りの国だから、あの儀式がなければとっくに消えていたはずの国だった。
後は三すくみか。
本来は1番でかい国が全てを統治したいんだろうが、2番目の国もやり手の女王だし、おいそれとはいかないんだろう。
3番目は代替わりしたばかり、と言うかホーマックがうっかり殺した王の国だよな。
確かあそこの王は女好きで、2番目の女王をしつこく狙っていたと聞いているが、まさかホーマックの奴、罠に嵌ったんじゃないだろうな。
有能と言うか狡猾な女王の策に嵌り、魔王認定されるとか間抜けにも程があるぞ。
結局は一番タチの悪いのは人族であり、それに翻弄されている迷宮管理ってか。
それでも全ての人族を殺さないのはひとえに、それらが食料でもあるって、ただそれだけなのかも知れない。
オレとしては全て消しちまっても良いんだが、消費者が居なくなると商売もつまらないだろうから、あいつら配下の為にそれを実行しなかっただけだ。
神も事ここに到れば、おいそれとオレを魔王認定などやれまいな。
オレが魔王になったら半端はしないから、人族などこの世から消滅する事になるだろう。
そうして広いこの世界は迷宮管理とと魔物の世界となろうが、そうなったら今までに無かった争いが起こる事になるだろう。
迷宮の中ではあり得ない、種族同士の戦争が。
そもそも、オレの迷宮以外には人族は必要だから、オレの方針に逆らう管理も多いだろう。
世界がオレと魔物だけになるとかさ、うちの迷宮と何が違うの。
しかも魔物同士の争いなど、良い事はひとつもないぞ。
だから神よ、魔王認定はしないでくれよ。
人族も困るし、オレも困るのだから。
◇
どうやらあちらの世界には石油の鉱脈が無いらしい。
遥かな昔から少しずつ探索していたが、遂には見つからなかったんだ。
その代わりと言うか、魔力溜まりの巨大なのを発見した。
あれ程の魔力溜まりなのに、魔物が発生していないんだ。
だから魔物の発生にはもっと別の要素が必要なのだと分かる。
確かに繁殖で増える魔物も多いが、発生で増える魔物も居たはずだ。
オレはてっきり、巨大なスライムでも居るのかと思ったが、何も存在しなかったんだ。
これはあれだな。
大気に本当に必要な要素があるんだろう。
そいつが無い地中では、どれ程の魔力が停滞しようとも決して魔物は発生しないと。
魔力だけかと思えば、そんな物もあったとは。
しかもそれが真実の魔物の元とか、となると魔力は単なる栄養素に過ぎないって事になるな。
それにしてもその魔物の元、どうやって発生している。
遥か昔から魔物は発生しているが、そろそろ尽きないか? 普通なら。
もっと膨大にあるのなら、その発生率も尋常じゃないだろうから、今までのような発生数なはずがない。
となれば、何処かから供給されているって事になるが、それが何か分からない。
そもそも世界中にばら撒かれないと意味が無いが、それをどうやって実行している。
あ、荒唐無稽なのを思い付いたぞ。
だがそれなら辻褄が合う、がしかし、ちょっと妄想が過ぎるような話だ。
つまりさ、人族が死ねば魂が残るだろ。
その魂が粉砕して魔物の元になればさ、世界中で魔物が発生する理由付けになるよな。
魂1つずつなんて事もあるかも知れないが、そうなると人族の転生先は魔物って事になる。
となればその逆もあり得る訳で、本来、魔物と人族は根源を同じとする存在って事になるよな。
もっとも、人族同士でも争っているんだし、相手が魔物でも意味は同じか。
例えそれが世界の真実だとしても、誰も信じないだろうな。
◇
あれからまたしばらく留守にすると、かつての故郷に滞在している。
金太はもう仮想ゲームに飽きたようで、今ではリアルな戦闘のほうが楽しいようだ。
迷宮産の良質な武器や防具も供給される今となっては、もう仮初の遊戯をやる気にもならないのだろう。
そんな訳で毎週のようにあいつに要求され、あちらの世界に戻っている。
そのついでに土産を渡すので、技術開発班は大忙しで、希望者も今まではシャットアウトしていたものが、遂に解禁したらしい。
なので96階層には、そんな希望者が仮設住宅を建てて棲み付いているって話だ。
結局、96階層はそんな新規研究班の連中の住処となり、実際の研究は97階層で行っているとか。
そうして順繰りに階層を進め、最終的には99階層にその集大成を作ると言っていた。
となると、98階層には工業地帯でも出来るのかな?
迷宮の中ならば公害にも縁が無いから、理想的な工業地帯になるだろう。
なんせ不要な物は、オレの体内にあるような、廃棄物処理用空間に送り出すシステムが既にあるからだ。
それはそうと、最近、女連中が急接近している。
特に言葉が頼りないほうが顕著だ。
あいつ、オレに懸想してんのかと思い、それなりに合わせてきたが、そのせいかかなり勘違いしているようだ。
いや、そう仕向けているんだから勘違いとは言えないか。
さてな、そういう欲求も既に消えているが、先を望まれてもどうしようもないぞ。
いくら未通女とは言え、いつまでもそうじゃないだろう。
どんなに純真な奴でも、年頃になれば子を産むものだ。
それがやれないオレが相手とか、未来は無いってのによくやるよ。
知らないと言う事は恐ろしいな。
こういうのを上から目線と言うのかも知れないが、違う種族だから上も下も無いと思うんだ。
確かにかつてはそうだったけど、今では違う種族になってしまっている。
ただ、外見が同じだから同じ種族と思っているのかも知れないが、これはいわゆる外見が似ていて違う種族の生物と同じだ。
オオカミみたいな犬とか、その最たるものだろう。
実質的には、ピラニアとよく似ている。
あれも元は草食だったのが肉食になったらしいが、草食が人族で肉食がオレ達だ。
体長の違いはそのまま力の強さや寿命の長さに転換させられるし、それであんまり違和感が無い。
あれらは人でも食っちまうって話だし、オレ達と何が違うかって話だ。
確かにオレは肉は食わないが、管理の中にはそいつを好む奴も居る。
そういうのは単なる好みの違いだろうし、他に強制する気も無い。
それにしても、神の考えは理解出来ないな。
そんなに魔王になる存在が邪魔ならさ、最初から作らなければ良いだろうに。
それは人族の中の神話でも同じだが、邪魔な存在を作るから、それを消す話になるんだろう。
外敵が居なければ増長するから、そういうのを据えて脅威に見せて抑制していると考えると、何もかもが道化だな。
道化の世界に君臨する神すらも、同じ穴のむじなとも言えるんだが、それで良いのかよ。
まあそんな事は置いておくか。
考えても意味の無い事だし。
それよりこれをどうするかな。
さっきから逃避のように色々と考察しているが、このままじゃどうしようも無いだろう。
「わ、私、その、ね、あの」
軽く抱擁してやると、それが望みのような雰囲気を見せるんだが、この先どうすりゃ良いんだよ。
ううむ、仕方が無いな。
ちょいと難易度が高いが、金太に押し付けてやるか。
クラスの連中と共に、こいつの意識も金太に誘導して、あたかも最初からそうだったかのように、あいつの意識もあわせて変更する。
元々、女に興味のある金太なら、そういう流れになれば容易く乗るだろうし、そうなれば施術の怪しさなど問題にもなるまい。
いわゆる渡りに船ってやつでさ、心の流れが希望の流れなら、辻褄がおかしかろうと気にはしないだろう。
となるとさっさと既成事実化しちまうか。
◇
「君さ、ちょっと舐めてんじゃない? 」
「そういうのを馬脚を現すと言うんだぞ」
「えっ、あれっ、アタシ、うそ、そんな」
「ふふん、引きずられたな」
「ちょ、今の無し、ね、無しだから……忘却」
これは何かの攻撃のようだが、オレの精神耐性はかなりだぞ。
そんなのが効くと思うなよ。
まあいい、効いた振りでもしてやるか。
「あれっ、何してたんだっけ」
「金ちゃんとあの子の事でね」
「似合いの2人だな」
「本当にそれで良いのね」
「これは内緒だが、オレは1487才だ。そんな爺さんには合わないだろ」
「えっ、それって」
「あの場では転生と言ったが、オレはかつてあちらの世界に転移させられ、そして管理となった。それから1500年弱あちらで過ごし、気付いたら元の世界の元の時間に戻っていた。経過した時間に見合う能力と共に」
「そうだったんだ」
「そもそも迷宮管理となって、どうやら人では無くなったようでな、人の欲望なども消えちまったんだ。そんな奴に女を幸せになど出来るはずが無い。ならば幸せに出来る奴に委ねるしかあるまい。好意を持ってくれたあいつには悪いが、オレでは役不足だ」
「そうだったのね」
「だからお前も友達までだ。それで良いな」
「そういう事ならそれで良いわ」
「済まんな」
◇
(ああ、焦ったわ。まさか中の存在に干渉されるなんて、アタシもまだまだ未熟ね)
(確かに未熟ですが、それでも翻弄するとは大したものです。まだそんな意識も無いでしょうに。彼もそのうち、うちの子の後輩になるんでしょうかね。そうなると良いですね、くすくす)
(ハックション……おかしいな、風邪かな)




